Life in California
ライフ in カリフォルニア/日常生活
Life in California ライフ in カリフォルニア
2007年06月07日

特権階級のステッカー

この「ライフ in カリフォルニア」のコーナーでは、前回、空が白っぽいよというお話をいたしました。

この季節、海から霧が出やすく、内陸部を覆い隠すのだと。

でも、この空の白っぽさは、霧ばかりではないんじゃないでしょうか。なにせシリコンバレーは谷間ですから、盆地の底に汚れた空気がたまりやすいのですね。

たとえば、こちらの写真。

なんだか、モヤモヤしていて、すぐそばの家しか見えませんよね。

本来なら、これくらいスッキリ見えていないとおかしいのです。

(電線の先に見えているのは、サンノゼのダウンタウン。こうやって見ると、サンノゼもちょっと都会!)


一年ほど前、「空気を守る日」と題して、サンフランシスコ・ベイエリアの取り組みをご紹介いたしました。

夏に向けて大気の状態が悪くなってくると、注意報を出して、みんなに協力を求めるのです。車の運転を控え、公共の交通機関を利用してちょうだいと。

その「空気を守る日(Spare the Air Day)」の適用期間も、さっそく、6月の第一週から始まったそうです。

昨年は、キャンペーン促進のため、期間中に6日間だけ、ベイエリア中の交通機関がタダになりました。最初の3日間は、州の予算から。あとの3日は、追加として、国から特別にお金を出してもらいました。

今年は、州の予算を一日分増やして、4日間とするそうです。

まあ、昨年のように終日タダではなく、午後1時までだそうですが、それでも、行きのバスや電車にタダで乗れるのは、ありがたいことです。
 それだったら、車を家に置いて、電車で通勤してあげようか、という気にもなりますよね。

こんな風に、行政の側がしっかりと態度で示すのは、大事なことなのかもしれませんね。


アメリカでは長らく、「地球温暖化は科学者の妄想だ」という考えが幅を利かせていました。どんなに科学者が力説しても、ブッシュ大統領を始めとして、保守的な政治家が耳を貸さなかったのです。

バカな話、保守的な政治家たちは、ある小説家の「地球温暖化説は、政治的陰謀ともなりうる」というフィクションを、バイブルのようにあがめていたのです。実際、議会でも、この小説が証拠品として取り上げられたくらい(映画 『ジュラシック・パーク』 の原作者、マイケル・クライトンの 『恐怖の存在(Sate of Fear)』 という小説です)。

ま、科学者の苦言に耳を貸すと、都合が悪くなることもたくさんありますからね。

けれども、その後、映画 『不都合な真実(An Inconvenient Truth)』 の生みの親ともいえる、アル・ゴア元副大統領なんかの努力の甲斐あって、ようやく、人間の活動が、地球の状態を変えているのだと、多くの人が気付き始めたようです。

今となっては、“global warming (地球温暖化)”という言葉は、ちょっとした流行語にもなっています。

ま、もともと科学的な人が多いシリコンバレーでは、環境保護に熱心な人も多いものですから、ソーラーパネルだとか、ハイブリッド車なんかは、全米でも一番売れていた方なんですね。この辺の人が、新しいテクノロジー大好きってこともあるでしょうか。

ところが、ここに来て、地球温暖化が世の常識となってくると、街中では、もっともっとたくさんのハイブリッド車を見かけるようになりました。

折しも、ガソリン価格も、夏に向かって急に吊り上げられる時期です。タイミングとしては絶好なのですね。


たとえば、こちらの車。これは、ハイブリッドとしては一番売れ筋の、トヨタのプリウスです。今となっては、シリコンバレーではベストセラー車となっているのです。

でも、なにやら、車体に文字が書いてありますね。

VTA OUTREACH Paratransit」。

これは、シリコンバレーのサンタクララ郡で営業する、VTA と呼ばれる公共の交通機関が運営するプログラムなのです。

Outreach (手を伸ばす)」という名前で、普段、外に出難い人たちの所にまでも出向いてあげるよ、という送迎サービスなのです。体が不自由な人や高齢者を対象に、安い値段で、送り迎えをしてくれるのです。
 病院とか、デイケアセンターとか、定期的に通う場所って、誰にでもありますよね。そこに通う足がないと、困ってしまいますもの。いつも家族に頼るわけにもいかないですしね。

