韓国の風景 ~ 生活編
初めての韓国旅行は、首都ソウルに3泊しただけの短い旅ではありましたが、ソウル市内を観光して一番印象に残ったことは、現地の方々の「パワー」でした。
それは、王朝時代に巨大な宮殿を築き上げたパワーだったり、壊れたら、その復元工事を何年もかけてやり遂げるパワーだったり。それから、伝統文化を守ろうとか、自分の信ずるものに祈りを捧げようというパワーだったりもするのです。
けれども、一番如実に感じたのは、「商いのパワー」かもしれません。
市内のあちらこちらを歩いてみると、路上に隙間さえあれば、何かしらの屋台が商いをやっているし、屋台を構えないまでも、路上に直接品物を広げる方々もいらっしゃいます。
こういった青空露店の方々は、ソウル近郊からいらっしゃったと見えて、自分で育てた野菜だとか、自宅で作ったよもぎ餅なんかを売っていらっしゃるのですが、こういうのは、さぞかしおいしいのだろうと興味をひかれてしまうのです。
昼時の屋台では、おでんだの、揚げパンだの、韓国風やきとりだのと、おいしそうなものをたくさん見かけました。小さなお好み焼き風のものも見かけたので、あとで調べてみると、「パジョン」という名のお好み焼きだったようです。
それから、お菓子風の小型お好み焼きは、中に黒蜜やシナモンが包み込まれていて、「ホットック」という小型パンケーキなんだそうです。
歩いていると、次から次へとおいしそうなものが登場するのですが、それを街角で試すだけのお腹のゆとりがなかったのが、たいそう残念ではありました。
そして、「商いのパワー」といえば、何といっても、この二つが代表選手でしょう。
そう、南大門市場(ナムデムン・シジャン)と東大門市場(トンデムン・シジャン)ですね。
韓国最古の市ともいわれる南大門市場に行くと、まるで迷路のような路地に数限りなく小さな商店が並んでいますし、「ファッションを探すならここ」といわれる東大門市場では、もはや路上では場所が足りずに、ビルの中にまで小さなお店が浸食しています。
こういう「間口一間(まぐちいっけん)」の小さな個人商店を見ていると、韓国の人々の商いをするパワーってすごいなぁと、何はともあれ、感心してしまうのです。「何でも売ってやれ!」みたいな、商売の意気込みを感じてしまうのですね。
近代的な東大門市場のビルでは、観光客でも普通にのんびりとお買い物ができるのでしょうけれど、南大門市場の狭い路地を歩こうものなら、客引きに腕を取られて、スムーズには歩けません。
この客引きのお兄さんたちは、みなさん日本語でこうおっしゃるのです。
「完璧な偽物あるよ!」と。
この言葉は、ソウル市内ではちょっとした流行語になっているようなのです。たしかに、中国のものと比べて、韓国の偽ブランド品は精巧にできていて、ちょっと見ただけでは区別がつかないともいわれています。けれども、もし税関で見つかったら、没収されるのではありませんか?
そういえば、ソウルの客引きもかなり熱心ではありましたが、トルコの首都イスタンブールにも、客引きのお兄さんたちがいましたね。観光目玉となっている歴史的なグランド・バザールには、巨大ドームの中に5千ほどの個人商店がひしめいていて、世界各国から観光客がたくさん訪れます。
けれども、とくに日本人と見るやいなや、片言の日本語で話しかけてくるのです。
「これどう?」とか「安いよ」とか、中には、「お茶しようよ」というお兄さんもいましたね。(いったいどこで覚えたんでしょうね?)
まあ、それだけ日本人観光客のお財布は、海外でも有名になっているということではありますが、あれだけ「にじり寄られる」のも気持ちのいいものではありませんよね。
それにしても、ソウルには物があふれているものです。
カラフルな商品が床から天井まで積まれていて、「よく倒れてこないなぁ」と妙な感心をしてしまいました。(この国には、地震はないのでしょうか?)
そして、何でも一様に安い! 男性用ポロシャツが200円という値段を見かけましたが、いったいどこからそんな値段が降ってきたんだろう? と不思議でなりませんでした。
「あってないようなもの」。それが、値段。
韓国の商いのパワーを肌で感じてみて、少なくともそれだけは学んだような気がいたしました。