うさぎさんはいずこ?
去年の11月、「ワイルドターキーはいずこへ!」というエッセイを書きました。
七面鳥を食べる習慣のある感謝祭に、あたりのワイルドターキー(野生の七面鳥)が、いっせいに姿をくらましたというお話でした。
いえ、別にうさぎさんを食べる習慣はありません。でも、なぜだか、あたりの野生のうさぎが、いっせいに姿を消してしまったのです。
ご察しのとおり、我が家は、シリコンバレーでも市街地からちょっと離れたところにありまして、野生の動物をよく見かけるのですね。
うさぎもそのひとつで、いつもはゴルフ場の8番ホールに、ワンサカとたむろしています。もう慣れたもので、おじさんたちが近くでクラブを振り回そうと、ビクともしません。
「なにやってんの~?」といった面持ちで、みんなで並んで、人間たちの行動をのんびりと観察しています。
べつに、うさぎ狩りにあったわけではないでしょうが、もしかしたら、うさぎさんがどこかに総動員されている?
うさぎが姿を消したこの日は、イースター(Easter)。日本語で復活祭ですね。
キリスト教のお祭りで、十字架にかけられたイエス・キリストが、3日目の日曜日に復活したという、ありがたい日。今年は、4月8日でした。
で、イースターのシンボルといえば、うさぎさん。
なぜって、うさぎは多産なので、息吹を感じる春(spring)や新しい生命(new life)、そして豊富さ(abundance)を祝う復活祭には、うってつけなんだそうです。
そこで、わたしは考えました。この日、うさぎさんが少なかったのは、人間に誘拐され、お家に連れて行かれたのではないかと。
以前「イースターってどんな日でしょうか」でもご紹介したことがありますが、イースターのお楽しみのひとつに、「エッグハント(egg hunt)」というのがあります。
大人たちが、イースターエッグ(卵)をあちらこちらに隠し、それを子供たちが探し出すという楽しいお遊びです。
今は、色とりどりに絵付けされた本物のゆで卵よりも、プラスティック容器に入ったお菓子やおもちゃがよく使われます。
で、このエッグハントの立役者は、うさぎさん。「イースターバニー(Easter Bunny)が、卵やお菓子を隠したんだよ」と、小さい子供は言い含められるのです。
だから、ひょっとしたら、「ほ~ら、イースターバニー君だよ~」と子供に見せるために、野生のうさぎが連れて行かれたのではないか・・・と、そう勘ぐってみたのです。
だとしたら、うさぎさんはもう帰って来ない?
ま、事の真相は謎のままですが、ここで、イースターのトリビアをどうぞ。
子供たちがバスケットに収穫物をいっぱい集めるエッグハント。だから、収穫物となるお菓子とイースターは、切っても切れない縁なんですね。
そんなわけで、チョコレートやキャンディーのお菓子の売上げは、ハロウィーンに次いで、年間第二位なんだとか。
あくまでも宗教的なお祝いなので、ちょっと意外な気もしますが、イースターにめがけて、なんと20億ドル(約2千億円)がお菓子に費やされる、という統計もあるそうです。
ほんとかなぁ?
でも、アメリカの親の9割が、子供にイースターバスケットを与えるというので、あながちウソではないのかも。
で、そのお菓子も、単なる普通のお菓子じゃなくって、うさぎの形をしたチョコレートだとか、ひよこの形をしたマシュマロだとか、卵に似せたチョコボールだとか、イースター専用のものが生産されているのですね(そう、ひよこも、うさぎや卵と並んで、「生命」を祝うイースターの立派なシンボルなんです)。
ちょうど、こんな感じ。べつに、これは、うさぎさんが共食いをしている図ではありません。チョコレートの中には、きっとマシュマロやクリームなんかが入っているのでしょうね。
こんなうさぎ型チョコレートを手にすると、10人中8人が、真っ先に耳をかじるそうですよ。
まあ、ひよこ型お菓子の頭にガブッとかぶりつくよりも、耳の方がまだましかな。
一方、きれいに飾り付けされた卵、「イースターエッグ(Easter egg)」。
色付けには、食用の染料を使います。ちゃんとイースターエッグ用に、何色かセットになっているものが売られているんですね。
ここで、ゆで卵を、食用染料の入った水に浸すわけですが、なんでも、お酢を入れると、鮮やかに色が付くそうな。お酢が苦手という人は、オレンジやレモンのような柑橘類の酸味を使う人もいるそうです。
どうも、酸には、色素が定着しやすい効果があるようですね。
それにしても、イースターエッグなんて、子供のお遊びにしか思えませんが、卵に飾り付けをする習慣は、近年の流行ではないらしいです。なんと、6千年前の古代エジプトでも行われていたんですね。
昔から、さまざまな文化で、卵は「春」を表し、ひなが卵からかえることは「生命の復活(rebirth)」とも解釈されていたようです。
飾り付け卵といえば、ウクライナの芸術品「ピサンキ(pysanky)」などもありますし、古来、卵という食べ物は、その形といい、白い殻のキャンバスといい、人々を魅了し続けてきたのですね。
で、話は戻って、我が家のまわりのうさぎさん。
イースターの2日後、やっぱり、一羽しかいませんでした。
う~ん、イースターで出払ったあと、まだ帰って来ていないようです・・・
追記:イースターの卵、「イースターエッグ(Easter egg)」。この言葉は、おもしろいところに転用されています。
映画やDVD、ビデオゲーム、コンピュータ・プログラムといったものの中に、こっそりと隠されているメッセージや図柄のことを指すのです。
作者がお遊びで入れているので、ちょっと見にはわからないけれど、よ~く探してみると、ふと見つかる。ちょうど子供が卵を探し出すエッグハントのような感覚なので、イースターエッグという名前が付いたようですね。
大人にとっても子供にとっても、何かを追い求めるゾクゾク感がたまらないわけですよね。
それから、エッグハントの写真は、シリコンバレーの地元紙、サンノゼ・マーキュリー紙に掲載されたものです。イースターの前日の土曜日、シリコンバレーのあちらこちらの公園で、エッグハントが催されたそうです。
うさぎのカードは、Hallmarkのものです。あまりにかわいいので、つい買ってしまったのですが、うさぎの毛の部分がフワフワと手触りがよく、なかなか芸が細かいのです。