よみがえった Manresa、ついに三つ星!
10月20日、シリコンバレーの Manresa(マンリーサ)が、ついに「ミシュラン三つ星」の栄光に輝きました。
今年3月、『災害からよみがえった二つ星 Manresa』としてご紹介しておりましたが、シリコンバレー・ロスガトス(Los Gatos)市にある名物レストランです。
シリコンバレーには、「キラ星」のつくレストランは少ないですが、ずっと二つ星をキープし続けてきた、地元ご自慢のレストランなのです。
「災害からよみがえった」というのは、昨年7月、独立記念日の直後に起きた火災のことですが、ほぼ全焼という災禍からも見事に立ち直り、昨年の大晦日に再びお店を開けました。
大晦日は、支えてくれたスタッフや身内の方々とのパーティー。そして本格的な営業は、今年の元日から。まさに、2015年は、復興、そして飛躍の年なのでした。
オーナーシェフのデイヴィッド・キンチ氏とは、連れ合いが日本のお店でお会いして以来、メールのやり取りをさせていただいて、「三つ星昇格」のニュースは、我が家にとっても嬉しい出来事なのです。
そして、なによりも、直前に結婚記念日を祝おうと Manreasa にお邪魔し、「デイヴィッドは、またまた腕を上げたよね!」と感心したばかりなので、「昇格」の知らせに大いに納得したのでした。
今回ご紹介している写真は、10月初頭の結婚記念日にお邪魔したときのコースディナーです。
こちらは、「おまかせコース(Tasting menu)」しかありませんので、毎回、まったく違った、斬新なものが出てきます。ですから、「今日は何が出てくるのかなぁ?」と、ワクワク、ドキドキ。
「記念日にお待ちしていますよ」とおっしゃったデイヴィッドさんも、前菜が終わった頃にテーブルに現れ、
There’s more to come(これから、もっとたくさん出てきますよ)と、自信のほどを見せてくれます。
その言葉通り、力作の数々の中、もっとも印象に残ったのが、刺身。
「緑のガスパチョ、刺身スタイル(Green gazpacho, sashimi style)」という名前なので、本来はスープが主役なのかもしれませんが、まあ、こんなに繊細な刺身は、日本でもなかなか食べられるものではない! と、舌を巻いたのでした。
魚はどれも、甘くて繊細で、口の中に「うまみ」がパ~ッと広がります。そして、なにやら貝の身も添えてあって、それがまた、美味しいこと。
あとでデイヴィッドさんに聞いたら、ミルガイだそうで、貝が苦手のわたしでも、貝本来の甘みを堪能できたのでした。なるほど、貝を毛嫌いしてはいけない! と、反省した瞬間でした。
なんでも、魚介類は、わざわざ東京・築地から空輸したものを使っているそうで、「それだけ労力をかけても、最高のものを!」という意気込みをひしひしと感じます。
そして、もうひとつの「お気に入り」は、ひな鳩(squab)。
こちらも、日頃は敬遠する食材ですが、ポトフ(pot au feu)風にあっさりと仕上げた鳩のお肉と「足」が、松茸やネギと絶妙にマッチしています。
ローズマリーを添えた「足」は、手で食べるようになっていて、それこそ、骨までしゃぶって(!)味わいました。「ひもを取って、中を食べてもいいですよ」と許可が出たので、上から下まできれいに食べ尽しました!
そして、これを書きながら学んだのですが、ポタージュ風になっていた「メロンのコンフィ(confi of melon)」というのは、手間がかかるものだそうですね。
コンフィは、油脂や砂糖に漬けて食材を保存する調理法ですが、メロンのような大きな果物をコンフィにするのは手間がかかるとか。「甘くて、美味しいねぇ」と言いながら、ぺろっと食べてしまいましたが、いろいろと奥が深いものですねぇ。
そんなわけで、記念日の Manresa。
普段は、たった一皿でも満足のいくものがあれば、その晩のディナーは最高だと感じるのですが、この晩は二皿に大満足だったので、ニコニコと笑顔のディナーになりました。
帰りにキッチンにも案内していただきましたが、デイヴィッドさんには「伝えたいことがある」と、こう申し上げたのでした。
You’re becoming a master of sashimi
あなたは、刺身の達人になっているわねぇ
Oh, that sashimi was just exquisite!
もう、あの刺身は、ほんとにデリケートで美味しかったですよ
いつものように、少年のような目の輝きで、相手の意見に耳を傾けるデイヴィッドさんでしたが、7月にも日本を訪れ、東京のお店を食べ歩きされたそうです。
神楽坂の虎白(こはく)という懐石料理のお店と、西麻布の拓(たく)というお寿司屋さんに行かれたとか。
加えて「今度は、北海道にも行きたいねぇ」ともおっしゃっていました。
たぶん「魚介類なら北海道」と耳にされているのだと思いますが、刺身に関しては、東京にもぜひ行っていただきたいお店があるので、次回は、連れ合いが東京にいるときに一緒に食べに行ってくださいね、と頼んでおきました。
日本各地には、「その土地ならでは」の素材がたくさんありますが、いつか福岡の近松(ちかまつ)というお寿司屋さんで食べたタコが、忘れられません。柔らかくて甘くて、タコが苦手のわたしも「タコって、本来はこんな味なのかぁ」と学んだのでした。
きっと、いろんなものが苦手だと思っているのは、本来の味を知らないだけなんでしょうねぇ。
日本各地をめぐる「三つ星シェフ」が新しい食材に出会ったら、いったいどんな風に興味をひかれるのか、それ自体、とっても興味をひかれるのでした。
Manresa に三つ星のニュースが届いたのは、火曜日。お店の定休日でスタッフはいないし、デイヴィッドさんは、アイルランドのイベントに出張されていたそうですが、お店のスタッフに向かって「あなたたちが支えてくれたお陰だよ」とツイートなさったとか。
「おめでとう!」を伝えた連れ合いのメールに対しては、「僕たちも、これほど嬉しいことはありません(We couldn’t be any happier!)」と、すぐに返事がありました。
三つ星になると、これまで以上にズシリと重い名誉と責任がのしかかってきますが、これからも、今までのように自分なりの味を追求していって欲しいな、と祈っているところなのです。