シリコンバレーの新名所!
「名所」と言っていいのか、ちょっと微妙なところですが、シリコンバレーに登場しました!
新しいスタジアムです!
アメリカンフットボールのプロチーム、サンフランシスコ49ers(フォーティーナイナーズ)の新スタジアムで、名前は Levi’s Stadium(リーヴァイス・スタジアム)といいます。
三十余年前、初めてサンフランシスコに渡って来た頃から49ersファンなので、このスタジアム建設は、わたしにとっては他人事ではないのです!
もともと49ersは、サンフランシスコ市南東の湾に突き出た半島にスタジアムを構えていました。
が、こちらのキャンドルスティック・パーク(Candlestick Park、写真)が老朽化のため、シリコンバレーのサンタクララ市に新居を建設。
チーム名は「サンフランシスコ49ers」のまま、南のシリコンバレーに引っ越すことになりました。
サンフランシスコ(郡と市を兼ねる)からは、サンマテオ郡を飛び越えて、サンタクララ郡に引っ越すわけですが、こちらのサンタクララ市には、チームのオフィスも練習フィールドもあるので、自然な選択ではあるでしょうか。
もちろん、スタジアムの計画から建設には何年もかかるので、みなさん「いったいいつできるのか」と待ち望んでいました。
こけら落としのイベントは、8月2日に開かれたばかりですから、できたてのホヤホヤです(こちらは、今年3月に撮影した航空写真。ここから急ピッチで工事が進んだのでした)。
わたしが実際に新スタジアムを目の当たりにしたのは、初試合が開かれる直前。
ちょうど車で近くを通りかかったのですが、スタジアムの正面入口を見あげると、まさに「白亜の殿堂」。大きいし、美しい。
そして、裏側のでっかい駐車場にまわってみると、そこから見るスタジアムのなんと巨大なことか!
記念すべきフットボールの初試合は、プレシーズン(レギュラーシーズン前の腕試し期間)の第2週目、8月17日(日)に開かれました。
試合当日、スタジアムに向かう段になると、心臓がドキドキと緊張してしまうのです。「道に迷わないで着けるかな?」とか「指定された駐車場には、ちゃんと空きスペースがあるのかな?」と、要らぬ心配ばかりしていました。
以前のスタジアムに比べると、複数のフリーウェイからアクセスできるし、周辺には電車やバスの公共交通機関も発達しているので、行きやすいのは確かです。けれども、何事も初めての経験というのは、緊張してしまいますよね。
きっと、スタジアムに向かうみなさんが、同じ気持ちだったのでしょう。
前を行くトラックにも、チームのシャツを着た親子が乗っていて、「俺たちはバッチリ応援してやるぜ!」というピリッとした空気が漂っていました。
新スタジアムは、サンタクララ市から借り受ける遊園地グレートアメリカ(Great America)の臨時駐車場を利用しているので、スタジアムも駐車場も広々としています(市の土地を利用するので、2010年に住民投票が行われ、スタジアム建設は可決されています)。
そんなわけで、恐れていた大混乱もなく、スムーズに車を停めると、まずは、ここで記念撮影!
