直訳すると、鼻のお仕事!?
お鼻がトコトコと出かけていって、何かお仕事?
いえ、何のことはない、a nose jobとは、お鼻の整形手術のことなんです。
医学的には、rhinoplastyと申しまして、美容の目的か、または、治療のために必要な鼻の手術のことなのですね。
ギリシャ語源で、「鼻(Rhinos)」と「形作る(Plastikos)」から来ている言葉だそうです。
なんで突然「鼻のお仕事」かというと、元ブラッド・ピット夫人の女優ジェニファー・アニストンさんが、鼻の手術を受けたのです。これが、果たして美容整形なのか、そうじゃないのかと、話題になっていたのです。
彼女曰く、「鼻の中の膜を治す手術をしただけだわ」だそうで、別に鼻を作りなおしたわけではないと。
「今までわたしがやったことの中で、一番良かったわ(Best thing I ever did)」との仰せです。(えっ、ブラッド・ピットとの結婚よりも?)
まあ、「もしかして美容整形?」という噂が立つくらい、彼女のお鼻は、女優さんにしては、ちょっと丸っこいかもしれませんね。
ちなみに、rhinoplastyは、紀元前500年には、既に行われていたそうです。
古代インドの高名なお医者さんが、刑罰として鼻を削られた人の手術をしてあげたのが最初だそうな。
以前、「Paper or Plastic ? 」という英語のお話の中で、プラスティックには、いろんな意味があるのだとご説明いたしました。
その中に、こういうのが出てきました。
Plastic surgery。 「プラスティックな手術」というと、美容整形なんかの形成手術のことですね。「プラスティック」という言葉には、「思いどおりに形作る」というような意味があるのですね。似たような言葉で、plasticity というと、何にでも適応できる柔軟性のこと。
勿論、形成手術の中には、病気や事故で、体の修復が必要なものもありますよね。そういうときは、reconstructive plastic surgery とも呼ばれています。
Reconstructive、つまり「元どおりに治す」形成手術。
上記の古代インドのケースは、立派な修復手術ですよね。それから、乳がんの切除手術のあと、乳房にシリコンを入れたりするのも、修復手術の代表例ですね。体だけではなく、心の修復もあるのかもしれません。
一方、女優さんがする形成手術というと、当然のことながら、だいたいが美容目的ですよね。
こういう場合だと、cosmetic plastic surgery とも言います。
Cosmetic、つまり「美容の」形成手術。
だって、美しくなりたいんですもの!
(写真は、病院に新しく美容サービス部門ができたよ、という宣伝ハガキ。Enhance the way you look! とは、あなたの見かけをよくしましょう!という、心をくすぐられるようなうたい文句ですね。)
映画の街ハリウッド。実は、この街は、人口に対する美容整形外科医の数が、アメリカで一番多いのです。それほど、需要があるんですね。
ハリウッドの別名って知っていますか?
その名も、Tinseltown (ティンセルタウン)。
Tinsel とは、ぴかぴか光る糸や金属片のことで、転じて、「安ぴかの物」。
つまり、きらびやかだけど、安ぴかの、うわべだけの街というのが語源なんでしょうね。
この街で生きていきたいなら、人を踏みつけても、のし上がりなさい。これがモットーなのだそうです。
追記:表題のNose jobとはちょっとずれてしまいますが、近頃、ヨーロッパやアメリカでは、ファッションモデルの「痩せ過ぎ(too thin、too skinny)」が問題になっていますね。
痩せたいがために、食べ物を無理に拒絶したりと、健康の問題が心配されています。だから、マドリードやミラノでは、ファッションショーで痩せ過ぎのモデルを使ってはいけない、という禁止令まで出されましたよね。
近年、ファッション業界では、問題がどんどんエスカレートしていて、「痩せ」を保てる年齢の13歳や14歳のモデルが好まれているそうです。
そういう若年のモデルを指して、ある業界評論家がこう言っていました。
They have a vacant look (彼女たちは、うつろな表情をしている)
経験から来る、モデルとしての豊かな表情が欠けているという意味なのですね。
それから、ファッションとはまったく関係のない世界で、こうおっしゃっている方がいます。
女性は、姥桜(うばざくら)になりなさい。
これは、今問題になっている性差別発言でもなんでもなくって、京都の桜守(さくらもり)として有名な、第16代・佐野藤右衛門さんのお言葉なのです。
長い年月を重ねたものにこそ、美しい、「色香」のある花が咲く。皺くちゃになった幹の老木は、はっとするほど美しい花をつけるものだ、そういった意味だそうです。
藤右衛門さんご自身のお庭を京都で訪ねたとき、その言葉を体感したのでした。
いつもは通り過ぎてしまう桜の木。ぱっと花を咲かせたとき、人は桜に釘付けになるのです。
シリコンバレーのクリスマス
- 2007年01月31日
- フォトギャラリー
すみません、今頃になって、クリスマスのお話なんて。
でも、実は、ほんの数日前、お友達からクリスマスプレゼントをもらったばかりなんですよ。なかなか会えないから、こんなに遅くなってしまって・・・
というわけで、シリコンバレーのクリスマスを、ちょっとだけおすそ分けです。
まあ、シリコンバレーは北国ではないので、雪が積もることはありません。だから、ちょっと雰囲気に欠ける部分はありますが、それでも、クリスマスは、みんなが待ち望んでいる大事な季節なのです。
12月が近づいてくると、シリコンバレー最大のサンノゼ市では、ダウンタウンの公園に、クリスマスが登場します。
これは、「Christmas in the Park(公園のクリスマス)」と名付けられたもので、毎年、フェアモント・ホテルの真ん前にあるシーザー・シャヴィス公園に、盛大な飾り付けがなされるのです。
プロが製作した、大仕掛けの飾りのまわりには、学校の子供たちが、工夫をこらして作り上げたクリスマスツリーも並びます。公園の真ん中の大きなクリスマスツリーでは、11月下旬の金曜日、ライティングセレモニーが開かれます。
ここの目玉は、飾りだけではありません。冬の間、公園には、アイスリンクが登場します。まん丸のスケート場の中には、カリフォルニアらしく、椰子の木が並びます。椰子の木を眺めながらスケートなんて、きっと世界中でここだけかもしれませんね。
この公園には、シリコンバレーに限らず、サンフランシスコ・ベイエリア全体から、たくさんの人が足を運んで来ます。毎年の家族の行事になっているよ、といった話も耳にします。
どうしても、お買い物が優先してしまうアメリカのクリスマスシーズン。公園でスケートしたり、そぞろ歩きしたり、そっちの方が、よっぽど健康的ですよね!
一方、我が家は、静かなクリスマスです。でも、毎年、クリスマスツリーだけは飾っています。
アメリカでは、クリスマスツリーは、本物のもみの木を使う家庭が多いです。もみの木を選ぶのは楽しい行事だし、家に置いたとき、香りもとってもいいと言います。
でもわたしは、「木がかわいそう」と思うので、作り物のツリーを使っています。飾りをすると、偽物でもなかなか良く見えるんですよね。
カリフォルニアでは、だいたい、11月末の感謝祭(Thanksgiving)が終わると、クリスマスツリーを飾り始めます。
でも、東海岸出身のお向かいさんによると、それはダメだそうです。彼女は、勿論、正統の「もみの木派」なんですが、感謝祭のすぐあとに飾ると、木がカラカラに乾燥して枯れてしまうし、香りもすぐになくなってしまうとか。「だって、クリスマスの日にきれいに見えなきゃ、意味ないじゃない!」。
しかも、カリフォルニアでは、元日が過ぎると、さっさとクリスマスツリーを片付けてしまう。これもダメだそうです。
なんでも、クリスマスの日から1月5日の12日間は、「The Twelve Days of Christmas(クリスマスの12日)」と呼ばれ、クリスマスを祝う期間とされています。だから、この間は、クリスマスツリーを飾っておかないといけないとか。
翌日の1月6日は、「Epiphany(エピファニー、公現日)」と呼ばれ、東方の三賢人が、キリストの降誕を祝い、ベツレヘムを訪れた日。そういうクリスマスの最後を飾る、ありがたい日なので、その前夜までは、飾り付けを取ってはいけないそうです。
カリフォルニアの人間は、いったいにせっかちです。だから、自分たち独自の風習を生み出したのかもしれませんね。「さっさと飾り、さっさと取り払う!」と。
まあ、一般の家庭では、クリスマスツリーも屋外のライティングも、取り払うのはあんまり苦にならないでしょう。
けれども、クリスマスに情熱をかけている家庭もたくさんあるのです。そんな家では、飾り付ける方も、取り去る方も、同じくらい時間がかかるのかもしれませんね。
そんな大きな努力に報いるために、地元の新聞マーキュリー紙では、毎年、シリコンバレーの「ライティング・マップ」なるものを発行します。一般の家庭の飾り付けで、立派なところを紹介してあげるのです。
まあ、例年、同じような場所が挙げられているのですが、ときに、新しい発見もあります。
上に載せている最後の6枚がそうです。これは、サニーヴェイルにある、たった一軒の飾り付けの「一部」なんですが、わたしは、ここまで盛大で、なおかつ繊細な飾り付けを今まで観たことがありません。
家はすべてカラフルなライティングで縁取られ、庭には、テーマ別に、いろんな飾りが置かれています。宗教的な「Nativity(キリストの降誕)」のシーンもあれば、ディズニーのキャラクターもいる。
そして、ガレージは舞台となり、ここには、こまごまとした街角の風景や、サンタさんの部屋が再現され、おもちゃの列車が走ります。
通りに面する窓の中には、お人形のクリスマスキャロルも顔をのぞかせています。う~ん、なんとも、心憎い演出。
持ち主らしいおじさんが外に出て来て、見学者の質問に答えたりしていましたが、きっと、あのおじさん一人では飾り付けはできませんね。毎年、家族総出でやっているのでしょうね。
なるほど、家族の緻密な計画と絆がなければダメ、といったところでしょうか。
そういう点では、クリスマスの美しい飾り付けって、家族の絆の深さの表れなのでしょうね。
初夢の調べ
- 2007年01月30日
- エッセイ
すみません、もうすぐバレンタインデーなのに、今頃になって初夢の話?と思われた方もいらっしゃるでしょう。
でも、そうなんです、その初夢のお話なんです。
多分、初夢というのは、元日に寝た後に見る夢のことなのだと思いますが、だとすると、とっても奇妙なものでした。
