ワインの産地、ナパバレー
結婚記念日に、ワインの産地で有名なナパバレー(Napa Valley)に行ってきました。
サンフランシスコから1時間くらい北にある場所で、シリコンバレーからは2時間ちょっとといったところでしょうか。
ナパバレーは、ナパ郡にある谷間という意味で、単にナパとも呼ばれます。ナパ郡全体には、たくさんのぶどう畑やワイナリーが広がっています。西のお隣には、やはりワインの名産地、ソノマ郡があります。
2年前にソノマ郡のケンウッド地区に泊まったのが最後だったので、ナパもワインテイスティングも久しぶり。だから、とっても楽しみな旅行でした。
けれども、今年は異常気象。もう10月1日にはシーズン初の雨となり、先行きが心配でしたが、やはり予想は的中。到着した日だけ晴れていて、あとはずっと雨でした。勿論、帰って来た翌日からは、カラリと晴れましたけど。
まあ、そんな雨の旅路ではありましたが、ナパは美しい収穫の季節。木々も少しずつ色づき始め、ぶどうはたわわに実っています。
目抜き通りの29号線には、有名なワイナリーのオンパレード。知らないワイナリーはほとんどない、と言ってもいいくらいです。いつものことながら、ナパに近く住むことが、とっても嬉しい瞬間なのです。
南北に走る29号線を北上すると、街の名前も変わっていきます。ナパ(Napa)、ヨーントヴィル(Yountville)、オークヴィル(Oakville)、ルーサーフォード(Rutherford)、セント・ヘリーナ(St. Helena)、そして、カリストーガ(Calistoga)。それぞれの街には、名だたるワイナリーがここかしこと広がります。
泊まったホテルは、Calistoga Ranch(カリストーガ・ランチ)。名前の通り、カリストーガの街の山奥にあります。2年前に完成した新しい施設ではありますが、森の中にしっくりと溶け込んだ雰囲気。
「農園(ranch)」という名のわりには、敷地内では無線ブロードバンド・アクセスが可能になっていて、快適な現代人の生活ができるのです。
近くには、同じオーベルジュ・グループ傘下の、Auberge Du Soleil(オーベルジュ・ドゥ・ソレイユ)というリゾートホテルもあります。このグループは、お客様の顔と名前をしっかり覚えることをモットーとしていて、いろんな心配りも嬉しいです。
案内された部屋は奥まった高台にあり、“Eagle’s Nest(ワシの巣)”というニックネームの、深い緑に囲まれた場所。部屋はまるで木の上に作られた感覚で、遠くにはナパの谷間が望めます。バルコニーに出ると、空気がほんとにおいしい!
カリストーガは湧き水でも有名で、“Calistoga”という名のボトルウォーターもありますね。
それにしても、木に囲まれて眠るのが、こんなに楽しいことだとは知りませんでした。だから、アメリカの子供たちは、庭の木の上に部屋(a tree house)を作って、冒険感覚を味わうのですね。
バスルームの外に出て、デッキで浴びるシャワーも、すごく気持ちが良かったです。見上げれば、空と木との対話。
翌日は、さっそくワイナリーツアー! 雨が降ったり止んだりの生憎の天気でしたが、なんとか3つだけ廻りました。Darioush(ダリウーシュ)、White Rock(ホワイト・ロック)、そして、Regusci(レグーシ)。
だいたい何の計画もなく、目に付いた所に入ってみるのが、我が家のワイナリーツアー。ホテルから出ると、そこは29号線に並行する、シルヴェラード・トレイル(Silverado Trail)です。だから、この道上のワイナリーを攻めるのです。
ダリウーシュは、2年半前にオープンしたばかりの近代的なワイナリー。オーナーがイラン系の人なので、建物もペルシャ風建築となっています。ここは、赤ワインに力を注ぐワイナリーで、どちらかというと、フランスのボルドー系の伝統的な味でしょうか。
一方、ホワイト・ロックは、1870年にぶどう栽培を始めたという老舗。ワイナリーのオーナーは何代か替わったそうですが、敷地内で栽培したぶどうを使い、昔ながらの製法を引き継ぎます。小ぢんまりとした家族経営で、各年に、赤一種類と白一種類しか出しません。
レグーシは、スイス・イタリアンの名前。こちらも歴史があるようで、1878年に建てられたワイナリーを、スイスからアメリカに移住したレグーシさんが、1932年に買い取ったそうです。ぶどう栽培だけでは食べていけないので、ごく近年まで、トウモロコシやプルーン、胡桃の栽培にも精を出していたとか。
ここは、白はシャルドネを出すだけで、あとは赤ワインをお得意としています。とくに、ヨーロッパ風のワイン造りを踏襲しているわけではなく、まあ、立派な「カリフォルニア・ワイン」といったところでしょうか。
雨も一時的に強くなってきたし、早めにワインツアーを切り上げ、ホテルに戻ります。そして、夕方からは、ホテルのスパへ。
このホテルは、スパ・トリートメントのメニューが格段に多く、単独のマッサージやスキンケアだけではなく、マッサージの前に、屋外で入るお風呂が名物のようです。
選んでみたのは、カベルネ・ワイン風呂。思ったほど赤くはなりませんでしたが、ほのかにワインの香りが立ち込めます。体にいい抗酸化物質が、肌から浸透するんだそうです。
その他には、泥風呂、バターミルク風呂、チョコレートミルク風呂と、何やら想像し難いメニューが並んでいます。
ホテルのレストランも、とってもいいシェフを揃えているようでした。一泊目の記念日の食事がよかったので、二泊目は、部屋でカジュアルなルームサービス。
ルームサービスのメニューの中には、“Dine on the Deck(デッキの上で食事)”という文字。どうやら、部屋に付いている屋外リビングルームで、暖炉の火を前に、コース料理が楽しめるようになっているようです。
レストランからひとつずつ料理を運んでくれるそうですが、運んで来る方も大変ですね。各部屋には、ゴルフカートで行き来するわけですが、わたしたちが泊まった部屋みたいに、最後は長~い階段が付いている場所もあるのですから。
奥まったわたしたちの部屋は、ほんとに静かでしたね。
夜、デッキの暖炉の前で話をしていると、カサッ、カサッと裏山の枯葉を踏む音が聞こえてきます。
まさか、狼かマウンテンライオン!とおびえていると、姿を現したのは、鹿さんでした。優雅な歩みで、階段の脇をゆっくりと降りて行きます。
ほっとしたところで、連れ合いは、暖炉の前でまぶたが重くなってきます。そこで、ちょっと聞いてみました。
Q「羊さんが、もう200匹くらいになったんじゃないの?」
A「もう300匹を越えてるよ。そして、みんな毛を刈られちゃった。」
え?毛を刈る? このあたりになると、相手が完全にまどろんでいるんじゃないかと疑い始めます。そして、こう続けてみました。
Q「誰が毛を刈ったの?」
A「おじさん。意地悪なおじさん。戦いに敗れてひねくれたおじさんが、羊の毛をみんな刈ってしまった・・・」
ここまでくると、さすがに本人も寝ぼけたに違いないと思い始め、ふと正気に戻ります。
戦いに敗れたおじさんがいったいどうなったのか、その先が聞けず、たいそう残念な思いをしたのでした。
追記:訪れたワイナリーの中で、ダリウーシュとホワイト・ロックについては、「ライフinカリフォルニア」のセクションで、もうちょっと詳しく書いてみました。こちらです。