11月の「選挙の日(Election Day)」
今回は、毎年11月最初の火曜日にやってくる「選挙の日(Election Day)」のお話をいたしましょう。
この日は、全米で総選挙(General Election)が開かれる日ですが、今年は11月6日が「選挙の日」でした。
もちろん、今年の目玉は4年に一回めぐってくる大統領選挙(Presidential Election)でしたが、決めるのは大統領ばかりではありません。
国の上院議員(U.S. Senator)や下院議員(U.S. Representative)を決めたりもします。
連邦議会の選挙は、2年に一回(偶数の年)めぐってきますが、大統領選挙のない年には、中間選挙(Midterm Election)などと呼ばれますね。
大統領や国の議員ばかりではなく、総選挙では、州知事(governor)、州上院議員(state senator)、州下院議員(state assembly member)を選んだりもします。
それから、市長(mayor)や市議会議員(city council member)を決めたり、もっとコミュニティーに密着した代表者、たとえば学区(school district)の役員を決めたりする日でもあります。
そう、ある公職の任期(term)が終わりそうになると、現職の人を再選したり(re-elect an incumbent)、次の人を選んだりと、それが「選挙の日」というわけです。
11月の総選挙は、誰かが公職に当選する大きな選挙となりますが、6月には予備選挙(Primary Election)が開かれ、事前に候補者を絞り込んでおきます。
アメリカは二大政党の形式(two-party system)をとっていますので、ひとつの政党からたくさんの候補者が出ないように、予備選挙で各政党から人気の高い人を選んでおくのですね。
というわけで、今年の総選挙は、なんといっても、大統領選挙。
4年に一度めぐってくる、お祭りのような騒ぎです。
ご存じのように、現職のオバマ大統領の再選が決まり、来年1月から二期目に入ることになりました。
大統領の任期は、「最大二期8年」と米国憲法(修正第21条)で定められています。
ですから、2016年末までは、オバマ大統領が国の舵取りをします。
きっと、2016年11月の大統領選挙は、またまた大騒ぎになることでしょう。
(Official portrait of President Obama from Wikipedia)
ちなみに、アメリカは有権者ひとりひとりが大統領候補に票を入れるわりに、最終的には、選挙人が票を投じるという「選挙人団(Electoral College)」の制度を持っていますね。
なんとなく奇妙な制度ではありますが、これは、18世紀末、米国憲法をみんなで決めるときに、大きな州と小さな州が仲たがいしてしまって、これを仲介しようとしてできた苦肉の策なんです。
各州の選挙人(elector)の数は、各々の州に割り当てられた連邦議員(上院議員と下院議員)の数となっていますが、下院議員が州の人口に比例するのに対し、上院議員の方は、各州から公平に2人ずつ出すことになっています。
そういう意味で、必ずしも州の大きさには比例しない、折衷案というわけです。
それで、一部の州を除くと、住民投票で得票数の多い候補者に対して、州の選挙人がまとめてどっと票を投じることになっています。ですから、大統領選というのは、どうしても「州取り合戦」になってしまうのですね。
最終的には、大統領に当選するためには、全米538の選挙人から、270の選挙人票を獲得すればいいということになっています。
(上の写真は、シリコンバレー・サンタクララ郡の投票用紙です。真ん中に写っているのは、大統領候補の欄ですが、大統領・副大統領候補が6組もいたんですね!)