いつもと違って、とっても断片的な夢でしたが、こんなものが登場したのでした。
自分で経営しているかのような、なかなかいいレストラン。その居心地のよい場所を後にし、向かった先の山では、一生懸命に植林をしている。一本、一本、丁寧に。まるで、神の手がマッチ棒大の木々を大地に植え込んでいるかのように。そして、それが終わると、森の奥にでも潜んでいるのか、爆弾犯の捜索に取りかかる。
場面は一転し、目覚める頃には、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番(ハ短調Op.18)」が耳元に流れ、目の前には、やたら音符の多い楽譜が広がる。
まあ、「植林」や「爆弾犯」なんかの夢の分析はさておいて、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、彼のピアノ協奏曲の中でも、一番好きなものです。
あの情熱的な旋律の盛り上がり、そして、あふれ出る感情。ほんとに、名曲です。
この曲は、人気テレビドラマ『のだめ カンタービレ』でもお馴染みですよね。千秋先輩が、ストレーゼマンの指揮の下、見事に弾き上げた協奏曲。
個人的には、ちょっとテンポが遅いようにも感じましたが、それでも、舞台の演技はなかなかのものでした。
協奏曲、交響曲、ピアノの小品、合唱曲と、数あるラフマニノフの作品の中でも、一番有名な、彼らしい名曲ですね。
ドラマの中でも言われていましたが、このピアノ協奏曲には、こんなエピソードがあるそうです。
若手作曲家としてもピアニストとしても、自信満々の青年ラフマニノフ。ところが、彼が第1交響曲を世に発表すると、途端に手のひらを返したように酷評にさらされる。
それに耐え切れず、強度の神経衰弱に陥ったラフマニノフを救ったのが、精神科医のニコライ・ダール医師。
4ヶ月に渡る暗示療法の末、めでたく立ち直ったラフマニノフ青年は、イタリア旅行から戻って、さっそく協奏曲を書き始めた。
そんな暗闇から脱した状態で生まれたのが、この2番。だからこそ、あれほどの感情がほとばしっているのでしょうね。
わたしが初夢で聴いたのは、情熱ほとばしる部分じゃなくって、第2楽章アダージョ・ソステヌート(Adagio sostenuto)。
華やかな第1楽章と第3楽章の間にはさまれ、穏やかな、美しい旋律で、皆がふっと息をつくところ。
これを聴きながら目覚めたわたしは、平和な気分に満ちていたのでした。
音って不思議です。まわりの環境や、自分の心の中が、如実に反映される。
それは作り手にしても、弾き手にしても言えることだと思います。
テレビでオペラを観たんです。モーツァルトの「魔笛(Magic Flute)」を英語の台本にして、舞台芸術もミュージカルみたいに斬新にしたもの。ニューヨークのメトロポリタンオペラの公演です。
たった2時間オペラを聴いていただけなのに、そのあとピアノを弾いてみると、音がまったく違っている。深くて、リッチ。それに、あでやか。言いたいことが言えている、そんな感じかもしれません。
体の調子が悪くてめまいがするとか、練習不足で指が動かないとか、そんなことは関係ないくらいに、まったく音質が違うんです。
自分では気が付いていないけれど、オペラから、何かを吸い取ったのでしょうか。
音楽を勉強するのにヨーロッパがいいって、よく言いますよね。「のだめちゃん」のドラマでもそうでした。それって、こういうことなのかもしれませんね。
知らないうちに、頭からだけじゃなくって、肌からも栄養を吸い取っている。街角で聞く騒音も、いつも通る何気ない石造りの風景も、みんな栄養になっている、そういうことなのではないでしょうか。
わたしはよく、作曲家と同じ国を生まれ故郷とする演奏家を選びます。世代はまったく違うけれど、ごちゃごちゃと説明されることもなく、作曲家を表現できているんじゃないかと思って。
そういう人を聴いていると、「こんな音作りは、日本人じゃ絶対にやらないよね」って思うことがあります。楽譜に並ぶ音符の間に、何か特別なものが見えているみたい。
その場所の空気を吸って、水を飲んで、何かしら自然と吸収するものがある。
あ、なんだかつい暴走してしまいましたが、何であんな初夢見たんだろうって、不思議に思っているんです。
それは、大好きな曲ではあるけれど、どうして第1楽章でも第3楽章でもなく、静かな第2楽章なんだろうって。
今年は、この路線で、穏やかに行きなさいってことなのかな。
音楽のこぼれ話:これを書くにあたって、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を聴き返しておりました。
勿論、いつ聴いても名曲ではあるのですが、第1楽章を半分過ぎる頃、自然と涙が湧いて来るのです。そして、「そうかい、そうかい、わかったよ」と、27歳の青年ラフマニノフに語りかけておりました。
時に炎(ほむら)跳び、時に水が流れる。どんな形にせよ、苦しみを一度でも経験したことのある人には、よくわかる曲なのかもしれません。
わたしが2番を聴いたヴラディーミル・アシュケナージの演奏も、作曲家と同胞の名士として深く心を打つものでした。
が、実は、ラフマニノフ自身も、凄い演奏家なのです。はっきり申し上げて、ピアニストとしてのラフマニノフも、曲作りに劣らず、天才と言うべきでしょう。
それは、『Rachmaninoff Plays Rachmaninoff(ラフマニノフがラフマニノフを弾く)』というCDで、片鱗を感じ取ることができます。
ピアニスト・ラフマニノフに関しては、アメリカのヘンダーソンという批評家が、こう記したそうです。
ラフマニノフがこの世に在る時に生を享け、演奏を聴くことができて、その運命の星のめぐり合わせに、ただただ感謝するしかないと。
わたしも、雑音の入った録音ではなく、実際にその場で聴いてみたかったと、残念に思うばかりです。
手元にあるCDでは、ラフマニノフ自身がピアノ協奏曲1番と4番、そして、「パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43」を弾いています。
「パガニーニ」の方は、なんと、1934年のボルティモアでの初演のひと月後に、レオポルド・ストコフスキー指揮、フィラデルフィア管弦楽団という、同じ顔ぶれで録音されたものです。
ラフマニノフが61歳の時の演奏ですが、まあ、よく指が動くこと!彼の技巧は、現代にしても、決して引けを取りません。
そして、ご自身が弾くと、やっぱり、きらびやか。ストコフスキーの指揮ということもあるのかもしれませんが、次から次へと繰り広げられる変奏は、まったく飽きさせることがありません。
ラフマニノフの演奏を見事に踏襲しているアシュケナージもそうですが、なんだってロシア人って、あんなに指が動くんでしょう?しかも、みなさん、一様にロマンティスト。
1934年、ラフマニノフがスイスのルツェルン湖畔で書いたという「パガニーニ」は、初演された当時、あまり評判が良くなかったそうです。聴衆への演奏効果だけをあてにしている曲だと。
けれども、誰でも一度は聴いたことのある、あの美しい「第18変奏アンダンテ・カンタービレ(Andante cantabile)」を耳にすると、そんな批判なんて、どこかに吹っ飛ぶのではないかと思うのです。
おっと、ついラフマニノフを語ってしまいましたが、もし気が向かれたら、も一度聴いてみてくださいね。
ちなみに、冒頭の写真は、書家の母の手作りカードでした。新年のあいさつにふさわしい和紙を見つけたようで、ちょっと遊んでみたようです。
いや、つい乗せられちゃうんですよね。「ひとつ買えば、もひとつタダだよ(Buy one, Get one FREE)」っていうのに。
わたしの場合、「テレビ番組のDVDセットをひとつ買えば、もひとつタダよ(Buy 1 TV box set, Get the 2nd Free)」というものでした。
Barnes and Nobleという本屋さんのチェーンが運営しているオンラインショップのお誘いだったのですが、ちょっと前から、狙っていたボックスセットがあったんですよ。だから、つい購入してしまいました。
おまけには、似たようなジャンルの探偵物を選んでみました。
というわけで、こういった目玉商品はダメですが、正規の値段(list price)で買った商品は、返品(return)や交換(exchange)ができますよね。
アメリカでも、日本と同じようなもので、レシートを持っていけば、30日以内くらいだったら返品や交換が簡単にできるのです。
たとえば、返品したいのだったら、
I’d like to return this「これを返品したいのですが」
と言えば大丈夫。
勿論、this のあとに、this sweater 「このセーター」などと、名詞を続けてもいいですよ。
この場合、return は「返品をする」という動詞ですが、a return というと、同時に名詞でもあるのです。
大きい物を返品するときなど、場合によっては、「restocking fee(再度の仕入れ費)」というのを取られる場合もあります。もう一度、店頭に並べたりする手数料のことですね。
でも、衣料品や小物などの場合は、だいたい無料で返品させてくれるようです。だって、もともと同じお店で買ったんですものね。
交換の場合は、まずこう言えば、意思表示ができますよ。
I’d like to exchange this for another item「これを他の物と交換したのですが」
そのあとに、たとえば、赤いもの(red one)がいいとか、小さいサイズ(smaller size)がいいとか、具体的に指定すればいいですね。
返品のreturn と同様に、exchange は、動詞でもあり、名詞でもあります。
アメリカって、非常にさばけたところがあって、クリスマスとか誕生日にプレゼントをしても、相手が気に入らないケースを見越して、わざわざレシートを付けて、プレゼントを渡すことがあるのです。
ひと昔前は、値段が書かれたレシートそのものでしたが、今となっては、「gift receipt(ギフトレシート)」なるものが存在するのですね。
さすがに、これには、商品名、購入日、店名だけで、値段なんかは書かれていません。
衣料品店の Gap などの場合、「gift receipt を付けてあげると、日本の支店でも交換できるよ」と、こちらの店員さんによく言われます。便利になったものですよね。
アメリカの返品には、こんな有名な話があるんです。
あるとき、「お宅で買ったものをお返しします」と、車のタイヤを持って来た人がいました。
ちゃんと返品できて、たんまりお金を返してもらったそうですが、なんと、そのデパートでは、もともとタイヤなんて売っていなかった!
