いらない商品カタログはどうするの?
前回は『いらない家具はどうするの?』と題して、我が家でお世話になったソファーをどう手放したか、というお話をいたしました。
それで、「必要ないもの」に関しまして、もうひとつお話をいたしましょう。
頭を悩ませることの多い、ジャンクメール(junk mail)についてです。
アメリカに住んでいると、とにかくジャンクメールが多いのですが、「ジャンク」という名前のとおり、「自分にとっては、何の役にも立ちそうにない」郵便物のことですね。
英語辞書のMerriam-Websterによると、最初に junk mail という言葉が使われたのは60年前のことだそうですが、これだけインターネットが盛んになった今も、まだまだ隆盛です。
それこそ「配達する郵便屋さんは大変だなぁ」とご同情申し上げるくらいに、連日、郵便受けにたくさん舞い込みます。
ジャンクメールと呼ばれるものには、まずダイレクトメールがありますね。
「クレジットカードに入りませんか」とか「うちの銀行からお金を借りませんか」に始まって、「あなたの家はわたしが高く売ってあげましょう」とか「うちの歯科で美しい歯になりましょう」、はたまた「そろそろバケーションを取る時期ではありませんか」とか「お勉強をしようと思いませんか」と、次から次へとお手紙が舞い込みます。
それで、アメリカの場合、この手のジャンクメールを撃退する方法があるのです。
そもそもダイレクトメールが来るのは、「ダイレクトマーケティング協会(The Direct Marketing Association)」という団体に加入している会社が、何かしらの方法で顧客になりそうな人の名前と住所を知り、それをみんなで共有(!)しているからなんですが、こちらの協会に「わたしの住所を公開しないで!」とリクエストすれば、ダイレクトメールはだいぶ減ることになります。
以前は、こちらの協会にお手紙を書いて、「以下の氏名と住所を連絡リストから削除してちょうだい」と書面で送っておりました。すると、協会がメンバー各社に「削除しなさい」と指示を出すのです。
けれども、みんながインターネットを利用するようになってからは、こちらの協会の「郵便物選択サービス(Mail Preference Service)」というウェブサイトで、全米の連絡リストから自分のデータを除外(opt-out)できるようになりました。
ただし、こちらはオンラインで行うと5ドル(約500円)の手数料がかかるので、コンピュータ画面で入力したものを印刷し、それを指定の住所に郵送することもできます(これだと切手代だけで済みますが、もともと30日かかる彼らの処理が、90日に延びるとか!)。
それから、必ずしもこの協会に加入し、協会の仲間から住所を入手した会社ばかりとは限りませんので、この方法でダイレクトメールを完全に撃退できるわけではありません。たとえば、近くのお店が送ってくる場合は、近所で利用しているお店や団体から身元が割れることが多いので、こういったケースでは、個別に対応するしかありません。
けれども、アメリカじゅうを網羅しているという点では、ダイレクトマーケティング協会に依頼するのが、もっとも効果的な方法ではあるようです。
そして、ダイレクトメールに加えて、どこからともなく無理やり送りつけられる商品カタログの山。
こちらも、上記の方法で大部分はストップするはずです。
けれども、その後どこかでオンラインショッピングをしたら最後、そのときのデータが次々と転売されて、またカタログが送りつけられるハメになるかもしれません。
実は、わたし自身も、あるお店のウェブサイトでショッピングしたら、最初のうちは「わたしのデータを人にはあげない」という設定をしていなくて、それ以来、どこからともなく知らない会社の商品カタログが舞い込むようになりました。
初めのうちは、チョロチョロと新しいカタログが舞い込んでいたので、数社たまった時点で「あなたの登録リストから除外してよ」と、カタログに記載された住所に個別にお手紙を出していました。
ところが、一年ほどたった今年の4月、まさに「もぐら叩き」の状態になったんです。なぜなら、一社が新しい顧客データを知ると、そこから一気に数社にばらまかれ、またそこから数社にばらまかれ・・・ということになるから。
もう、売るほどカタログが舞い込むようになったんです!
