アメリカのお盆フェスティバル
驚くなかれ、アメリカにも、お盆があるのです。
まあ、初盆の法要とかお墓参りだけじゃなくって、お盆が「フェスティバル」になっているのですね。
だから、アメリカ人の中には、「お盆」の意味を「お祭り」だと勘違いしている人もいるみたいです。だから、本当の意味を教えてあげると、ちょっとびっくり。
けれども、なんにしても、カリフォルニアの人にとっては、Obon(お盆)というのは、わりと親しみのある言葉なのですね。
自称「シリコンバレーの首都」サンノゼ市には、日本街(Japantown)があります。現在、アメリカ本土に残るたった3つの日本街のひとつです。
日系人の多いハワイを除くと、他には、サンフランシスコとロスアンジェルスにしか残っていません。
19世紀末から、それまで主流だった日本からハワイへの移住に加え、アメリカ本土への移住が増えてきました。そして、日本人が散らばった先で、次々と日本街ができていきました。アメリカ全土に、あちらこちら日本街があったといわれています。
ところが、第二次世界大戦を境に、日系人の分布は西海岸に固まるようになり、自然と、残る日本街は、カリフォルニアだけとなってしまいました。
日系人の歴史のお話は、また別の機会に譲ることといたしましょう。
こういった日本街や日系寺院がある街では、毎年7月から8月にかけて、数々の「お盆フェスティバル」が開かれるのですね。
サンフランシスコ・ベイエリアには、日系の仏教寺院(Buddhist temples)がたくさんあって、夏は、毎週のように、どこかでお盆フェスティバルをやっています。
サンノゼの日本街にも、西本願寺系の「別院」という立派なお寺があって、お盆の法要とお祭りは、大事な年中行事となっているのです。
勿論、目玉は、夜の盆踊り大会ですが、土曜日と日曜日両日にかけて開かれるフェスティバルでは、昼間っから、太鼓道場の演奏会や、ストリートフェスティバルなんかで盛り上がります。日本でいう、縁日みたいなものでしょうか。
ここサンノゼの日本街は、100年以上の歴史を誇り、サンノゼの街に深く溶け込んでいます。お祭りには、日系人だけではなく、近隣の街からもいろんな人種の人が遊びに来るのですね。
古くからのお店は、後継者不足で閉じたりしていますが、現在、日本街再建計画も進んでいて、ちょっとやそっとでは伝統は消えないのです。
縁日といえば、なんといっても、屋台。日本街の目抜き通りには、昔風の屋台が立ち並びます。
ここは子供たちの腕の見せどころ。ゲームは、昔っから伝わる、懐かしいものがほとんどです。輪投げ、ボール投げに、「金魚すくい」ならぬ、「アヒル釣り(Duck scoop)」。ゴム製アヒル(rubber ducky)を釣るんですね。
なつかしくなって、ピンポンボールをガラスの器に投げてみましたが、これがポンポン跳ねて、なかなか入らない。そういえば、昔、サンタクルーズのボードウォークの遊園地で、こんなゲームに夢中になっていましたっけ。ぬいぐるみが当たるのが、妙に嬉しかったんですね。
大人気は、かき氷。アメリカでは、shaved ice と呼ばれます。日本街の饅頭屋さんのかき氷は、毎年すごい人気。長〜い行列ができています。「おいしいかき氷が食べられるなら」と、暑い中、待つことをなんとも思ってないご様子。長い行列は、アメリカ名物ですね。かき氷の中身は、日本のものとほとんど同じで、赤や黄色と色とりどり。
かき氷といえば、アメリカでは、「マツモト Shave Ice」が有名ですね。サーフィンのメッカ、ハワイ・オアフ島のノースショア、ハレイワという街にある、昔ながらのかき氷屋さんです。ここのアイスクリームの入ったかき氷は、名物なんですよ。
フェスティバルといえば、やっぱり、食べ物。フードコートでは、天ぷら、チキン照り焼き、うどんなど、日本風のものが食べられます。今川焼きや饅頭も、毎年の定番です。
ちょっと残念なのは、たこ焼きや焼きそばがないこと。それから、焼きとうもろこしも。アメリカのとうもろこしは、ゆでたものばっかり。焼きとうもろこしって、日本だけの名物みたいですね。アメリカにだって、醤油はあるのに。どうして日系人に伝わっていないのか、ちょっと不思議。
夕方には、53年の歴史を誇る「ちどりバンド」の登場です。なにやら、おじいちゃん、おばあちゃんのバンドのような名前ですが、イージーリスニング系のムード音楽から、日本の演歌まで、レパートリーは豊富なようです。バンドの演奏に合わせ、ちゃんと日本語の演歌も披露されます。
実は、サンノゼのお盆フェスティバルでは、そのあとの大事な盆踊りを逃してしまったので、翌週、マウンテンビュー市のお寺のお盆フェスティバルに行ってきました。
こちらも、ゲームや食べ物の屋台、生花や植木の売店、フードコートと、形式はサンノゼに似ています。
おなかがすいたので、チキンサラダを食べてみました。見かけよりもおいしいのは、「元祖チキンラーメン」を砕いたのが上にのっているからでしょうか。わたしも、ハワイ在住の方から習ったことがありますが、チキンラーメンをベーコンビッツみたいに使うのですね。
サンノゼ同様、こちらでも、大人は、ビンゴに夢中。わたしたちも、盆踊りが始まるまでの30分、暇つぶしにやってみました。3つのボードで1回1ドルと、格安なのです。
手持ちの1ドル札がなくなるまで遊んでみましたが、お向かいの人は、続けて3回もビンゴを当てていました。景品は、お米に、卓上グリルに、缶切りマシーン。なんでも、一番端の6番テーブルは、毎年、ビンゴの確率が異常に高いとか。
いよいよ、お待ちかねの盆踊り。最初に、住職さんを先頭に、参加者みんなで行進です。人数が多いのに、ちょっとびっくり。勿論、日系人をはじめとして、アジア系が多いのは当然ですが、中には、白人の家族も浴衣やハッピを着て登場です。
河内の男節から始まって、ご当地音頭や民謡を、「ちどりバンド」が生演奏。「スキヤキ」というあだ名の「上を向いて歩こう」は、アメリカでも、たくさんの人が知っている旋律です。
地元のお師匠さんの振り付けなのか、花や扇子のあでやかな小道具を持って踊ります。みなさん、ちゃんとお稽古しているようで、歌のリズムに結構合っています。だけど、ちょっとぎこちない。
やっぱり、来年あたりは、日本人を代表して、わたくしも参加させてもらいましょうか!
いろんな人が遊びに来るお盆フェスティバル。カリフォルニアでは、しっかり市民権を得ています。
そして、どんな血が混じっているのか、ちょっと想像がつかない人もたくさん。白人とか、アジア人とかの区分けは、だんだん当てはまらなくなってきているようですね。