まあ、これは、「urban legend(都会でありそうな、インパクトある作り話)」の一種だと言われていますが、それほど、アメリカは、返品がやり易いってことなのですね。
一年以上使い古したコーヒーミルを返品した、というおばあちゃんのエピソードもありましたね。こちらは、本物だということですが。
実は、我が家にも、こんな返品のお話があるのです。
あるとき、ドラッグストア(薬局から発展した雑貨屋)で、シャンプーとリンスを買いました。でも、使ってみると、匂いが気に入らなかったので、両方セットにしてお返しいたしました。
返すとき、「これ使ったの?(Have you used these?)」とは聞かれましたけど、「たった一回だけよ(Only once)」と言うと、全額返してくれました。
こんなこともありました。デパートのMacy’sで、連れ合いがワイシャツを買いました。そのまま出張に持って行ったのですが、店員さんがわざわざ計ってくれたわりに、間違ったサイズを購入してしまったようです。そこで、旅先で着たにもかかわらず、そのまま返品。
やっぱりこのときも「これ着たの?」と聞かれましたが、「出張先で交換するのは不可能だった」と言うと、ちゃんと全額返してくれました。
こういうときは、堂々とした態度で臨むことが肝心ですね。
まあ、こういうのは、日本では起こり難いシチュエーションなのかもしれませんが、わたしの論理は、こうなのです。
お客様が気に食わない商品を店に置くな!
それから、店員が間違って物を買わせるなんて言語道断!
いや、アメリカのお店って、袖を通した洋服を返品するケースは多いらしいですよ。Macy’s みたいな大きな店だと、そういうのは、ちゃんと予算の中に組み込まれているんだとか。
でも、小さな個人商店だと、痛いですよね。「このドレス、サイズが合わなかったわぁ」と言いながら、パーティーが終わった後にちゃっかりと返品して来る。
お金は返さないわけにはいかないし、かと言って、返品されたものをお店で売るわけにはいかないし。中には、立派にシミが付いたものもある、とも聞いたことがあります。
ところで、アメリカでは、クリスマスの歳末商戦が終わっても、まだまだショッピングシーズンが続くのですね。
なぜって、気に入らないクリスマスプレゼントを返品、交換するついでに、また新たにお買い物をしてしまうからです。
それに、クリスマスにいただいた「gift card(ギフトカードと呼ばれるカード型の商品券)」も、ちゃんと使わないといけないですしね。
何かにつけ、お買い物が大好きなアメリカ人なのです。
追記:冒頭に出てきた、前から欲しかったテレビ番組のDVDセットって、『Remington Steele(レミントン・スティール)』というものなんです。1980年代のNBCの探偵ドラマで、多分、これで、かの有名な二枚目俳優ピアス・ブロズナンが、世に知られるようになったんじゃないかと思います。
ブロズナンは、このドラマのためにNBCとの契約にがんじがらめで、せっかく、映画「007シリーズ」にボンド役で出演しないかという話があったのに、このときは実現しなかったんです。そして、だいぶ経った1995年に、ようやくボンド役に抜擢された、そんなエピソードがあるそうですよ。
ちなみに、Steele という名前は、「盗み」のSteal の韻を踏んだ言葉なんですね。もともとの泥棒さんが、探偵になりすますという、おもしろい設定。そんな、とってもおしゃれな探偵ドラマなんです。早く届けばいいな!
後日談:これを読んだお友達が教えてくれました。タイヤの返品のお話って、もともとはタイヤ・チェーンのことだったんじゃないかって。
タイヤ・チェーンのお話なら、ほんとにあった話だそうです。老舗デパートのNordstromに、タイヤ・チェーンを返品しに来たお客さんがいて、デパート側は、店で扱っていないのにもかかわらず、代金をそっくり返したと。
Nordstrom は、お客様サービスを第一とするデパートだそうで、タイヤ・チェーンの他にも、こんなお話があったとか。
・商売敵のデパートMacy’sで買った商品に、快くご贈答用の包装をしてあげた。
・冬の寒い日、お客様の車を暖めて待っていた。
・車椅子のお客様のために、車椅子にひっかからないようにと、短いショールを編んであげた。
こういったエピソードは、アメリカの有名なビジネス本にも出て来るそうで、作り話ではないようです。アメリカにも、「サービス」を第一にする理念があるんですね。
24時間のオフ
- 2007年01月24日
- Life in California, 日常生活, 自然・環境
エッセイ「新年のごあいさつ」で、ラスヴェガスに取材に行っていた事をお伝えいたしました。その取材レポートをようやく終え、ほっと一息ついているところです。
振り返ってみると、レポート書きに丸一週間以上費やしたことになっていて、自分でもちょっとびっくりです。いくらたくさん書く事はあるにしたってねぇ・・・普段、お勉強していないのがバレてますよね。
う〜ん、やっぱりテクノロジーは、日進月歩。日々のお勉強が、物を言いますねぇ。
そんな忙しい、受験生みたいな一週間を過ごしていながら、先週は24時間のオフを取りました。連れ合いのお誕生日に、「隠れ家」に一泊したのです。
「隠れ家」なんていうと、別荘でも持っているのかと誤解されそうですが、なんのことはない、連れ合いがよく行くゴルフ場に宿泊施設が付いていて、そこに泊まっただけの話です。だって、お誕生月には、タダで一泊させてくれるから。
このゴルフ場は、シリコンバレーの最南端にあって、我が家からも近いのです。フリーウェイが混んでなければ、たった20分で到着です。ほんの短い道のり。
でも、ひとたびゴルフ場に着いて、キャビン風のお部屋に足を踏み入れると、そこはもう別世界。
街の喧騒なんて、この世に存在しないくらいの静けさ。
目の前には、緑の絨毯みたいに広がるゴルフコース。ところどころに齢(よわい)を重ねた木々が生え、その向こうには、丸っこい穏やかそうな山。
だんだんと日が沈み、山がほんのり赤く照らされる頃、お部屋の中には暖炉の火が灯ります。
暖炉の火でぽっと暖かくなったところで、落ち着いて部屋の中を見渡すと、あ〜、同じ、同じ。
部屋の造りも同じなら、ベッドの向きも同じ。それから、ひざ掛けも、いつもの通り、暖炉の前にお行儀よく準備されていました。
このひざ掛けは、どうやら特製のものらしく、ゴルフ場のロゴも入っているし、よく見ると、模様もここの風景なのです。
こちらは、17番ホールなんですって。今では、グリーンまわりの左の木は、切り倒されているようですが。きっと「難しいぞ」って苦情があったのでしょうね。
そうそう、部屋の隅の箪笥も、いつもとおんなじ。この箪笥って、なんとなくアジア風で、置いてあるだけでほっとするのです。
おばあちゃんのところにあったような、昔なつかしい箪笥。
それから、ワインもちゃんと置いてありました。どうぞ旅の疲れをお取りくださいと。ゴルフ場のお隣のワイナリーのものなんですが、これもいつものおもてなし。
こんな風に、旅先のお馴染みって、とても落ち着くものなのです。
この晩のディナーは、ちょっとカジュアルに、バーでいただきました。月曜日だったので、ダイニングルームはお休みを取っていたのです。
「バースデーボーイ」の連れ合いは、メインディッシュにと、猪に挑戦。ちょっと固くて、噛み応え充分です。お味もワイルドでしたが、プレゼンテーションも「猪!」って感じですよね。
わたしは平和に、帆立を焼いたもの。山に囲まれていても、新鮮な魚介類。そこが、カリフォルニアのいいところです。
テーブルの担当者が勧めてくれたワインも、なかなかおいしかったですよ。ナパのGregory Graham というワイナリーの、2002年の Viognier。初めて聞いたワイナリーだけれど、とっても香り高く、味わい深い白ワインでした。
このウェイターさん、実は、「カリフォルニアワインはあんまりねぇ」というお人なんです。以前、お勧めを聞いてみると、「それじゃ、ぜひカリフォルニア以外の白ワインを!」と、いそいそとイタリアのワインを持って来たくらい。
でも、この Gregory Graham は、お友達に教えてもらって彼も気に入ったというだけあって、なかなかの「Good selection (よい選択)!」でした。
翌朝は、それはそれは、こごえるような寒さでした。サンフランシスコ近郊は、先々週からずっと毎晩のように摂氏零度を下り、朝は、すべてのものが凍てつくようです。
とくに、このゴルフ場は、山に囲まれた盆地なので、底冷えするのです。前夜はマイナス3度を記録したそうで、翌朝、コースは霜で真っ白。
こういう霜のきびしい朝は、すっかり解けるまでスタートできないんですよね。
でも、ゴルフ場の人は働き者。果たしてゴルファーが現れるかどうかもわからないのに、きちんと準備をするのです。
まずは、グリーンの芝刈り。それから、ホールの位置を移します。
あら、今日は、ずいぶん手前のエッジに移してる。あれじゃ、アプローチが難しいよね。
人間ばかりではなく、ちょっと大きめの小鳥も、元気よくチョンチョンお散歩しています。
きっと、誰かさんのおこぼれでも頂戴しようと狙っているのでしょう。
そんな屋外での活発な動きを尻目に、こちらは、お部屋でぬくぬくと朝食。
今日の朝食は、フレンチトーストに、暖かいベリーソース。新しいメニューの登場に、いつものブルーベリー・パンケーキから目移りしてしまいました。
そして、朝食のあとは、お風呂。朝ゆっくり入るお風呂って、ほんとにぜいたくですよね。
ここのお風呂は、小っちゃな箱庭が見えて、気持ちがいいのです。
プライバシーの問題がなければ、やっぱりお風呂の窓は、大きいのがいいですね。
さあ、そろそろ出発の時間となりました。
帰りは、お部屋からクラブハウスへと、トコトコと下っていきます。
