さくらんぼの実が生りました
こちらの「ライフ in カリフォルニア」のコーナーでは、前々回、『さくらんぼの花を求めて』というお話を書いてみました。
3月の終わり、さくらんぼの白い花を見に、家からちょっと南へドライブをしてみたお話でした。
そして、今日、また似たようなコースをたどって、晴れた午後のドライブに出かけてみたのでした。
前回と同じで、まず、サンノゼ南端にある我が家から、フリーウェイ101号線を南下します。
この辺の101号線は、「エル・カミーノ・レアル(El Camino Real)」という、シリコンバレーの幹線道路と併用になっていて、道路脇に、「歴史的な道路」を示す鐘が立っています。
いつか、このエル・カミーノのお話をする機会もあると思いますが、この道は名前を変えながら、カリフォルニアの南端サンディエゴの方まで、延々と続いているそうですよ。
途中、黄色いスクールバスを見かけたのですが、お尻の部分がやけに丸っこくて、とてつもなく年季が入っています。
さすがに、鼻先が飛び出たレトロなバスではありませんが、こちらもかなり古そうですよね。
そのレトロバスに別れを告げ、フリーウェイ101号線を出て、コックレイン・ロード(Cochrane Road)を西に向かいます。
ちょっと行くと、前回利用したモントレー・ロード(Monterey Road)に出て来るので、ここを右折し、一路北へ向かいます。
モントレー・ロードは、101号線に併走しているので、混雑の迂回路に最適なのですね。
少し行くと、前回ご紹介した、給水塔が出てきました。
今日は、平日の午後。天気がよくって、絶好のドライブ日和だけれど、モントレー・ロードを走っている人は、ほとんどいません。
時に、レーシングカー気取りの車が、猛スピードでビュンと通り過ぎて行きます。
道路の脇には、見渡す限り、さくらんぼの果樹園が続いています。
また前回のように、道路脇に車を止め、さくらんぼの写真を撮ってみることにしました。
5月も下旬ともなると、さくらんぼの実もたわわに実っています。
赤いさくらんぼが、ポチポチ葉っぱの間から顔を出しています。
ちょっとアップにすると、こんな感じです。かなり背の高い、さくらんぼの木。上の方まで、びっしりと実っています。
それにしても、ふた月もしないうちに、こんなに変わるものなんですね。3月の終わりには、まだ花だったのに。
またちょっと北上すると、「さくらんぼ(Cherries)」の看板を見つけました。
そこで、中へ入ってみると、ほんの道路端に、こんな果物スタンドが立っていました。
こちらは、この辺でも有名な果樹園の直営スタンドなんですね。
その名も、「サーソ家のフルーツスタンド」。
サーソさんの一家は、1927年から、この場所で果樹園を経営しています。
さっそく、さくらんぼを買いにスタンドに向かったのですが、売っているものも、いたってシンプル。さくらんぼにアプリコットにプラムです。
アプリコットだと、かごに山盛りで、8ドル。こちらは、近くの果樹園から配送されています。
さくらんぼは3種類あって、ダークチェリーのビング種(Bing)、山形県のさくらんぼに近いレニエ種(Rainer)、そして、ビングとレニエの交配種ブルックス(Brooks)。ひと山、それぞれ、10ドル、15ドル、12ドルで売っています。
買ってみたのは、今まで食べたことのないブルックス。普通、スーパーに行くと、ビング種が多く、たまにレニエが手に入りますが、ブルックスというのにはお目にかかったことがありません。
でも、これはカリフォルニアで生まれた品種で、谷間の暖かい気候にもよく合うそうです。
ビングの濃い甘味と、レニエの酸味が、ほどよく溶け込んでいます。
何を隠そう、右側の方が果樹園のオーナー、ケネス(ケン)・サーソさんです。
仲良く肩を組んでいるのが、一緒に育った、50年来の親友の方だそうです。名前は伺わなかったですが、日系の方とお見受けいたしました。ゴルフをしないときは、こうやってお店を手伝ってくれるそうです。
サーソ一家がこの辺りに引っ越して来たのは、おじいさんの代の1927年。このジョーおじいさんは、シリコンバレーはキャンベル(Campbell)の街から引っ越してきました。
当時、キャンベルも果樹園の広がる場所だったはずですが、きっと、もっともっと広い土地を求めて南下して来られたのでしょうね。
こちらのピンボケの写真は、店内の壁に飾ってあった、昔の木箱の前面部分です。
一番左は、ジョーおじいさんの名前が書いてあって、「南コヨーテ(South Coyote)」という地名が添えられています。
真ん中がお父さんの代、一番右が自分たちの代だそうです。
お店の看板に書いてある「サーソの子供たち(Saso Kids)」というのは、ジョーおじいさんの誇り高き子孫、といった意味なのでしょうね。
ケンさんご自身は、この地で生まれ育ったそうですが、子供の頃は、まわりには日系の農家が多かったといいます。道を隔てたあちら側には、ナカオ・ファミリーがいて、ピーマンや唐辛子を育てていたそうです。
もう、今は、この辺りには日系の農場はほとんどなくなったそうですが、やはり、食べていくのは容易ではないからねと、ケンさんはおっしゃっていました。後継者不足ということもあるのかもしれませんね。
ケンさんと途中でお店に出て来た奥さんには、4人の子供がいて、みんなもう立派に大人になっているそうです。
孫も何人かいて、店内の壁には、孫娘が描いてくれた、カラフルなさくらんぼの絵が飾ってありました。(ケンさんが12歳の頃の写真も、誇らしげに掲げてありましたよ。一時期、かぼちゃ畑をやっていて、大きなかぼちゃを腕いっぱいに抱えている写真です。)
さくらんぼの収穫のシーズンともなると、子供たちの家族が、週末に手伝いに集まってくれるそうです。
この辺の名物一家として、地元の新聞サンノゼ・マーキュリー紙にも、何度か取材を受けたそうですが、道理で、どこかで見たことのある顔なわけですよね。
このコヨーテ・バレーでは、いまだに大企業や住宅地の誘致プランがくすぶり続けているようですが、いつまでも、一家総出で、おいしいさくらんぼを作っていただきたいなと思うのです。
さくらんぼの時期に、シリコンバレーに来られることがあったら、ぜひ足を延ばしてみてくださいね。
地図は、こんなものでいかがでしょう。
モントレー・ロードをモーガンヒル方面に向かい、サンノゼ南端のバーナル・ロード(Bernal Road)を越え、パーム・アベニュー(Palm Avenue)が交わるところにあります。