今日は猫の日
今朝、そう思ってしまったのでした。
お隣の家を通り抜け、我が家の裏庭へと静かに歩いて来た猫。まだまだ若い猫ちゃんのようで、結構スリム。薄い茶色に白のまだらが、とても上品です。
我が家には、いろんな猫が訪ねて来るのですが、この猫ちゃんは新顔。きっと、最近この辺りに引っ越して来た家族のメンバーなんでしょう。
普段、猫ちゃんを見かけると、キッチンの窓を開け、追い払うんです。いえ、猫が嫌いというわけではなくって、せっかく庭に集まった野生の小鳥が逃げてしまうからなんです。
数えてみたことはありませんが、我が家のまわりには、それこそ何十種という鳥がいて、我が裏庭は、そういった鳥たちの休み場所になったりするのです。
こちらは、以前「春の動物たち」でご紹介した、カリフォルニア州の鳥「カリフォルニア・クウェール(うずら)」。
春になって巣作りを始め、6月初旬、あちらこちらで雛(ひな)がかえったときのものです。
餌を探して、お母さんと一緒に、数羽の雛が一列に行進中。
そんな鳥たちを狙って、ときどき猫ちゃんが訪れるのですね。
あちらも、野生の本能を忘れてはいません。じ~っと小鳥を狙っているのが、遠くからでも見て取れます。
でも、今日の猫ちゃんは、いつもの訪問者とは違います。窓を開けても、まったく動じません。
「あら、そこにいたの」とばかりに、ちらっとこちらに視線を向け、涼しい顔でゆっくりと庭を横切ります。
小鳥がパッと近くの木に逃げ込んだので、きっとこれが猫ちゃんの目当てだったのでしょう。
小鳥がいなくなって、今度は、地べたを覗き込みます。何か虫でも這っているのでしょうか。
そのうち、腹ばいになって、何かを一生懸命に見つめてる。
「これ、食べられるかなぁ?」とでも、思案しているのでしょうか。
我が家の虫といえば、たいていアリかカタツムリ。忙しく動き回る、アリさんの行進でも観察しているのでしょうか。
そんな観察に夢中の猫ちゃん、時折、空を見上げます。
「今日は、なんだか曇っているなぁ」とでも言いたそうな顔。
そう、今日は、立秋。二十四節気のひとつで、夏が過ぎ、秋の気配を感じ始める頃とされていますね。
そういう「立秋」にふさわしく、近頃サンフランシスコ・ベイエリアは涼しいです。
朝のうちは海岸線に厚い霧がかかり、サンノゼのような内陸部でも、その切れ端が完全に晴れるまでに、かなり時間がかかります。午後近くになって、ようやく太陽が顔を覗かせるような感じ。
午前中、窓を開けていると、ひんやりとしたそよ風に、くしゃみをするくらい。
今週だけではありません。去年と打って変わって、今年この辺りは涼しいみたいです。7月中、例年の平均気温を上回ったのは、独立記念日の7月4日と、その翌日の2日間だけだったとか。
そんな不規則な気候に、植物はとっても敏感。庭の百日紅(さるすべり)も、今年はずいぶんと開花が遅れています。
一方、所変わって、中西部(Midwest)や南部(South)、東海岸(East Coast)は、今週、猛暑で大変だそうです。プールの営業時間を延ばしたり、高校のフットボールの練習は、急遽、屋内に移ったり。
四六時中活躍するエアコンや扇風機のおかげで、電力会社もさあ大変。もしかしたら、助っ人として、カリフォルニア辺りからも、電力を送っているのかもしれませんね。
そうそう、庭の猫ちゃんは、どうしたのでしょう。まるで、我が家の一員みたいな顔をしていた猫ちゃんは。
じっと不動の構えを見せていたのに、そのうち、座るのに飽きて、モゾモゾ動き始めます。
そして、気が付くと、いつの間にか、そっと退散していたのでした。
ちょっと残念だなと思いつつ、ふとキッチンの床に置かれた箱に目を移すと、なんと、ここにも猫ちゃんが!
あまり見かけない模様と思いきや、ワイン屋さんがリサイクルしてくれた、フランスの食前酒の箱。
うん、今日はきっと、猫ちゃんの日なんだ!
追記:猫ちゃんの好きな方は、たくさんいらっしゃると思うので、「猫を飼う」という表現は極力避けてみました。猫好きの方にとっては、猫ちゃんも立派な家族の一員ですからね。
他の州よりも何でも「先進的」とされるカリフォルニアでは、「ペットの飼い主(pet owner)」という表現を嫌う人もたくさんいるようです。
サンフランシスコでは、公の場では「飼い主(owner)」という表現を禁止し、「仲間(companion)」といった表現を使う条例ができたとも耳にします。たしかに、友達と思っている相手に対し、「飼っている」という表現は使いたくないですものね。
日本では、ペットに向かって「ママのところにおいで~」と話しかけたりしますが、それは、アメリカでもまったく一緒です。“Come to Mommy!”とは、4本足の家族に向かって、当たり前の表現となっているのです。