実際に選挙が終わってみると、国民の投票数(popular votes)でも、選挙人の数(electoral votes)でも、オバマ大統領が共和党挑戦者のミット・ロムニー候補を上回る結果となったので、「堂々の勝利」といえるでしょうか。
そうなんです。一部の専門家は、国民の投票数と選挙人の数で、各々の勝者が分かれるのではないかと予想していたくらいなので、もっと接戦になると考えられていたのです。
選挙の日、午後8時になると、東の州から順繰りに投票所が閉められ開票にとりかかるわけですが、この晩、東海岸の午後11時18分(西海岸8時18分)には、メディアがさっさとオバマ大統領の勝利を宣言してしまったのでした。
そう、オバマ支持者にしても、ロムニー支持者にしても、徹夜だって覚悟していたので、実にあっけない結末。
けれども、どうしてもあきらめきれないロムニー陣営は、オバマ大統領が獲得した激戦州オハイオについて、「まだわからない!」とねばり続けました。
その結果、自分の負けを認め、敗戦スピーチ(concession speech)をしたのは、「オバマ当確」から2時間近くたった、午前1時(東海岸時間)。
そう、負けた側が相手を祝福して初めて、勝利者が支持者に感謝し、国民に向かって「一緒にがんばっていこう!」と勝利宣言ができるのです。
オバマ大統領が勝利スピーチ(victory speech)をしたのは、ロムニー候補のスピーチの30分後。
終わった頃には、東海岸は午前2時をまわっていました。
それでも、マンハッタンの広場などには、オバマ大統領の支持者がたくさん集まり、熱心にスピーチに耳を傾けていましたよ。
寒空のもと、大変だったとは思いますが、やっぱり、熱く燃える若者が多かったみたいですね(そう、オバマ大統領は、若い層に大人気!)。
(Photo of President’s family by Win McNamee / Getty Images; photo of Mr. Romney by Don Emmert / Agence France-Presse via Getty Images; photo of President’s victory speech from ABC broadcast)
というわけで、大統領選挙は国の大騒ぎではあるのですが、カリフォルニアでは、あんまり話題にならないんです。
なぜって、最初からカリフォルニアでは、オバマ大統領みたいな民主党候補(Democratic Presidential Nominee)が勝つと決まっているから。
ですから、大統領候補者のテレビコマーシャルだって、目にすることはほとんどありません。何回かオバマ大統領のコマーシャルを観ましたが、それだって、お金の無駄だったかもしれませんね。
そうそう、この晩、ニュース専門局 CNNの開票速報を観ていると、おかしなことが起きました。
カリフォルニアなど西海岸が午後8時になると、その瞬間に「カリフォルニア州とワシントン州とハワイ州はオバマ大統領が獲得!」と宣言したのです。
いえ、まだ一票も数えていないのに、ですよ!
そして、そのわずか18分後には、「オバマ大統領の再選確実!」と報じたのでした。
そう、カリフォルニアは、リベラルな州。そして、大票田。アメリカで一番大きな州ですので、選挙人を55も持っています。
ですから、カリフォルニアみたいな大きな州を獲得できれば、大統領の座がぐんと近づくのですね。
今回は、オバマ大統領が順調に各州を獲得してきたので、カリフォルニアが午後8時になったとたんに、「当確」が色濃くなったというわけでした。
きっと、アメリカ自身よりも、世界がもっと喜んでいることでしょう。
追記:最後の写真は「どうしてここに?」と思われた方も多いでしょうが、胸にくっついている「I Voted」というシールがミソなのです。
投票所に来た人には、このシールが配られ、「ちゃんと投票したぞ!」とアピールできるようになっています。
ちなみに、アメリカでは、市民権(citizenship)を持たないと投票はできませんが、それだけではなくて、自分で有権者登録(voter registration)をしなければ、投票の権利が与えられません。
日本のように「住民登録(resident registration)」という制度がないので、自動的には選挙案内が来ないのです。
それから、蛇足ではありますが、上に出てきた選挙人団の538という数は、このように決められています。
文中にもあったように、50州から選出される上院議員数100と、下院議員数435を足して、これに、首都ワシントンD.C.に割り当てられた3を加えたものとなります(100 + 435 + 3 = 538)。
そう、首都(the District of Columbia または Washington, D.C.)は州ではありませんので、連邦議会に議員を選出することはできません(ちゃんと住民は住んでいるのですが)。ですから、特別に大統領選挙人として3票が割り当てられているのですね。