舗装された道の脇には、ふかふかとした草。なんだか、熊の背中みたいです。緑色ですけど。
どことなく、スコットランドのゴルフ場のようでもありますね。ラフに入ったら、絶対に出そうにないという・・・
そんなことを考えていると、あちらの斜面には、鹿さんご一行がのんびりと歩いています。
全部で10匹ほどはいましたが、こちらは、4人家族みたいですね。この辺によく出没するのは、何かおいしいものでも生えているのでしょうか。
この日は、気持ちよく晴れ上がり、だんだんと暖かくなりました。凍えるような早朝が、嘘のようです。
晴れ上がると、冬場でも光線が強いのがカリフォルニア。雨季の冬だからって、サングラスを忘れちゃダメですよ。
お昼を食べて、食料を調達して我が家に戻って来ると、もうそこは、日常の空間。いつも接している家具や置物や仕事道具が、いきなり目に入ってきます。
なるほど、日常というものは、案外、単純な定義なのかもしれませんね。自分の影が濃く反映されている空間。
たとえ20分しか離れていない場所であっても、そこが別世界に感じるのは、どこを見ても、自分の影が認められないから。お馴染みのものがあっても、そこには自分の影はない。
だから、いつも通い慣れている街だったとしても、そこに泊まってみると、案外、非日常を感じるのかもしれません。窓から眺める角度が違っていたり、それまで知らなかった横道を見つけてみたり。ちょっと時間がずれると、違った人たちが行き来していたり。
そんなプチ旅行をしてみると、とってもリフレッシュできるのかもしれませんね。
なにも遠くに行かなくても、長い時間お出かけしなくても、日常からの逃避行は、意外と簡単にできるのかもしれません。
たった24時間のオフでしたが、そんなことを考えてみたのでした。
追記:日本のお友達が、とっても素敵なことを書いていました。いつもは東京や大阪の人ばかりと電話でお話するのに、その日は、違った場所の方々ともお話したそうです。松本市、高崎市、長野市、千葉市。長野は、その日、雨と霧の生憎のお天気だったとか。
そして、最後に、こうくくってありました。「言葉だけは旅行気分の一日でした」と。
「言葉での旅路」。なんとなく、彼女らしい、素敵な心構えです。もしかしたら、自分の席から一歩も離れなくても、心は世界中を飛びまわれるのかもしれませんね。
CES:今年のコンスーマ・エレクトロニクスショー
- 2007年01月23日
- 業界情報
Vol. 90
アメリカは、元日を過ぎると、もうエンジン全開でお仕事です。そして、新年第二週目には、さっそくラスヴェガスでCES(コンスーマ・エレクトロニクスショー)が開かれました。
今年はCESも40回目を迎え、ますますパワーアップ。今ではすっかりCOMDEX(コムデックス)の代役として定着し、IT業界の祭典となっています。毎年膨れ上がる出展数に、会場もフットボール場30個分だそうな。
当初CESは、ラジオやテレビなど、昔ながらの家電製品のデビューの場だったそうですが、時代の流れは、恐ろしいくらいに速いものなのです。
さて、そんな巨大な、最新情報満載の「靴底が磨り減る」賑々しい祭典ですが、わたくしなりに気になったことを、5つの観点からお話いたしましょう。
<ユーザーインターフェイス>
先月号で、マイクロソフトの新しいMP3プレーヤー「Zune(ズーン)」のお話をいたしました。実は、前回書いたときは、実際に触る機会はなかったのですが、CES会場の休憩場にZuneコーナーが設けてあって、ちょっと触ってみたのです。
何やら、アップル(旧アップルコンピュータ)のiPodのような丸いダイヤルが付いていて、気が付いてみると、これを一生懸命まわしているのです。でも、iPodじゃあるまいし、ボリュームを大きくするには、丸いダイヤルの上の部分をポコポコと押していく方式になっているのですね。そして、曲を選択するには、ダイヤルを右左に押すといった感じ。
で、こんな間違いは、初めてZuneを手にした、ほとんどすべての人がやってしまうと思うのです。それほど、iPodのユーザーインターフェイスは、人々の脳裏に深く刻まれている。
そして、CESと並行して開かれていたサンフランシスコのMacworld(マックワールド)では、アップルの「iPhone(アイフォン)」が発表されました。長い間、噂されていながら、誰も詳細を知らなかった新型ケータイ。
いきなり、CESの話から逸れて申し訳ありませんが、わたしはラスヴェガスのホテルでこのニュースを観た時、「やられた!」と思ったのです。
何がって、電話なのに、キーボードがない。iPodのフェースがパカッとスライドしてキーボードが出てくるような、「スライダー式」なんかじゃない。そんな凡人が考え出すような代物ではなく、「キーボード?そんなものいらないよ!」とでも言わんばかりの、傍若無人な製品なのです。
タッチスクリーンの威力はすごいもので、たとえば、音楽を聴こうと思ったら、単に指先で画面をちょいちょいっとスクロールするだけ。そのメニュー画面のスクロールの速さは、目を見張るものがあります。マイクロソフトWindowsでメニューをスクロールするのとはわけが違う。
しかも、このデバイスを縦横に動かすと、自然と画面が縦向き、横向きに変わってくれる。サムスンが、両方向用にヒンジがふたつ付いたケータイ「SCH-u740」(写 真)を出していたけれど、その一歩先を行くようなデザインです。
この「iPhone」の2年に渡る製品開発については、裏話は何も漏れ聞いておりませんが、想像するに、スティーヴ・ジョブスさんの意向が、かなり濃く反映されているのだと思います。「君たちは、何のためにiPodを作ったんだ?ケータイにキーボードなんて、今まで培ってきたiPodのユーザーインターフェイスを壊してしまうようなものじゃないか!」とでも、部下に熱く語っていたのではないでしょうか。
まあ、確かに、ケータイにアドレス帳が入っていて、タッチスクリーン上にキーパッドが出てくれば、キーボードなんていらないのかもしれませんね。
「iPhone」発売は今年6月だそうですが、来年2008年の一年間で、世界携帯電話市場の1パーセント、つまり1千万台という大胆な売上げ目標です。実際、どこまで伸びるのか、お手並み拝見。
アップルが独占契約した携帯キャリアCingularでは、2年契約で500ドル(4GBモデル)と600ドル(8GBモデル)と、ちょっとお高いところが難点ではあります。なにせ、アメリカという国は、昨年売れたケータイの平均価格はわずか60数ドル、という渋い市場ですからね。
追記:値段以外にも、アップルにとって、いくつかのハードルが出てきています。ひとつは、1月9日の「iPhone」発表の翌日に、さっそくネットワーク機器のシスコ・システムズが、"iPhone"という名は自分たちが商標登録していると法廷に訴えていること。同社によると、既に10年以上前に登録されていた名を、2000年の会社買収によって取得しており、昨年末、Linksys部門が、"iPhone"という名でVoIP(Voice over IP)製品を出しているのだというものです。
もうひとつは、1月15日から始まった"Cingular"というブランドの抹消(de-branding)キャンペーンです。共同親会社である電話会社AT&T(旧SBC)のBellSouth買収に伴い、携帯キャリアCingularは、"AT&T"となるのです。
2年前のAT&T Wirelessの吸収合併以来、Cingularは、若い層に向け「かっこいい(cool and hip)」イメージを作り上げてきたのに、それがいきなり、野暮ったい"AT&T"に替わってしまう。これは、アップルにとって、かなりのダメージだ、と個人的には思うのです。
<Windows Vista>
さて、いきなり逸れてしまった話題をCESに戻しましょう。わたしは、1月8日のCES開幕の前日にラスヴェガス入りしていたので、マイクロソフトのビル・ゲイツさんのキーノートスピーチを聞くことは可能でした。けれども、6時半からのスピーチのチケットは、5時半にはすでになくなっていたし、その晩、シルク・ドゥ・ソレイユの「O(オー)」というショーを観ないといけなかったので、ゲイツさんには失礼してしまいました。
そして、翌朝いきなり、「前夜のスピーチはつまらなかった」という風の噂を耳にして、マイクロソフトの新しいOS「Windows Vista(ヴィスタ)」とは、どんなにつまらない製品なのだろうと、かえって好奇の心をそそられてしまったのでした。
メイン会場の真ん中にでんと構えるマイクロソフト。そのステージで、Vistaの短いデモを観てみましたが、どうして、どうして、デモ自体はパッとしないわりに、こんなに便利な製品だったら欲しいと思ったのでした。
Windows Vistaの新機能は、ここではとても要約できません。けれども、特筆すべきは、今までの「お仕事向け」から、日常生活に影響を与える製品になって来ているということでしょう。
中でも、フォトギャラリー機能。今では、デジカメは誰もが持つものとなっていますが、自分で撮った写真を、簡単に扱えるようになっています。たとえば、それぞれの写真に、「家族」「旅行」といったカテゴリーや、お気に入り度といった情報を付けて保存。これで、膨大な写真の検索も自在になります。
色調や露出度の編集も簡単にできますが、間違って編集した写真を上書き保存してしまっても大丈夫。もともとの写真は、「デジタル・ネガ」として、ちゃんと保存されているのです。
それから、数人でグループ写真を撮ると、必ず誰かが目をつぶっているものですね。そこで、それぞれベストの部分を二枚の写真から選び出し、一枚に合成、なんてことも手軽にできるのです。
