もう一度、やり直し!
前回は、カリフォルニアで車を運転していて、「あれって、何だろう?」と不思議に感じる話題をピックアップいたしました。
それは、フリーウェイでクネクネと蛇行するパトカー。
この蛇行運転には、ちゃんと意味があるのですが、ときには「趣味でやってるんじゃないの?」といぶかしく思うこともある、というお話でした。
そんなわけで、ときに、アメリカの警察っておもしろいなぁと思うことがあるんです。なんとなく、日本とは違うかなぁ、と感心するようなことが。
2年前の年末、クリスマスシーズンのイベントを楽しもうと、シリコンバレーのロスガトス(Los Gatos)に向かいました。
ロスガトスという街は、こぢんまりとした歴史的ダウンタウンが魅力の高級住宅地で、街のはずれには、ヴァソナ公園(Vasona Park)という大きな公園があります。
サンタクルーズ山脈から流れ出すロスガトス川(Los Gatos Creek)をせき止めてつくった、ヴァソナ湖(Lake Vasona)という貯水池があって、そのまわりは、ゆったりとした緑豊かな公園となっているのです。
この公園では、湖でボート漕ぎや釣りもできますし、ピクニックエリアや自然トレール(散策路)も整備されているので、家族の憩いの場として大人気です。
公園の南側の草原には、トコトコと小さな機関車も走っていて、子供連れの乗客が、のんびりとピクニック日和を楽しんだりしています。
そして、シリコンバレーの IT企業も、ピクニックエリアの一角を借り切り、社員や家族を招いてバーベキューパーティーを開いたりします。
カリフォルニアでは「アルコール類は禁止」の公立公園が多いのですが、この公園では、ピクニックエリアでアルコールが許されているので、会社のパーティーなどには最適なんですね。
一方、クリスマスシーズンにはライトアップでも有名で、『光のファンタジー(Fantasy of Lights)』と名付けられた祭典には、例年、近隣の街々から、たくさんの見物客が訪れるのです。
まあ、美しい光の祭典があちらこちらで開かれる日本と比べると、ちょっと見劣りするかもしれませんが、あまり大掛かりなライトアップを見かけないシリコンバレーでは、かなり目を引くイベントなのです。
この光の祭典がおもしろいのは、とにかくだだっ広い公園に光の仕掛けが点在していて、これを楽しむには、歩くのではなく、車でグルッと回るところでしょうか。
そう、ちょうどサファリパークを車で回って、珍しい動物たちを見学する感じですね(なぜか、こちらは、恐竜たちがたわむれるコーナー!)。
冬なので寒いのですが、窓をいっぱいに開け放って、指定のラジオ局のクリスマスソングを流しながら、道路脇に組まれた光の芸術を堪能するのです。
というわけで(本題に入りますと)、光の祭典を楽しもうと、会場のヴァソナ公園に車で乗り入れようとしたときに、妙な経験をしたんです。
我が家から公園に向かうと、正面ゲートには簡単に右折して入れるような方向だったのですが、なぜだか、ゲートは右折進入禁止となっていました(右側通行のアメリカですから、右折は簡単なんですが・・・)。
ところが、連れ合いは、それを無視して右折進入したところを、警備にあたっていた地元のロスガトス警察に止められてしまいました。
「ちょっと、そこは右折禁止なんだよ。看板が見えなかった?」
そう声をかけてきた警察官は、次に、こんなことを言ったんです。
「もう一度、道路に戻ってそのまま直進し、次の信号で Uターンして、最後に左折して正面ゲートに入っておいで」と。
なんともややこしい話なので、「そうしなきゃダメなの?」と、連れ合いがゴネたんですが、すると、警察官は、ちょっと楽しそうにこう答えました。
「そうだねぇ、もし違反チケットを切られたくなかったら、そうした方がいいんじゃないのぉ?」と。
そうなんです。ルールに違反したから、もう一度、正しい方法でやり直しなさい、そうすれば、違反は大目に見てあげましょう、と言っているんですね。
まあ、なんとものんびりとしたお話ではありますが、そこがまた、アメリカの良いところでもありましょうか。
このベテラン警察官の目的は、違反者を捕まえることではなくって、違反したことを知らせて、正しい方法でやり直させることだったんですよね。
そうすることで、ルール違反を、しっかりと本人に自覚させる。
これがもし大都会だったり、警察学校出たての使命感に燃えた若い警察官だったりすると、まったく違った展開だったのかもしれませんね。
はい、違反ね! これが違反チケットね!と、有無をも言わせず「違反」のレッテルを貼ろうとするのかもしれません(そっちの方がお金にもなるし、自分の成績にもつながるでしょうから)。
けれども、このロスガトス警察官は、もうベテランの域。
長年、いろんな違反者を見てきて、「やり直させる」方が効果のあることを知っているのかもしれません。
だって、「ダメダメ! もう一度、やり直し!」なんて、まるで子供が学校でしかられているみたいで、恥ずかしいではありませんか!
だから、もう二度と違反しないようにって、誰でも肝に銘じるでしょう?
(う~ん、なんとなく、うまい心理作戦・・・でも、結局は、みんなうまく乗せられる・・・)