このサービスは、サンタクララバレー中を網羅しているので、たくさんの車が必要です。だから、燃料代もバカになりません。そこで、燃費の悪い大型車から、こちらのプリウスに切り替え中なのです。環境にもやさしいですし、まさに一石二鳥です。

今はもう、街中で見かける Outreach の車は、ほとんどプリウスになってしまいました。

ただし、こういった車は、例外ですね。

車椅子を利用する人たちを、エレベーター式に乗せたり、降ろしたりするタイプの大型車。

残念ですが、こればっかりは、プリウスには難しいです。


ところで、以前、こんなこともご紹介いたしました。

カリフォルニアのハイウェイには、「ダイヤモンドレーン」なる名前の、特別な車線があって、朝夕の通勤時間帯は、ふたりとか3人以上乗っていないと、運転できなくなると。

でも、プリウスや、ホンダのシビック・ハイブリッドみたいな車には、特別な待遇があるのだと。
 州が認めたハイブリッド車だったら、このダイヤモンドレーンをひとりで走ってもいいという優遇措置が。

この場合、ドライバーは、特権を持っていることを証明するため、こんな風な黄色いステッカーを州の運輸局から発行してもらうことになっているのです。が、近頃、恐れていた事態が起き始めているのです。

そう、黄色いステッカーの盗難事件が起きているのです。

事の発端は、今年1月。ステッカーの応募者が、発行数8万5千人分を越えたときでした。もう応募資格人数を超えているので、条例を改正しない限り、新しいステッカーは発行されません(もともとは7万5千人分だった上限を、一度増やしているので、再度改定するのは難しいかもしれませんね)。

ということは、需要と供給の関係で、ステッカーの価値はどんどん上がる。だって、これがあると、フリーウェイのノロノロ運転を尻目に、スイスイと気持ちよく運転できるのですから。


そんなこんなで、「ダイヤモンドレーンの違反ですよ」と警官に止められるまで、自分のステッカーが盗まれているなんて、まったく気付いていないドライバーがちらほら現れているのです。

いや、このステッカーには、特殊加工がしてあるんですよ。盗まれないようにと、無理にはがした場合、黄色い表面部分がシワシワに縮むんだそうです。

それでも、オークションサイトなんかでは、高い値で売りに出されるステッカーが後を絶たないのです。どうやってくすねたのかは、不明ですけれど。

そういえば、こんなのを見たことがありますよ。表面の黄色いシールがなくなって、土台のグレー部分だけが残っているステッカーを。きっと誰かが盗もうとしたんでしょうね。

わたしは、最初にステッカー制度を耳にしたとき、自分だったら、大事な新車にステッカーなんか貼らないぞと思ったんです。きっと、マグネット式にして、取り外し可能にするだろうって。

でも、そんなのは、とんでもないですね。すぐに盗まれる・・・

わたしが甘かったんですね。

追記:実は、この黄色いステッカーは、車に付いたまま転売されるものなのだそうです。ドライバーに与えられたものではなく、お利口さんな車に与えられたという理由で。
 だから、はがす場合のことは、心配しなくていいのですね。

なんでも、ステッカーが付いていると、普通よりも4000ドル(約48万円)くらいは高く売れるという話もあるそうな。

一方、電気自動車と天然ガス自動車は、ステッカーがなくても、ダイヤモンドレーンをひとりで運転できるそうですよ。

それから、タイムリーに、こんな話題もありましたね。トヨタ・プリウスの累計販売台数が、世界で100万台を超えたと。
 日本では、10年前に売り出されたプリウス。北米とヨーロッパでは7年前に登場していますが、今では、アメリカ市場で売れるハイブリッド車の4割強がプリウスだそうです。
 プリウス強し!


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