できた写真を、実家のお母さんに見せたいな。そんな時は、写真が入っているフォルダーのURLを教えてあげると、お母さんはネット経由で見ることができます。
と、こんないろんな技が使えるようになると、自宅にはパソコンではなく、サーバが欲しくなってきますね。そこで登場するのが、「Windows Home Server」と呼ばれる家庭用サーバ。先行機種のひとつとして、HP(ヒューレット・パッカード)の「HP MediaSmart Server」というのが、今年後半に発売されます。
このサーバを自宅に置くと、便利なことがたくさんできるようになります。たとえば、先ほどのフォトギャラリー機能。ネット経由で写真にアクセスできるので、実家に里帰りする際、わざわざ膨大な写真をラップトップに入れて持ち歩くこともなくなります。
そして、「ホーム・サーバ」という呼び名の通り、フェールセーフ機能も充実しています。毎日、ファイルのバックアップ保存を自動的に行ってくれるし、複数のハードディスクを内蔵し、ハードディスク間のバックアップも簡単にできます。これで、ハードディスクがひとつ壊れても大丈夫。
また、家庭内サーバとして、ネットワークに繋がっているパソコン、Xbox 360、Zuneといったデバイスへのファイル転送もできるし、データのバックアップ保存も自動的にやってくれます。
データのバックアップという点では、世の中どんどん便利になってきて、こんなサービスもお目見えしています。「あなたのデータを、私たちがバックアップしてさしあげましょう」。これは、自分のパソコンのデータを、業者が運営するバックアップセンターに保管してもらうサービスです。ファイルの更新があると、自動的に暗号化して、ネット経由でバックアップしてくれるのです。
この手のサービスは、何も目新しいものではありませんが、「容量にかかわらず、料金は月額5ドルだよ!」とうたっているCarboniteという会社も登場しています。
Dellも今年、似たようなサービスを始めます。そして、バックアップしたデータは、新しく購入したDellのパソコンにインストール。真新しいパソコンを箱から出せば、もうその場で自分の環境が整っているのです。
さて、Windows Vistaに話を戻すと、こんなクールな新製品もCES会場にお目見えしていました。その名も、「OQO Model 02(オー・キュー・オー、モデル2)」。CESの開幕前日に発表されたばかりです。
これは、知る人ぞ知るという超コンパクトなパソコンで、「Ultra-Portable(ウルトラポータブル)」とか「Ultra Mobile PC(ウルトラモバイル・パソコン)」と呼ばれる分野の製品です。2004年10月に、先代のOQO Model 01がアメリカ市場に登場し、マニアの間で大きな話題となりました。こんなに小さいのに、機能は普通のパソコンに劣らない。
今回のModel 02は、更に一歩進んだもので、Windows Vistaを載せられるそうです。モバイルなビジネスマン向けで、WiFi機能(IEEE 802.11a/b/g)を内蔵し、組み込みオプションでEVDOネットワーク対応にもなります。
先代の Model 01は、予定よりも2年も遅れて市場に登場した苦労の結晶であったわりに、2千ドルという高い値段がたたって、あんまり売れませんでした。だから、もう一機種で打ち止めなのかと勝手に思っていたのですが、どうやら、開発者であるサンフランシスコのOQOは、水面下で地道に活動を続けていたのですね。こういうのを見ると、旧友にばったり出会ったような感じがしますね。
ところで、CES開幕前のビル・ゲイツさんのキーノートスピーチですが、我が家に戻って来て、1時間10分に渡るビデオをネット上で観てみました(部下のデモも間に入っているので、これだけ長いのです)。
なるほど、「つまらなかった」という噂通り、残念ながら、心躍るようなスピーチではありませんでした。「来年は、僕は伝染病の話なんかしているだろうから、もうCESさんが呼んでくれるかどうか・・」とご自身が言っていた冗談も、案外、的を射るものなのかもしれません(まあ、ご本人はあくまでも、「僕が死ぬ一週間前まで、CESでスピーチし続ける」と宣言してはおりますが)。
けれども、ゲイツさんさんが力説していた「Connected Experiences(繋がる体験)」という概念は、マイクロソフトや協賛各社のブースのそこここで、実感することができました。
次のセクションは、そういったお話です。
<電話会社のテレビ放送>
今回、CESに行くにあたって、とっても見てみたいものがありました。それは、電話会社AT&T(旧SBC)がロールアウトしつつある、テレビ放送です。
これは、"U-Verse(ユーヴァース)"と名付けられたIPTV(Internet Protocol Television)で、光ケーブルを介し画像を各家庭に高速配信します。IPサービスの三種の神器である「ネットアクセス」、「電話サービス(VoIP)」、「テレビサービス(IPTV)」のひとつとなるものですね。デジタル放送なので、通常のテレビ番組の配信に加え、ビデオ・オンディマンドが可能となります。
今のところ、このU-Verseは、シリコンバレー界隈ではクーパティーノ、サラトガなど一部の都市でしか展開されませんが、25の高画質チャンネルを含め、300のテレビチャンネルが準備され、なかなか魅力的です。併せて提供されるブロードバンドサービスでも、最大6Mbpsの速度が約束されています。間もなく、IP電話サービスもパッケージに加わります。
これに備え、AT&Tは今年、光ケーブルの付設など、カリフォルニアだけで、10億ドル(約1千2百億円)に上る投資を計画しているようです。
いったい画質はどんなものなのか?CES会場では、一目散にAT&Tブースに向かい、デモを観てみました。会場で体験する限り、画像はケーブルテレビのデジタル放送に劣りません。しかも、チャンネルを換える速度も速い。チャンネルを転がす前に、次のチャンネルでは何を放送しているのか、小さい画面で確認なんて芸当もできます。
IP電話サービスとテレビ放送が融合する利点もあります。たとえば、テレビを観ている時に、電話がかかってきたとします。すると、画面に、誰からの電話なのか文字情報が出てきます。「あ、嫌なヤツ!」と思ったら、居留守を使えるのです。
なんとなく、心ひかれるIPTV。実は、バックエンドのソフトウェアを担当しているのが、マイクロソフトです。 2年前に"Microsoft TV"と銘打ってデモをしていたものが、今では、AT&Tを筆頭に、ドイツ・テレコム、ブリティッシュ・テレコムなど、ヨーロッパ4社もサービス展開を開始しています。そして、BellSouth、SingTel、Slovak Telecomといった世界各地の7社も、間もなく追従するとのこと。
今は、専用のセットトップボックス(写真)を介し、画像を受信しますが、間もなく、マイクロソフトのゲームコンソールXbox 360でも受信できるようになります。
すると、こんな構図が見えて来るのです。現在、ケーブルテレビのComcastは、デジタル放送の受信と録画を兼ねたセットトップボックスを、契約者に無料配布しています。我が家も真っ先にこれに飛びついたクチですが、それに対抗し、AT&Tの方も、Xbox 360を無料で各家庭に配布するようになるのではないか。
Xbox 360は、IPTVの番組を受信するばかりではありません。来月市場に出てくるアップルの"Apple TV"(昨年9月の発表時は"iTV")よろしく、パソコンにダウンロードした映画やご自慢の写真を大型テレビに映し出すのにも使えます。HD DVDプレーヤーにも接続可能です。Xbox 360がリビングルームの真ん中にでんと据え置かれ、デジタル生活の中心となる。そういったシナリオも充分に考えられるのです。
何年も前から取り沙汰されている「デジタル・リビングルーム」。どんな形で実現するのか、まだまだ混沌とした部分がありますが、マイクロソフトと電話会社各社の協業体制は、有力な候補となるポテンシャルを持っています。
先代のXboxでは、40億ドル(約4千8百億円)を失っているマイクロソフト。それだけの犠牲を払って、ようやく人々のリビングルームに入って来たのです。そう簡単には、邁進(まいしん)をあきらめないでしょうね。
<モバイルWiMAX>
マイクロソフトブースのお隣に陣取ったインテル。ここで、ハッとしてしまいました。おっと、WiMAXが展示されている!
これは、正式には"モバイルWiMAX(IEEE 802.16e)"と呼ばれるもので、韓国では"WiBro(ワイブロ)"という名称でソウルを中心にサービス展開されている高速移動通信の規格ですね。次世代の通信ネットワークが確立するまで、高速通信を実現する規格として期待を集めるものです。
アメリカでは、携帯キャリアSprintがモバイルWiMAXの導入を発表していて、CES会場でも、その説明要員の多くは、Sprintの社員でした。 Sprintの計画では、今年7月以降、首都ワシントンDC、シカゴ、ボルティモアの3都市で順次テスト導入され、来年には、全米の主要都市でサービスが皮切りとなる見込みです。
インテルのブースでは、パソコン用の通信カードが展示されていましたが、そこでSprintの説明要員と話そうと行列を作っていたら、後ろからおじさんが話しかけてくれました。彼は、オレゴンに住むインテルの社員だそうですが、「このCES会場では、実効速度下り2.4Mbps、上り1.2Mbpsもあるんだよ」と教えてくれました。
でも、彼は、しきりにこう言うのです。「これだけスループットがあったにしても、いったい何に使うんだろうね?」と。なるほど、これは、真髄を付いた疑問かもしれません。パイプは準備したけれど、いったいどんなサービスが提供されるのか?
