夏の花たち
夏の長いシリコンバレーではありますが、さすがに秋の気配も感じられるようになりました。
朝のうち空に雲がかかり始め、夕方の風が冷たくなってくると、夏ももうおしまい。本格的な秋がやって来るのです。
真夏はいつも、こんな暑さってもういや!なんて思うくせに、秋風が立ち始めると、こう叫びたくなるのです。「夏よ、まだ行かないで」って。
夏の初めの6月に、こんなものを書きました。
『夏の花、ハイビスカス』
ハイビスカスの花が咲いたよ
半年前に植えたばかりの
ひ弱な子だったのに
大きな花が
昨日もひとつ、今日もひとつ
ピンクを散らした白い花びら
風に乗る軽やかなドレス
やっぱりハイビスカスは夏の花
一日じゅう
お日様を追いかける
お母さんを追う子供みたいに
昨年12月に植えたハイビスカスが、ずっと気にかかっていたのです。真冬に植えたから、ちゃんと育つかなと。
カリフォルニアとはいえ、冬は零度近くに気温が下がることもあります。そんな真冬に苗を植えるなんて、ちょっと酷だったかなって。
おまけに、今年の初めはいつまでも雨が続き、長い、長い雨季となりました。
お陰で、植物にとっては天敵のカタツムリ君が大発生。ずいぶん葉っぱを食いちぎられました。
だから、6月中旬に初めて花を咲かせとき、嬉しくなって、たくさん記念写真を撮りました。いじめられても、ちゃんと元気に育ったねって。
ひとたび、花を咲かせると、そこは丈夫な夏の花。毎日、大型の花を次々と咲かせ、葉っぱもどんどん芽吹きます。
カタツムリに食われた葉っぱも、すっかり代替わり。ピンクっぽい白い花は、隣の真っ赤なハイビスカスと競い合っているようです。
ハイビスカスと一緒に咲き始めたのは、前庭のガーディニア(和名クチナシ)。真っ白で、芳(かぐわ)しい夏の花です。
ジャズシンガーのビリー・ホリデーのお気に入りだった花。彼女はいつも、この花を耳に挿して舞台に立っていたとか。
マウイ島の小さな植物園で見つけたとき、こんなに匂いのいい花があったのかと、驚きました。そこで、10年前、我が家の裏庭に植えてみたのでした。ところが、南向きの庭にはまったく馴染まない。焦げ付くようなカリフォルニアの太陽は、ガーディニアには強過ぎるのです。
そこで、北向きの前庭に、新しく苗を植えてみました。すると、ものの見事に根付き、次から次へと真っ白な花を開きます。
ハイビスカス、ガーディニア、それから、夾竹桃(きょうちくとう)、百日紅(さるすべり)、紫君子蘭(アガパンサス)と、我が家の夏の花たちは、あでやかな競演で毎日を楽しませてくれました。
けれども、もうそろそろ選手交代。今は、季節はずれのツツジやバラが庭を彩っています。
そして、花から空へ目を移すと、雲にも秋の気配。
入道雲なんて、もうどこにもありません。
遠くに列車の行く音が聞こえます。風が澄み切ってきたのでしょうか。