ここから見るスタジアムは、いつ見ても美しいのです。
みなさんも、記念写真を撮ったり、駐車場でテイルゲートパーティー(tailgate party)を開いたり、思い思いの方法で「この瞬間」を楽しもうとしています。
(Tailgate party については、以前こちらでご紹介していますが、車の「後部ドア(tailgate)」を開け放って、みんなでバーベキューをして楽しむことですね)
そんな談笑には脇目もふらず、こちらは気がせくので、チケットゲートをくぐって、スタジアムの中へ。
スタジアムの左右にはゆったりとした階段のアプローチがあって、階段を登ると、スタジムをぐるっと取り囲むコンコースに入ります。
コンコースには、食べ物や飲み物を売るフードスタンドがいっぱいあって、「どれにしようかな?」と思案する観客の流れで渋滞しています。
ちょっとした「障害物競争」みたいに、ビールやホットドッグを持つ人をかき分けながら、コンコースから自分の座席へと下って行きます。
ここで個人的に気に入ったのが、座席。もちろん、雨露をしのぐために「革張り」ではないのですが、真っ赤なシートが、革張りのソファーみたいにフワフワと柔らかいのです。
そして、ひとつひとつの背もたれには、誇らしげに49ersのロゴが刻まれ、それがなんともオシャレです。
この真っ赤な椅子に座って、青々としたフィールドを見渡すと、この新スタジアムは、観客のことを考えてうまく設計されていることに気づくのです。
座席が心地よいばかりではなく、観客席の傾斜が、みんながフィールドを眺めやすいようになっています。アメリカ人は背の高い人が多いので、当然のことながら座高も高いのですが、そんな背の高さも、前の人との距離も気にならないくらいに、ゆったりとつくられているのです。
と、まあ、スタジアムは立派ですが、この日の記念すべき初ホームゲームは、散々なものでした。
お相手は、名クウォーターバック、ペイトン・マニング選手(写真18番)率いるデンヴァー・ブロンコス。
強豪なので、こちらは1点も入れられずに、34対0で負けてしまったのでした。
この日は太陽が容赦なく照りつける、かんかん照りの日曜日でしたが、スタジアムは蒸すし、試合は面白くないしで、第3クウォーターのうちには、ほとんどの観客が家路についたのでした。
さすがに、我が家もさっさと席を立ったのですが、駐車場では、ローカルニュースのキャスターがインタビューをしていましたね。
まあ、アメリカ人のことですから、「いやぁ、最高のスタジアムだし、最高の体験だったねぇ!」と答えていたに違いないです。が、なんとも後味のよろしくない試合ではありました。
ところが、その翌週の日曜日、チームはガラリと変身するのです!
だって、この美しいスタジアムから全米に生中継するのですから、へぼ試合なんて、できっこないではありませんか!
(写真は、FOXネットワークの中継のためにキャスターの座席を準備しているところ。フィールドを一望に見渡せる、絶好の位置にセットされています)
まあ、まだプレシーズンですから、注目の49ersのクウォーターバック、コリン・キャパニック選手は、最初だけちょっと登場して、あとは控えの選手にバトンタッチ。
けれども、控えのクウォーターバックふたりが善戦して、この日は、サンディエゴ・チャージャーズに21対7で勝利しました。
大差ではなくとも、きらびやかなプレーが少なくとも、勝ちは勝ちですよね!
この日は、みなさん意気揚々とスタジアムをあとにしたのでした。
というわけで、サンフランシスコからシリコンバレーに引っ越したスタジアムではありますが、観客は、それこそサンフランシスコ・ベイエリア全域から駆けつけているようです。
お隣さんは、東の内陸部から2時間かけてやって来るそうですし、前の座席の人たちは、聞いたこともない街から駆けつけているようでした。
シリコンバレーにあるから、地元の人が多いのかと思えば、この辺りはテクノロジー業界の人が多いでしょう。ですから、残念なことに、熱狂的な49ersファンは少ないようですねぇ。
けれども、スタジアムには、いろいろとテクノロジーを駆使していて、それも49ersの自慢となっているようですよ。
新スタジアムでは、観客席をぐるりと取り囲んで、電光掲示のメッセージが流れるようになっているのですが、それだって、今までのキャンドルスティックではなかった芸当ですねぇ。
(写真の It’s Good というのは、フィールドゴールが入って、3点入ったというメッセージ。点が入ると、旗を持った青年たちがフィールドを全速力で駆け抜けるのです)
メッセージの中には、古いサンフランシスコのスタジアムを指して、こんな皮肉が流れるのも目にしました。
Goodbye to foggy soggy status quo stadium!
さようなら、霧で湿った、現状維持のスタジアムよ!
今までお世話になったキャンドルスティックは、もうすぐ解体され、付近は再開発の大プロジェクトとなります。
54年の歴史を誇るスタジアムにとっては、なんとも酷なメッセージではありました・・・。
追記: 新スタジアムのテクノロジーについては、こちらの第2話でご紹介しています。49ersが自慢しているわりには、ちょっとした「つまずき」があったりしますが、まあ、それもご愛嬌でしょうか。