確かに、時代の流れはどんどん加速していて、サムスンのブースでは、誇らしげにモバイルWiMAX仕様のデバイスが展示されていました。Windows Mobile 5.0搭載のモバイル端末「SPH-M8100」と、Windows XPベースのウルトラポータブル「SPH-P9000 Deluxe MIT」です。
「SPH-M8100」は、次世代の通信規格と目されるIMS(IP Multimedia Subsystem)をサポートする端末で、モバイルWiMAX経由でさまざまなコンテンツにアクセスするだけではなく、VoIPによる電話サービスや、ビデオ会議、ウォーキートーキー機能(プッシュ・トゥー・トーク)も備えます。
デザイン的にはコンパクトなスライダー式になっていて、韓国の地上デジタル放送(T-DMB)用のアンテナもすっきりと収められています。
「SPH-P9000」は、折りたたみ式の風変わりなデザインのポータブルデバイスで、モバイルWiMAXとEVDOを内蔵します。Windows XP搭載なので、ビジネスにも立派に耐えうるし、30GBのハードディスク内蔵なので、音楽やビデオも充分に楽しめます。
両者とも、サムスンが「モバイルWiMAX MIT」と銘打ったシリーズの製品となります。
けれども、ここで、先の質問が頭をよぎるのです。モバイルWiMAXでアクセスするコンテンツって、いったい何?
サムスンのブースでは、Sprintの社員がこっそりと(?)教えてくれました。モバイルWiMAXは、小型パソコンや携帯端末に組み込むだけではなく、デジタルカメラやビデオカメラにも内蔵する計画があるんだよと。
そうなって来ると、街角で撮った写真や旅先のビデオを、その場で送信できるようになります。友達や家族に送ったり、動画サイトYouTubeにもアップしたり。可能性は広がります。
いったい、モバイルWiMAXは一部の新し物好きの流行に終わってしまうのか、それとも、全世界に広く派生するのか?
先述のインテルブースのおじさん。彼は、T-Mobileの最新のケータイとともに、いまだに、ソニーのPDA「クリエ」を愛用しています。さすがに、業界に長く生きているだけあって、ちょっとやそっとでは流行に翻弄されないのです。
どうやら、彼に見習って、じっと動向を見据える必要がありそうですね。
<こんなケータイ欲しいかな>
日頃、アメリカに暮らしていて、なんとなくケータイの野暮ったさに引け目を感じています。だから、CESでは、どんなにカッコイイものが出るのかしらと、とても楽しみにしていました。
正直に言って、やっぱり韓国の会社は元気がいいですね。LGやサムスンは、ブースの目立つ所に、ご自慢の最新モデルをずらっと陳列していて、アメリカの消費者の目には、見るもの、見るもの、すべてが洗練されて映ります。
LGブースには、外側が鏡みたいなピッカピカの銀色のケータイがあって、その名もずばり「Shine(シャイン)」。「アメリカではいつ出すの?」という質問に、「そんなプランはないよ」という、つれない答え。同じ質問をした後ろのお兄さんは、「オー、ノー」と、落胆を隠せません(落胆したついでに、わたしも写真を撮り忘れました)。
計画がないのだったら、CESで出すなよ、と言いたいところですが、これもきっと、LGやサムスンの策略なのでしょうね。「あんた、こんなのを出さないと、アメリカのユーザーに恨まれるよ」と、高飛車な携帯キャリアに無言のプレッシャーをかけているのかもしれません。
珍しく、ヨーロッパのケータイも目を引きました。ソニーエリクソンの「W950i」です。「ウォークマンフォン」と呼ばれるシリーズの最新版で、4GB(約4千曲分)のメモリーを内蔵しています。ステレオBluetoothやスピーカーフォン、FMラジオが付いていて、GSM/GPRS/UMTS対応なので、ネットアクセスも大丈夫。
機能満載なのに、小さくて軽い。しかも、小柄なわりに、画面が大きい。見た目はシンプルですが、なかなかいいケータイなのです。
でも、あとで調べてみると、ちょっと問題が。これはヨーロッパ向けのモデルだそうで、アメリカではSIMロック解除のものが売られているのですが、オンラインショップで600ドルから700ドルと、かなりお高いのです。これだと、アップル「iPhone」の 4GBモデルの方が、500ドルとまだお安いですね。
さて、あまたある携帯端末の中で、一番印象に残ったのは、"Modeo(モデオ)"というスマートフォンでしょうか。どうしてって、目新しいサービスをサポートしているからです(Windows Mobile 5.0搭載の端末は、HTCがOEM供給しています)。
この"Modeo"とは、会社名であり、サービス名なのですが、地上デジタル放送をケータイで観られるサービスなのです。
現在、ヨーロッパやアメリカでは、日本のワンセグや韓国の地上波DMBと違って、DVB-H(Digital Video Broadcasting-Handheld)という方式を採用する動きがあり、Modeoもその一翼を担うものです。この方式だと、消費電力を抑える利点があるとか。
Modeoサービスは、自社のDVB-Hネットワークを介し、テレビ番組や音楽、ポッドキャスティングなどのコンテンツをデジタル放送するもので、2005年にピッツバークで行った試験放送を経て、いよいよ、今月末からは、ニューヨークでベータ版のテスト放送を開始するそうです。
いよいよ、アメリカでも地デジが手元に!そんな時代が、目の前に来ているようです。
今まで、アメリカのケータイ向けテレビといえば、MobiTVがありました。携帯ネットワーク経由のストリーミング放送としては、先駆者と言えるものです。
こちらも、テレビやラジオ番組のライブ配信は可能ですが、CES会場で体験した限り、画質があまり良くないチャンネルもありました。やっぱり手元で再生するのには、限りがあるのでしょうか。
MobiTVは、今後、モバイルWiMAXもサポートする計画で、CES会場でもデモをお披露目しています。携帯キャリアSprintともサービス提供の契約を済ませたそうで、来年以降、SprintのモバイルWiMAXネットワークが本格的に立ち上がると、全米の主要都市で利用できるようになるようです。
ModeoやMobiTVで、どこでもテレビ! まあ、「ほんとにケータイでテレビなんか観るの?」といった疑問は残りますが、少なくとも、おもしろそうなサービスであることは確かです。
これから、「モバイル・ブロードキャスト」という言葉は、アメリカの消費者にどこまで受け入れられるのでしょうか。
<物好きな方のために、おまけのお話>
マックワールドでの「iPhone」の発表。そして、1月末に迫る、Windows Vistaの一般向け販売。ここへ来て、アップルとマイクロソフトの攻防が白熱しています。
iPhoneお披露目の翌週、ビジネスニュース専門チャンネルのCNBCが、マイクロソフトのCEOスティーヴ・バルマー氏にインタビューしました。iPhoneをどう思うかと。
そこで、バルマー氏、開口一番にこう答えます。「高いよ~。(キャリアの)補填がフルに付いて、500ドル? 世界一高いケータイだよねぇ」と(勿論、"世界一高い"というのは誇張ですが)。
そして、こう続けます。「キーボードがない?それじゃ、メールがしにくいから、ビジネス向けじゃないよねぇ」。
彼によると、そんなキーボードのないiPhoneよりも、モトローラ「Q」(写真)の方がよほどいいケータイらしく、「今なら99ドルで、しかもメールができるから」優れた機種だとのこと(日本と違って、アメリカでは、ケータイメールはビジネスマン向けの機能だという固定概念があるのです。バルマー氏の頭の中は、ビジネスマンの比重が大きいので、キーボードがないなんて致命的に思えるのですね)。
一方、アップルは、こんなテレビコマーシャルを流します。若くてカッコイイ「マックくん」と、なんとなく野暮ったい「Windows搭載PCくん」の二人が登場する、シリーズ物CMの最新版です。
PC「マックくん、僕は今日、健康診断に行ってくるよ。」
マック「おい、PCくん、どうしたんだよ?」
PC「僕は、Windows Vistaにアップグレードするんだけどさぁ、メモリーをアップグレードするだろう、ビデオチップだろう、プロセッサーだろう。もしかしたら、大手術になるかもしれない・・・もし、僕が戻って来なかったら、僕の周辺機器を全部君にあげるからね。」
マック「え、周辺機器って言われてもねぇ・・・」
という二人の会話の後に、すっきりとしたマックが画面いっぱいに。
シリコンバレーのアップルと、ワシントン州レッドモンドのマイクロソフト。規模は違うけれど、まだまだ激しい攻防は続きます。乞うご期待!
夏来 潤(なつき じゅん)
新年のごあいさつ
- 2007年01月13日
- エッセイ
たいそう遅れてしまいましたが、明けましておめでとうございます!
