Life in California
ライフ in カリフォルニア/日常生活
Life in California ライフ in カリフォルニア
2009年11月14日

タイムカプセル

ちょっと気取った題名ではありますが、まったく他愛もないお話です。

改築中の我が家のバスルームもようやく完成し、今は、性懲りもなく、もうひとつトイレルームまでやってしまうことになりました。

この新しいチャンスの到来に、我が家を担当するデザイナーなんかは、真っ白なキャンバスを目の前にした絵描きさんみたいに、いったい何を描こうかとウキウキとしておりました。

壁を真っ赤に塗ったらどうかという連れ合いに同調して、Chinese Red(ちょっとオレンジがかった赤)に塗りましょう! と提案してくれたのですが、さすがにそれはご辞退申し上げて、ほんのりオトナの雰囲気の若草色にいたしました。

だって、四方が真っ赤な部屋なんて、落ち着かないでしょう。


今回は狭い空間ですし、シャワーに比べると部品が少ないので、簡単なリフォームではありますが、それなりに洗面台をどうしようかとか、蛇口をどうしようかとか、悩ましい点もいくつかありますね。

結局、洗面台の台は作ってもらうことになったので、完成まで少々「お預け状態」になっておりますが、今朝は、さっそく注文していた照明器具が届きました。

ごくシンプルに! をモットーに、これといって飾り気のない照明ではありますが、この照明会社からの届け物に、思わずほほえんでしまったのでした。

何がほほえましいかって、まるで家族経営のお店が何かを送って来たみたいに、新聞紙の詰め物がしてあったのです。しかも、あふれんばかりに箱いっぱいに。

だって、ちゃんとした照明の専門会社ですよ。普通、商品を外箱に詰めたら、中身が動かないように専用の梱包材を使うでしょう。たとえば、あのプチプチとしたイボのある透明な梱包材とか。

そんなことを思いながら、クシャクシャになった新聞の束を広げてみると、それが見たこともない新聞だったんですよ。
 最初に出て来たスポーツ欄には、sgvtribune.com なんて書いてあるのですが、「トリビューン(Tribune)」といっても、SGV はシカゴ(Chicago)ではなさそうだし、いったいどこの街のトリビューン紙なのか、さっぱりわかりませんでした。

さらにガサゴソとやっていると、新聞の第一面が出て来たので、ようやく SGV というのが San Gabriel Valley(サンガブリエル・バレー)を意味することがわかりました。

なんでも、サンガブリエル・バレーというのは、ロスアンジェルス市の東に位置する谷間のことだそうで、華やかな元日のローズ・ボウル・パレード(大学フットボールの試合の前に行われるパレード)で有名なパサディナ市などがある場所だそうです。

もちろん、同じカリフォルニア内の話ではありますが、わたしは南のことはよくわからないので、まったく初めて聞いた土地の名だったのでした。


というわけで、サンガブリエル・バレー・トリビューン紙の全体を修復してみると、おもしろいことに気が付きました。今はもう11月なのに、なぜか7月1日付の新聞が使われているんです。

そう、まだ暑さが盛りの夏の一日。今日の最高気温は華氏86度(摂氏30度)などと書いてあります。

そんな新聞紙を眺めていると、ちょっとしたタイムカプセルを開けてみたような気分になったのでした。

7月1日というと、4日の独立記念日を控えウキウキとした輝く季節ではありますが、どうやらその頃は、ちょっと前に亡くなったマイケル・ジャクソンさんの死因について、いろいろと取り沙汰されていたようですね。
 栄養士の人が、ジャクソンさんに鎮静剤の使用について忠告していたという記事が載っています。

それから、こんな政治の出来事も報道されています。ミネソタ州で行われた連邦上院議員戦では、8ヶ月のすったもんだの末、ようやく決着がついたと。

以前、「サタデーナイト・ライヴ(Saturday Night Live)」という深夜コメディー番組に出演していた、元コメディアンのアル・フランケン氏(民主党)が、票の数え直しの結果、わずか312票の僅差で、共和党の現職候補ノーム・コールマン氏を破ったことが確定したのです。

どうしてこれがカリフォルニアでも大きく報道されていたかというと、これは単にミネソタ州だけの問題ではなくて、世の中の大きな関心事だったのですね。
 なぜなら、この一議席が民主党(オバマ大統領の所属党)に傾くと、連邦上院(U. S. Senate)の100議席のうち、60議席が民主党と民主党系の無所属で占められることになるからなのです。

もし上院で60議席を獲得するとなると、法案を通すときには、対立する党の議事妨害(filibuster)などのさまざまな障害を乗り越え、絶対的な強みを持つことになる。60人が一丸となって投票すれば、自分たちの提出した法案も、難なく可決することになるのです。

ですから、最後の一議席であるミネソタ州を民主党が死守するのか、それとも共和党が一矢(いっし)を報いるのかと、アメリカ中が固唾を呑んで見守っていたのですね。
 そして、フランケン氏の議席は、民主党とお仲間にとって、めでたく60議席目となったというわけなのです。

オバマ大統領は、まだまだ人気は高いものの、内政的にはかなりの窮地に立たされているといってもいいでしょう。なかなか回復しない景気と失業率。そして、とくに医療保険制度の改革案は、多くの国民や共和党議員から激しい反対にあって、ほんの一議席の助けでも欲しいというのが苦しい実情なのですね。

