もうすぐ春でしょうか
日本でひと月を過ごしたあと、2月初めにアメリカに戻ってくると、カリフォルニアの空気がやんわりと暖かくなっているのに気づきました。
だいたいアメリカでは、12月下旬のクリスマスの時期に一番寒くなる地域が多く、ここ北カリフォルニアも例外ではありません。
2月ともなると、「もうすぐ春かしら?」と、命の芽吹きを感じるものです。
そんな初春の夕刻、サンフランシスコの街を海沿いまでお散歩すると、あちらこちらでカップルを見かけました。
わたしのお気に入りの「1.5番埠頭(ピア1&1/2)」にさしかかると、
若いカップルが仲良くベンチに腰掛け、海を眺めています。
でも、二人の頭には「海」はなくて、会話のことでいっぱいなんです。
「あのさぁ、こんなことを聞くと、ちょっとひかれるかもしれないけど、聞いてもいいかな?」
と、男性が女性の方に向き直って、唐突に尋ねます。
「え、なに、なに? べつに構わないわよ」
女性は、それこそ何が出てくるのかと、目をまんまるにして身を乗り出します。
と、話がとっても気になるところですが、残念ながら、その先は存じません。足早に散歩していた連れ合いとわたしは、すぐにその場を通り過ぎて、二人の会話はすっかり海風にかき消されてしまいました。
フェリービルディングの中を通って、賑やかな電車通りに出て来ると、横断歩道のところで後ろにカップルがいるのに気づきました。
なにやら声高に会話しているのですが、男性は藪から棒に、こんな話題を持ち出しています。
「今まで僕が海で体験した中で、一番すごかったのは、○○海のクラゲだったよ。もう、そこらじゅうにクラゲがプカプカ浮いていて、あんなのは初めてだったねぇ」
すると、女性も負けないくらいに声高に「まあ、スゴいわねぇ!」と合いの手を入れています。
その相槌に勇気づけられたのか、男性はさらにクラゲについて語ります。
「クラゲってさぁ、刺されるとひどいでしょ。でも、あれって、一度目は大丈夫なんだよね。一度クラゲに刺されると、その時は大丈夫なんだけど、毒で体に抗体(antibody)ができるんだ。それで二回目に刺されると、(体内の抗原抗体反応によって)アレルギー反応が出ちゃって、腫れたり痛くなったりって大変になるんだよ」
と、なかなか科学的な知識を披露しています。
女性の方は、ほんとに感心したのか、それとも感心したフリをしているのか、「あらまあ」とか「そうなんだぁ」と、見事な合いの手を入れています。
残念なことに、ほどなくカップルと離れてしまったので、そのあとクラゲが何に化けたのかは存じません。
けれども、先ほどのカップルといい、このクラゲのカップルといい、どう見たって最初のデートか二回目のデートという感じで、それが、ういういしくて微笑(ほほえ)ましくて、「あ〜春なのかなぁ」と思ってしまいました。
どうしてデートして間もないとわかるのかって、男性の「声の張り」と女性の合いの手の「熱心さ」には、何回もデートしたカップルには無い情熱がありましたもの。
その数日後は、ヴァレンタインデー(Valentine’s Day)だったんですが、
アメリカの男性って、もう大変なんですよね!
そうなんです、今まで何回も書いたことがありますが、アメリカでは、ヴァレンタインデーは「男性から女性に贈り物をする日」。お花やチョコレート、ぬいぐるみにアクセサリーと、「毎年頭を悩ませる日」でもあるのです。
なんでも、今年はヴァレンタインデーに向けて、200億ドル(およそ2兆円)のお買い物があるだろう、と予測されていました!
もちろん一番人気は、赤いバラなどのお花ですが、ヴァレンタインデーにスーパーマーケットに行ったら、お花のコーナーには男性がひっきりなしに訪れ、大事そうに花束を抱えてレジに向かう人をたくさん見かけました。
それこそ、お花を買うのに未婚も既婚も関係ないのですが、売り場にはこんなことも書いてあります。
「Let the roses do the talking(バラに気持ちを伝えてもらいましょう)」
こちらの車は、後部座席に「Happy Valentine’s Day(ハッピー・ヴァレンタインデー)」の風船を詰め込んでいます。
たぶん、お店に立ち寄って花束も買われたんじゃないかと思いますが、このように、お花と風船、お花とケーキと「奮発する」男性もいらっしゃいます。もしかすると、彼らのポケットの中には「指輪」なんかもひそませてあるのかもしれませんね。
というわけで、この日はあちらこちらで赤やピンク色を見かけて、華やかな気分にもなりましたが、その二日後は、旧正月(Lunar New Year)。
16日金曜日の午前零時を迎えると、辺りで爆竹がパンパンと鳴り響きます。
この時期、旧正月を祝う習慣のないわたしたちも、「ハッピーニューイヤー!」って言われますが、みんなに旧正月が浸透しているカリフォルニアでは、またまた春先にめでたいお祝い事がやって来た! という感じでしょうか。