アメリカは、新年が明けると、いきなりエンジン全開で毎日が再稼動します。多くの人にとって、お家でのんびりできるのは、元日くらいなものでしょうか。
というわけで、さっそく新年第2週目に、ラスヴェガスに行ってきました。
いえ、遊びにではありませんよ。 お仕事です、お仕事。
ハイテク会社が一堂に集まる「 CES (コンスーマ・エレクトロニクスショー)」というのに、取材に行っていたのです。
まあ、そのお話はまた後日することにして、ここでは、まず、ごあいさつ。
このエッセイサイト『夏来 潤(なつき じゅん)のページ』を始めたのは、もう、おととしの年末になります。
「ラトヴィアからの友人」というエッセイを載せたのが最初でした。
初めのうちは、どんな方が読んでくださるのかわからなくって、書く方としても、どんな感じで書いてよいのか、まったくわかりませんでした。
それまでは、わりとお堅い物をウェブサイトや雑誌に書いていたので、「エッセイサイト」なるものがどんなものか、自分でもよくわかりませんでした。それこそ、おっかなびっくりで始めたようなものです。
でも、書いているうちに、だんだんとリラックスできるようになり、文章もちょっとやわらかくなってきたような気がします。お顔は見えていないけれど、読んでくださる方のことを、あれこれ想像しながら書いております。
ま、内容的には、「何かのお役に立てば」と願いながら書いているので、ときどき説明口調になったりしてはおりますが、それでも、自分では楽しみながら書いているつもりなのです。
ウェブサイトにつきましては、間もなく、ちょっとした「改善」をいたします。
『ライフinカリフォルニア』 と 『英語ひとくちメモ』 のセクションに、それぞれ分類検索を追加いたします。
『ライフinカリフォルニア』は、大別して、「季節」、「歴史・習慣」、「日常生活」の3つに。
そして、『英語ひとくちメモ』は、「場面」、「流行り言葉」、「おもしろ表現」の3つに大別されます(それぞれは、更に小さい分類に分けられています)。
これからたくさん書いていくと、この分類は、きっと便利な機能になっていくのではないかと思っております。
他にも「こうしたいな」と考えていることもありますので、おいおい改良していけたらいいなと思っております。
というわけで、これからもがんばって書いていきますので、ちょっとした息抜きの時間に、訪ねて来ていただければ幸いです。
ごあいさつが終わったところで、ちょっとお話を。
私事になってしまいますが、新年早々、連れ合いと口論になってしまったことがありました。何が原因だったのか、もう思い出せないくらい、些細な事なんですよね。
きっとわたしが、気分的にイライラしていたのかもしれません。
元日は、きれいなお皿を並べて、ちゃんとお屠蘇を飲んで、おせち料理を食べて・・・なんて、いろいろと決め事がありますからね。
それが手はず通りにきちんと運ばないと、ごく小さな事なのに気になって、そのイライラが、一緒にいる人に向けられていたのかもしれません。
そして、そんな日々が何日か続き、「今年はなんだか、新年早々良くないなぁ」と思っていたんです。
ところが、ある日、ハプニング。ゴルフに出掛けて行った連れ合いが、帰って来ないのです。普段は、家の近所のゴルフ場を早朝からまわるので、お昼には18ホールを終わって帰って来るのです。ところが、その日は、お昼をとっくに過ぎている。
結局、戻って来たのは、夕方の4時。なんでも、ゴルフ場の芝に霜が降りていて、お昼近くにならないとスタートできなかったわりに、この日は土曜日でたいそう混んでいたとのこと。なるほど、聞いてみると、何でもない事ではあります。
でも、その間、心配しましたよ。すごく真剣に。ゴルフのあとにオフィスに行くと言っていたから、その帰りにフリーウェイ101号線で事故に遭ったんじゃないかとか、もしかしたら、シリコンバレー南端の別のゴルフ場に行ってしまって、その帰りに事故に遭遇したんじゃないかとか、それこそ、いろいろとシナリオを考えました。
携帯電話も、お財布も、免許証も、何もかも置いていったから、事故に遭って病院に運ばれても、身元がわからないんじゃないかって・・・
シナリオは、どんどん、どんどん、勝手に膨らんでいくのでした。
そして、その日以来、イライラなんて、どこへともなく吹っ飛んでしまったのでした。もし万が一、大変な事が起こったら・・・なんて一度でも考えると、他の事なんて小さいものなんですよね。
ところで、話はガラッと変りますが、イタリアのヴァチカン市国に、ローマ法王の礼拝の場である、システィーナ礼拝堂がありますよね。
その天井には、ミケランジェロが描いた有名な天井画があって、真ん中あたりに、『 アダムの創造( The Creation of Man )』という絵があります。
岩に腰掛けるアダムが、左手の人差し指を伸ばし、それに向かって、白髪の神が右の人差し指を差し出し、命を吹き込んでいる図。
システィーナ礼拝堂の数あるフレスコ画の中でも、最も有名な絵ですね。
この絵の神の部分には、こんな説があるそうです。
威厳に満ちた神は、天使たちに囲まれ、赤いヴェールに包まれている。でも、良く見てみると、全体は、まるで人間の頭の中を横から見た図のようではないか。
もしかしたら、解剖にもさかんに立ち会っていたミケランジェロは、こんなことを言いたかったのではないか。「神とは、人間の頭で作り出したものだ」と。
その頃は、ローマ・カトリック教会の権力があまりにも大きく、科学者同様、芸術家も言いたいことを言えなかった時代だったのだ。だから、暗号を潜ませたのだと。
まあ、この説の真偽は、人には知る由もないことではありますが、このお話はおもしろいなと思うのです。
ときどき、人には、目の前に鬼が見える。でも、この鬼さんは、実は、自分の頭が投影した「まぼろし」なんじゃないかなって。
さて、今年も、「まぼろし」に惑わされることなく、元気に乗り切っていきましょうね!
(『 アダムの創造 』の写真は、ヴァチカン美術館編 『 Michelangelo and Raphael in the Vatican 』 を撮らせていただきました)
大理石の天井
- 2007年01月04日
- Life in California, アメリカ編, 歴史・習慣
女性の連邦下院議長が誕生したのです。
サンフランシスコ選出の民主党下院議員、ナンシー・ペローシ氏が、連邦下院の議場で、華々しく議長となる宣誓をしたのです。
この歴史的瞬間は、各種報道番組で生中継されていましたが、ペローシ氏は初仕事として、同僚の下院議員たちの宣誓を執り行いました。
(Nancy Pelosi氏が就任した連邦下院議長は、Speaker of the United States House of Representatives 、略して Speaker of the House と呼ばれます)
え、どうしてこれが歴史的瞬間なの?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、連邦下院議長というのは、アメリカという国では、3番目に政治的権力があると言われる立場なのですね。
もし大統領に何事か起こったら、まず副大統領が大統領に指名されますが、万が一、副大統領が就任できない場合は、下院議長が大統領となるのですね。
先日、お葬式が終わったばかりのジェラルド・フォード元大統領は、「大統領ではなく、連邦下院議長になるのが夢だった」と語ったと伝えられています。
それほど、アメリカの政策上、重要な意義を持つ役職なのですね。単に、議長席で踏ん反り返って、トントンと小槌(こづち)をたたく「お飾り議長」というわけではないのです。
このナンシー・ペローシさんは、「初づくし」のお方で、女性初の連邦下院議長であると同時に、イタリア系アメリカ人初、そして、カリフォルニア州選出議員初の議長職を務めることになります。
彼女は、また、過去3期、連邦下院議会で民主党リーダーを務めていて、これも女性としては初めての快挙だったのですね。
1776年のアメリカ建国から230年、そして、1920年の女性参政権を認める法律制定から80余年、彼女の議長職就任は、アメリカ女性による長い闘争の歴史のクライマックスとも言えるものかもしれませんね。
ナンシーさんには、ちょっと意外なところがあるのです。彼女は、とってもリベラルなサンフランシスコ選出の議員として有名なのですが、実は、出身は、首都ワシントンDC近くのメリーランド州ボルティモア市なのです。
ナンシーさんが6人の子供の末っ子として生まれた頃、お父さんはすでに連邦議員を務めていました。その後、ナンシーさんが小学校から大学へと上がる間は、ボルティモアの市長さんも務めていました。お兄さんも、同市の市長となったほどの政治家一家で、ナンシーさんが政治家になったのは、自然な成り行きだったのかもしれませんね。
けれども、彼女は、政治家二世としてエリートコースを歩んだわけではなくて、夫となるポール・ペローシ氏と大学で出会い、結婚し、彼の出身地であるサンフランシスコで子供を5人も育て、それから本格的に政治の世界に足を踏み入れたのです。
今日の議長就任スピーチでも、ご本人がこう言っていました。「わたしはとってもいい子供たちに恵まれたけれど、みんな、台所からわたしを送り出してくれてありがとう」と。
まあ、ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、ナンシーさんは、お目々がクリクリっとしていて、とっても66歳のレディーにはお見受けしません。だから、昔っから、政界の「プリティー・フェイス(かわい娘ちゃん)」などと呼ばれていたくらいで、こんな実力者になるとは、誰も予想していなかったのでしょうね。
彼女には、もうひとつ意外なことがあります。一般的には、とにかくリベラルで、(同性結婚も認めるような)何でもありのサンフランシスコで選ばれているのだから、ナンシーさんもむちゃくちゃにリベラルな、自由奔放な考えの持ち主に違いないと思われています。
そして、それが、南部や中西部選出の議員仲間からうとまれる原因となっています。「僕たちは、ペローシ氏みたいな急進的な議員とは違うんだ」と。
でも、実際には、ナンシーさんはとっても敬虔なローマ・カトリック教徒で、伝統的な家族の価値観を守り続ける人なのですね。
実は、わたしの大学院時代の恩師が、ナンシーさんと同じボルティモア出身で、彼女のお兄さんとは同級生だったそうです。だから、ナンシーさんのダレサンドロ(D’Alesandro)一族が、いかに信仰深く、密に結びついたイタリア系一家であったかはよく知っていると語っていました。
