ピンク色の東京タワー
ご存じのように、10月は「乳がん月間」なので、東京タワーもピンク色になって、みんなにそのことを知らせているのです。
この日、東京では、盛大な「ピンクリボン・スマイルウォーク」が開かれました。ピンク色のリボンや服を身につけて、街中を行進するのです。
このピンクリボンウォークは、港区赤坂にある東京ミッドタウンを出発して港区周辺をめぐりましたが、みんなでピンク色の行進をすることで、乳がん検診の大切さを広く知らしめようとしているのです。
わたしは、ホテルの窓から見学させていただきましたが、どこまでも、どこまでも続く長~い行列にすっかり驚いてしまいました。きっと何千人という女性が参加していたのではないでしょうか。
とりたててシュプレヒコールを上げるでもなく、列は整然と進んで行くのですが、これだけの参加者がいると、「おや、何だろう?」と、道行く人々の注目を集めたことでしょう。
ひとりひとりの歩みは小さいけれど、みんなで歩くことで、何千倍の規模になる。そして、個々が抱いた思いもそれだけ大きくなる。そんな効果があるのが、ピンクリボンウォークなのです。
このようなピンクリボンウォークは、もともとアメリカで生まれました。毎年、アメリカ各地で行われる「エイヴォンウォーク(Avon Walk)」は、もっとも有名なものでしょうか。
サンフランシスコでは、毎年7月上旬にエイヴォンウォークが開かれますが、独立記念日近くの暑い天候もなんのその、何千人もの女性たちが互いに助け合いながら、土日2日間で何十キロという距離を歩くのです。
病み上がりの参加者だって、歩ける所まで歩けばいい(あとは並走した送迎車に乗ればいい)というルールなので、「病気と闘って、克服した!」という熱い思いを抱いて参加することにこそ、大きな意義があるのです。
ピンクリボンウォークだけではなくて、10月の「乳がん啓発月間(breast cancer awareness month)」も、アメリカから世界に発信されたものなのでしょう。
そんなアメリカでは、女性の乳がん検診は、かなり広く行われています。
わたしが日本から戻って来た10月初め、病院から電話がかかったので「何かな?」と思っていると、「乳がん検診の時期がめぐってきましたよ」というのです。
婦人科主治医のアシスタントが電話してきたのですが、「あなたが最後にマンモグラフィを受けたのは2年前ですよ。次の予約はいつがいいですか?」と、有無をも言わせず、半強制的にマンモグラフィ検診(mammogram)の予約を取らされたのでした。
乳がん検診には、自分で行う触診(breast self-exam)、専門家が行う触診(clinical breast exam)、そしてマンモグラフィ(乳房のX線撮影)がありますが、やはり一番確実なのがマンモグラフィなのでしょうね。
ただ、あまり愉快な検診ではありませんし、頻繁にX線撮影を受けるのは体に良くないという欠点もありますので、わたしなどは、数ヶ月前に「もうすぐマンモグラフィを受けてください」というお手紙を病院から受け取っても、すっかりと無視していたのでした。
それに、何年か前、マンモグラフィの再検査を受けたことがあるのです。「もう一度検査が必要です」という通達を受け取ってから、二回目の検査を受けて「何でもありません」という結果を受け取るまでの一ヶ月、とっても恐い思いをして過ごした記憶が鮮明に残っています。
けれども、電話をもらって予約を取らされたら、もう逃げるわけにはいきません。何も自覚症状はありませんが、昨日、ちゃんと病院に行ってX線検診を受けてきましたよ。
まあ、若いうちには、マンモグラフィは必須ではないのでしょうが、がんという病気は、年齢が上がるごとに、かかる可能性が増えていく病気です。ですから、主治医から「検診をしてください」と言われれば、それは無視してはいけないのです(と、自分にも警告を発しているところです)。
それに、乳がんは、早期発見が大事なんです。なぜって、マンモグラフィなどの検診で早期発見は可能だし、ひとたび発見されれば、手術や放射線療法、化学療法などで治る確率が高い病気だから。
がんの種類によっては、早期発見はほぼ無理なものもありますから、それに比べると、手遅れにならずに発見できるというのは、ある意味、ありがたいことなのです。
ですから、「乳がん月間」というものがあって、乳がんのことを考えましょう、という時期がわざわざ設定されているのですね。
(上の写真は、昨日の検診でいただいた、かわいらしい「ケア日記(Breast Care Diary)」としおり風のネイルファイル。女性らしく、爪のお手入れを念頭においたネイルファイルには、「The best protection is early detection(最良の守りは、早期発見)」と書いてあります。)
10月10日の日曜日、アメリカ全土で行われたプロフットボールの試合では、選手たちも「乳がん月間」に一役買いました。
みんなでピンク色の靴やタオル、サポーターといったグッズを身につけて、試合に望んだのです。審判だって、ピンクリボンなど何かしらピンク色をまとっていましたよ。
まあ、あんなにごっつい男性たちがピンク色をつけているのはちょっと滑稽ではありましたが、みなさん、それなりに真剣な面持ちではありました。アメリカは乳がんの発症率が高いので、身内に誰かしら経験者のいる選手も多いことでしょう。
そして、ハーフタイムの休憩時間には、フィールドに乳がんを克服した女性たちが繰り出し、スタンドの拍手喝采を受けていました。
フィールドのひとりひとりは小さいけれど、みんなで集まれば、ピンク色の嵐を引き起こせるのです。なぜなら、彼女たちは自分ひとりで闘ったわけではなくて、まわりには、彼女たちを懸命に支えてくれた人たちの輪があるから。