今は、顧客データの転売業者もたくさんいるようですし、こちらが「もぐら」をつぶすスピードが追い付かないのです。
が、アメリカの場合、これにも撃退法があるんです!
こちらは、サンノゼ市役所のウェブサイトで奨励しているのを偶然に見つけたのですが、TrustedID(和訳「信頼できる身元データ」)という会社がやっている「郵便物選択サービス(Mail Preference Service)」です。
こちらのウェブサイトで、まずは自分のメールアドレスと氏名・住所を登録し、送られてきたカタログごとに、自分に割り振られた顧客番号(Customer Number)と情報源コード(Source Code)を登録します。
これで完了。
情報源コードというのは、その会社がどこからデータを入手したかという経路を知らせるもので、これがデータ抹消の役に立つそうです。
わたしの場合は、ある会社から4週立て続けにカタログが送られたことがありましたが、顧客番号と情報源コードはすべて違っていたので、4種すべて登録しておきました。
すると、今度は連れ合いの名前で送られてきたので、こちらも追加登録しておきました(ひとりが登録しておくと、複数の氏名や住所を削除依頼できるようになっています)。
この選択サービスで登録された場合、加盟する会社は依頼主をすぐにリストから削除することになっていますので、数日後にログオンしてみれば「完了(Delivered)」とか「待ち(Waiting)」とか各社の対応がわかるようになっています。
わたし自身の経験では、一番対応が良かったのは調理器具の『Chefs』、洋服の『L.L. Bean』、靴の『Zappos』でしょうか。当日すぐに「わかりました」とメールが来て、翌日にはデータ処理されていたようです。
逆に、いつまでたっても「ナシのつぶて」という会社もあります。
そして、今までお手紙で「削除依頼」しても何の効果もなかったのに、こちらのオンラインサービスで登録したら、ちゃんと削除してくれた、という会社もあります。
いずれにしても、こちらのサービスで登録したら、すぐにカタログが激減し、一ヶ月たった今では、ほとんど来なくなったのは確かです。
自身の登録ページの下の方を見ると、「これまでみんなで90万本の木を救った」とか「4億ポンドの温室効果ガスを防いだ」と、商品カタログを受け取らない効果が明記されています。
自分が登録した15社だけで「2本の木を救った」となると、せっせと登録しなくっちゃ! と、俄然やる気が出てくるのです。
サンノゼ市役所が奨励していたのも、ゴミを減らしましょう! という運動の一環でしたが、今は「ゴミをつくらない」ことを真剣に考える時代になっていますよね。
追記: ダイレクトメールやカタログといった「紙類」だけではなく、電話でのしつこい勧誘も頭が痛いところです。が、こちらは米国政府がやっているサービスで撃退できますね。
連邦取引委員会(通称FTC)がやっている『全米「電話しないで」登録(National Do Not Call Registry)』というサービスで電話番号を登録しておけば、企業やお店は勧誘の電話がかけられなくなります。
ただし、慈善団体や政治団体、世論調査、そして過去に取引のあった会社は除外されているので、まったく勧誘電話がなくなるわけではありません。が、効果はバツグンです。
当初は、登録は5年間だけ有効だったのですが、法律改正でずっと有効(!)となりましたので、一度番号を登録するだけでOKです。FTCに「違反者」として告発されると、罰金を課せられるので、効果はてきめんなのです!
と、このお話を載せた翌日、「携帯キャリアのスプリント(Sprint)が750万ドル(およそ7億5千万円)の罰金を課せられた」というニュースが流れました。
どうやら、電話番号登録制度の「違反者」として調査されていたスプリントと連邦通信委員会(通称FCC)が和解し、罰金と2年以内の改善という罰を受けたそうですが、アメリカって(とくにオバマ政権は)、違反には厳しいですよねぇ。