恩師は、アカデミアの人にしては異色の、ローマ・カトリック、イエズス会の神父さんだった方なのですが、ナンシーさんの従兄弟(いとこ)とは、神学校に一緒に入った仲だとか。多くのイタリア系一家と同じように、ダレサンドロ一族にとって、聖職に就くということは、誉れ高いことだったのでしょうね。
ナンシーさんご自身も、今日のスピーチの中で、「サンフランシスコの守護聖人は、アッシジの聖フランチェスコです」と述べる一幕もありました。
さて、題名になっている「大理石の天井」ですが、これは、ナンシーさんご本人の言葉なんです。
英語で、marble ceiling。
ナンシーさん曰く、「わたしたち(女性)は、とうとう大理石の天井を壊したのです(We have broken the marble ceiling)」。そして、「さえぎるものは、もう何もありません(Only the sky is the limit)」と。
アメリカでは、女性の職場での進出をさえぎる障壁のことを、「ガラスの天井(glass ceiling)」と言います。ガラスの向こう側はちゃんと見えているのに、なかなかその天井を越えられない、そういうところから来ているのでしょうね。
そして、ナンシーさんが「大理石の天井」と表現したのは、きっと、ガラスよりももっと厚い天井、そして立派な議事堂を支える大理石の天井を掛けているのでしょうね。
個人的には、ナンシーさんの議長就任は、とってもいいことだと思っています。それは、女性としての歴史的快挙という意味ばかりではなくて、今後の国のあり方をいい方向に導いてくれそうな気がするからです。
今まで、大統領も連邦上院も下院も、ブッシュ大統領とお仲間である共和党にぎっちりと握られていました。彼らはこれまで、数に物を言わせ、自分たちの好き勝手に国を操ってきたのです。「俺たちが多数派なんだから、俺たちの言う通りにしろ」とでも言わんばかりの一方的な態度で。
けれども、女性の長は違うと思うのです。ふたつの勢力が真っ向から対立している場合も、協力体制をうまく築いていけると思うのです。もともと女性は争いを好みませんから。
それに、心配りがうまくできます。たとえば、こんなエピソードがありました。ナンシーさんの先任議長が、議長職を追われるにあたり、小さな議員部屋にお引越しすることになりました。そのことに不満を抱いていると聞き及び、ナンシーさんは議長就任前に、さっさと彼のために大きな便利な部屋を準備してあげました。
まあ、そんなことは、政策とは何にも関係のない、小さなことではあります。でも、人との関係を築く上では、とっても大事な計らいだと思うのです。
議長就任式でも、こんな一幕がありました。「将来を担う子供たちにも、議長の小槌を触らせたい」と、宣誓を前に、ナンシーさん自身のお孫さんや同僚の子供たちを壇上に招き入れました。そんな子供たちやお花いっぱいの、一味違った就任式となったのでした。
そんな感じで、議会でも物事が潤滑に進んでいけばいいなと願っているところです。
今年、2007年は、女性下院議長が誕生した年となりました。
来年、2008年は、もしかしたら、女性大統領が誕生する年となるのかもしれませんね。
そろそろ、そうなってもいいのに。
追記:冒頭で、アメリカ女性の参政権を認める法律が制定したのは、1920年だと書きました。これは、「アメリカ全土で」という意味で、州によっては、もっと早く女性の参政権が認められています。最初の例は、1869年のワイオミング領土でしたが、その頃ワイオミングは州ではありませんでした。州としての最初は、1893年のコロラド州でした。
それから、意外なことに、参政権は、それまで奴隷として扱われていた黒人男性の方が先に与えられています。1870年に追認された米国憲法修正第15条で、黒人男性の選挙権が正式に定められています。憲法の修正条項なので、アメリカ全土を司る法律ですね。
白人女性の参政権運動は、すでに1840年代には始まっていたのですが(日本の江戸時代ですね)、自分たちの権利主張を優先するのか、それとも黒人男性の参政権を認めさせ、その後、白人女性にも認めさせるのか、活動家の間にも、いろいろと葛藤があったようですね。いつか、そんなドキュメンタリー番組を観たことがあります。
それから、一般的に、女性の職場での障壁は「ガラスの天井(glass ceiling)」と呼ばれますが、有色人種男性の職場での障壁を「コンクリートの天井(concrete ceiling)」と呼ぶ人もいます。
有色人種で女性というと、「二重の足かせ(double burden of gender and racial discrimination)」があるなどとも言われます。
有色人種の女性を表す言葉としては、women of colorというものがありますが、個人的には、とっても嫌いです。今の時代、なんで「(肌の)色」という言葉を使うのかと・・・
う~ん、これから先も、まだまだでしょうか。
いよいよ、新しい年の到来ですね!
みなさまも、何やら心に秘め、この一年を素晴らしいものにしたいなと思っていらっしゃることでしょう。
そう、この「一年の計」のことを、英語では New Year’s resolutions と言います。
「新年の決意」という意味ですね。
New Year は、言わずと知れた「新年」。 そして resolution は、「決意」とか「決心」を表す言葉ですね。
動詞だと resolve という形になりますが、これは、「〜をしようと決意する」という意味になります。
日本にも、「一日の計は朝にあり、一年の計は元旦にあり」ということわざがありますが、アメリカでも同じことなのです。
今まで、やろうやろうと思っていたことが、なかなか実行できていない。だから、元旦を境に、実行に移そうではないか!そう思う人がたくさんいるのですね。
元日には、こんな質問が聞こえてきます。
What’s your New Year’s resolution?「あなたの一年の計は何?」
これには、こういう風に答えます。
I resolved to 〜「わたしは、〜をしようと決心したわ」 (〜は、動詞です)
アメリカでは、人気の高い一年の計に、こんなものがあります。
To spend more time with family and friends (家族や友達ともっと時間を過ごすこと)
アメリカらしく、こんなものもありますね。
To help others (他の人を手助けすること)
勉学半ばにして、学校を辞めてしまった人も多いので、こんなのもあります。
To get a better education (もっと高い教育を身に付けること)
お仕事に疲れている人も多いのでしょうか。こういうのもありますね。
To reduce stress at work (職場でのストレスを減らすこと)
でも、何といっても、ダントツに多いのがこれです。
To lose weight (体重を減らすこと)
ほんとにアメリカ人の肥満にも困ったもので、今となっては、シリアスな社会問題になっています。
太る要因は、あまたなのです。砂糖のたくさん入った色水のような炭酸ソーダ、血管を詰まらせてしまう悪い脂肪いっぱいのファストフード、どこに行っても食べ物屋だらけの街並み。そして、運動不足。
単に、個々人が太り過ぎというだけではなくて、肥満にかかわる健康問題で、医療費もうなぎ上り。社会全体で地道に解決していかなくてはならないのですね。
さて、新年の決意は、自分の習慣に関するものが多いので、こんなのも人気が高いです。
To quit smoking (タバコをやめること)
元日のニュースで、こんな街角インタビューがありました。
This is the last one (これが最後の一本だよ)と言いながら、プハ〜っとテレビカメラに紫煙を吹きかけるお兄さん。
それから、こんなちゃっかり者のお姉さんもいましたね。
I resolved to earn 100,000 dollars, and spend most on myself (わたしは10万ドルを稼いで、ほとんど自分で使ってしまうことにしたわ)
(注:10万ドルは、1千2百万円くらいですね)
でも、この街角インタビューで、一番素敵だなと思ったのは、こちらの熟年レディーでした。
I resolved to still appreciate the people around me (わたしは、まだまだまわりの人たちに感謝していこうと思ったわ)
身近にいる人って、なんとなく空気みたいに、当たり前に思いがちですよね。でも、まわりの人たちこそ、自分にとっては一番大切な人たち。そこのところを、このレディーは痛感しているのでしょうね。
時には、喧嘩もするけれど、一緒に泣いたり、笑ったり。そんなことがずっとできればいいな。そういった決意の表れですね。
元日にふさわしい、すがすがしい一言でした。
追記:ちょっと話はそれてしまいますが、アメリカ人の肥満に関しては、こんな恐い予測もなされているのですね。
2000年にアメリカで生まれた子供の二人に一人は、生涯のうち糖尿病になる可能性がある。
そして、アメリカ史上初めて、子供の代の平均寿命が、親の代を下回るだろうと。
最近は、10歳を向かえる前に、後天性(2型)の糖尿病になる子供もいるし、10歳で大人のような心臓病にかかる子供も出てきているのですね。
これに対し、こんな動きも出てきています。2006年12月、ニューヨーク市では、レストランでトランス脂肪酸(trans fat)を使うことを禁止する法律を可決しました。そして、同様の禁止令は、他の都市にも広まりつつあるようです。
新年を迎え、カフェチェーンのStarbucksも、アメリカの支店で、ドーナッツやマッフィンのトランス脂肪酸使用を禁止するお触れを出しています。
(注:トランス脂肪酸とは、その構造上、体では処理しきれないもので、体内に蓄積し、善玉コレステロールを減らし、悪玉を増やすという型の脂肪だそうです。マーガリンやショートニングにも入っているし、ファストフードや市販のクッキー、ドーナッツ、マッフィン、パイにも入っています。これを入れると、賞味期間が延びるし、口当たりもサクサクっとよく感じるのですね。
それから、アメリカの食品ラベルには、Nutrition Facts(栄養素)という欄がありますが、Total Fat(脂肪合計)の分類には、悪玉のSaturated Fat(飽和脂肪酸)とTrans Fat(トランス脂肪酸)があります。それぞれの含有量がちゃんと明記されているので、お菓子などを買うときは、注意して見てみるといいですね。)
勿論、トランス脂肪酸がすべての悪の根源というわけではありませんが、そこは、食の文化が貧しいアメリカ。口に入れるものを改善する事は、健康な体を作る第一歩かもしれませんね。