ですから、フランケン上院議員の誕生は、民主党にとっては、とりあえずは喜ぶべきことだったというわけなのです。
(実際の法案通過には、上院だけではなくて、下院の審議も必要ですので、医療改革案の可決は決して単純な話ではありません。現時点では、下院では可決したものの、上院では民主党派60人の中に亀裂が生まれ、審議開始に遅れが出るという思わぬ展開になっています。)


さて、7月のロスアンジェルス界隈の新聞を見つけて、思わずタイムカプセル気分になってしまったわけですが、先日、こんなおもしろい話も耳にいたしました。

我が家を担当するデザイナーは、以前ニューヨークに住んでいたのですが、結婚して初めて住んだ家に、こんな「仕掛け」をしたんだそうです。

リビングルームの壁の中に、自分と夫の写真と、そのとき使っていた携帯電話を埋め込んだのだと。

その携帯電話というのは、ちょうどこんなものでして、アメリカで一番大きな携帯電話メーカーのモトローラ(Motorola)が、1989年に初めて出したものなのです。てのひらに収まるサイズだし、話をする部分(マウスピース)がパカッと開くおしゃれなデザインだし、当時としては画期的な携帯電話だったんですよ。

写真は「MicroTAC Lite」というシリーズで、最初に出たのは1991年のようですが、こちらの写真の機種は昔式のアナログではなくデジタル通信(!)なので、実際に市場に出てきたのは、1994年頃のようです。

我が家でも、1996年か1997年までは、これを使っていましたよ。充電器はバカでかくて、机の上にドカッと置くタイプでしたけれども、その頃、携帯電話なんて持っている人も少なかったので、ちょっとした「エリート気分」でしたよね。

我が家のデザイナーがどのモデルを使っていたかは定かではありませんが、少なくとも、1996年頃の話だと言っていたので、きっと写真のような機種だったのではないかと思います。

彼女にとっては初めて手にした携帯電話でしたので、記念に壁の中に埋めておいて、あとで誰かが発見してくれるのを密かに願っていたようです。ちょっと自慢もあったのでしょうけれど、「え~、昔はこんなのを使ってたんだ!」と、驚いても欲しかった。

それと同時に、この家にはこんなカップルが住んでいたんだよと、写真の置き手紙もしておいたのでした。

名前も書かれていないので、写真だけでは身元はわからないし、今はどこの州に住んでいるのかさえわからないし、後世の人が、彼らが何者であったかを知るすべはありません。
 それでも、家をリフォームしようと壁を壊したら、過去のメッセージが出てきたなんて、ちょっとロマンティックではありませんか?

アメリカの古い家って、結構そんな実話があるんですよ。意識的に何かを残したかどうかは別として、屋根裏や壁の中や隠し扉の中には、過去のメッセージがいっぱい詰まっていることがあるみたいです。
 何代も使っていた家具の裏から、先祖が使っていた櫛(くし)が出てきたとか、屋根裏でホコリをかぶっていた保管箱から、最初に家を建てた人の日記が出てきたとか、タイムカプセルに出会う機会は案外たくさんあるようです。

デザイナーの携帯電話の話を聞いたのは、我が家のバスルームが出来上がった後だったので、「もうちょっと早く聞いていれば良かった!」と、少々残念に思ったのでした。

次回、壁を壊すときには、いったい何を埋めようかなと、思いを巡らしてみたのでした。

政治のこぼれ話: タイムカプセルからは話が少々ずれてしまいますが、上院の100議席という話題が出てきたので、ちょっと議員数のご説明をしておきましょうか。
 連邦上院議員は、全米50州(首都ワシントンD.C.を除く)から2人ずつ選出するので、全部で100人になるというわけです。上院議員の任期は6年ですが、2年ごとに3分の1ずつ入れ替えていくというシステムになっていて、偶数年に入れ替え選挙が行われます。
 ちなみに、連邦下院の定員は435人で、任期は2年です。議席数は、州の人口に応じて割り振られていて、偶数年に選挙が行われます。

上記のミネソタ州のケースでは、上院2議席のうち1議席が昨年11月の選挙の日(オバマ大統領が選ばれた日)に入れ替え投票となったわけですが、カリフォルニア州の場合は、来年(2010年)11月に1議席が入れ替え選挙となります。
 カリフォルニアは、現在、2議席ともベテラン女性議員(民主党所属)となっていますが、来年は現職バーバラ・ボクサー議員の共和党の対抗馬として、HP(ヒューレットパッカード)の元最高経営責任者カーリー・フィオリナ氏も名乗りを上げています。
 彼女は、シリコンバレーで大企業を経営した手腕を強調していくようではありますが、彼女の在任中、業績はあまりかんばしくなかったので、個人的には必ずしも「強み」にはならないのではないかと踏んでいます。

ところで、来年の11月には、カリフォルニア州知事選挙も行われますが、現職のシュウォルツェネッガー知事(共和党)は任期切れ(2期まで)で立候補できないので、その跡継ぎとして、やはりシリコンバレーの元経営者メグ・ホイットマン氏が名乗りを上げています。
 彼女は、日本からは撤退したオークションサイト、イーベイ(eBay)の最高経営責任者ではありましたが、彼女の場合も在任中あまりかんばしい業績ではなかったので、その経営手腕が吉と出るか凶と出るかは定かではありません。

それに、フィオリナ氏もホイットマン氏も、シリコンバレーでは知られていても、南カリフォルニアでは無名に近いのかもしれませんね。


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