緑の雨季にさようなら
何度もご紹介しておりますが、シリコンバレーのある北カリフォルニアは、ざっくり言って、季節がふたつに分かれるのです。
そう、雨の冬と、どこまでも乾燥する夏。
だいたい10月、11月に降り始めた雨は、4月、5月くらいまで続きます。その間は、日本の梅雨みたいにずうっと雨というわけではありませんが、木をなぎ倒すような暴風雨が来ることもありますし、雨が降らなかったにしても、どんよりと曇って肌寒い日々が続きます。
けれども、そんな雨季でも、心うきうきとすることがあります。それは、緑。
12月、1月と冷たい日々が続いたあと、さすがに2月になると、ほんの少し気温が上がってきます。すると、辺りの丘は、燃えるような緑色に変身するのです。
わたしは、いつも2月になると、「生きていて良かったな」と、知らず知らずに自分に語りかけているのです。なんだか大袈裟な言い草ですが、それほど草や木々の生命力を一気に感ずる季節なのです。
ある地元コラムニストは、この命を感ずる季節こそ「アメリカ西部の醍醐味である」とも書いていました。
なるほど、この2月が見たくて、うっとうしい雨季の間もじっと我慢しているのかもしれません。
3月になると、シリコンバレーの「サンタクララの谷(the Santa Clara Valley)」にも、華やかな花の季節がやって来ます。桃や桜、プルーン(セイヨウスモモ)と、次から次へと木々がピンクや白に色づき始めます。
待ってましたとばかりに一気に花が咲くので、アレルギーを持つ人にとっては、あんまり嬉しくないシーズンではあります。でも、この時期にシリコンバレーを訪れる方には、「花があって、きれいな季節だな」と思っていただけることでしょう。
花は、果実のみなもと。果実園で栄えた歴史を持つサンタクララバレーが「喜びの谷(the Valley of Heart’s Delight)」と呼ばれるようになったゆえんでもあります。
花の3月になると、我が家の庭にもスミレやマーガレットが咲き始め、辺りを鮮やかな紫色に染めてくれます。
今年は雨が多かったせいで、ジャスミンも早めに花を開かせました。いつもは6月にならないと咲かないのですけれど、おかげで、我が家の裏庭もいち早くジャスミンの濃厚な香りに満ち満ちたのでした。
今シーズンは、いつもよりも雨が長引いた年ではありましたが、そんな湿った季節もそろそろ終わりとなりました。
すると、長くてカランカランの乾期の到来です。目にするものすべてが乾く、日差しの強い、暑い季節。
丘の緑は、もうすっかりと黄金色に変わってしまいましたが、そんな風景を眺めていると、「緑の雨季にさようなら」とつぶやいてみたくなったのでした。