アメリカの有名人
エッセイのセクションでご紹介した「マーヴェリックス」のサーフコンテストが開かれたこの週、丘の上では、ゴルフの祭典が開かれています。
プロとアマチュアがペアを組んで参加する、ペブル・ビーチ全米プロアマ(AT&T Pebble Beach National Pro-Am)という大会です。各界の有名人が数多く参加するので、ゴルフをしない人にも広く知られるゴルフの祭典なのです。
このペブル・ビーチ(Pebble Beach)という名は、西海岸を旅された方ならどなたもご存じと思いますが、シリコンバレーから1時間ほど南に下った、太平洋岸の美しい観光名所です。
漁港で栄えたモントレーと、アーティストの街カーメルとの間に、17マイル・ドライブという有料観光道路がありますが、この道沿いにいくつか風光明媚なゴルフコースがあって、そこで毎年開かれるのが、このゴルフ大会です。
今でこそ、電話会社のAT&Tなどという冠が付いていますが、もともとは、アメリカのポピュラーソングの神様ビング・クロスビーが、プロとアマを集めて始めた催しなのです。プロアマゴルフの元祖ですね。
現在は、ペブル・ビーチ・ゴルフリンクス(Pebble Beach Golf Links)、スパイグラス・ヒル・ゴルフコース(Spyglass Hill Golf Course)、そして、ポピー・ヒルズ・ゴルフコース(Poppy Hills Golf Course)という3つのゴルフコースが会場となり、木曜から土曜までは各々のコースを廻り、日曜日にペブル・ビーチで決勝が開かれます。
近くには、スパニッシュ・ベイ(The Links at Spanish Bay)、モントレー・ペニンスラ(Monterey Peninsula Country Club)、サイプレス・ポイント(Cypress Point Club)といった、美しくもタフなゴルフコースもあります(後者2つは由緒あるプライベートコースで、2010年以降はポピー・ヒルズに代わり、モントレー・ペニンスラの海岸コースが全米プロアマの会場となっています)。
大会初日を控えた2月8日の水曜日、プロの練習ラウンドとともに、有名人のお遊びラウンドがありました。これに勝てば、お気に入りのチャリティー団体に、賞金を献金できるのです。毎年、有名な俳優やミュージシャンが参加し、多くのギャラリーを引き連れ、大会を盛り上げます。
今まで一度も見学に行ったことはありませんでしたが、どこからともなくチケットが廻ってきたので、有名人を見てみようじゃないかと出掛けてみました。会場となっているペブル・ビーチではゴルフをやったことがないので、コースを一度見てみたい気持ちもありました。
当日、有名人のイベントは朝11時のスタートなのに、なかなか車を止められる場所がなくて、四苦八苦。あちらこちらをさまよった結果、だいぶ離れた17マイル・ドライブの海沿いに止め、大型バスで会場のペブル・ビーチに連れて行かれます。
ようやくたどり着くと、もう30分も遅れているのに、有名人たちは、まだ第1ホールのグリーン上。なあんだ、あせる必要はなかったんだと安心したものの、このギャラリーの多さには閉口です。とてもプレーなんか見えません。普段はゴルフとは縁のない人たちも集まるのです。
「俺は鳥インフルエンザを持ってるんだぞと言えば、みんなどいてくれるかな」と、隣のおじさんが言っています。
そこで、第1ホールを終えると、2番、3番はすっ飛ばし、お次の17番ホールのスタンドで待機することにしました。お天気もいいし、ゆっくり座って待つことができます。
2月にしては珍しく、ぽかぽか暖かいゴルフ日和なのです。向こうの波間で、ラッコがケルプにくるまって日向ぼっこなんかしています。
何組かプロが通過したあと、ようやくセレブの登場です。例年一番人気の映画俳優、ビル・マーレイが、帽子を取ってスタンドに挨拶します(映画「ロスト・イン・トランスレーション」でお馴染みです)。
彼に続き、映画俳優のサミュエル・L・ジャクソン(「スターウォーズ」のジェダイ役)、ポップグループ’N Syncのジャスティン・ティンバーレイク、ミュージシャンのケニーG、歌手のマイケル・ボルトンとヒューイ・ルイス、俳優・コメディアンのジョージ・ロペスとレイ・ロマノの登場です(最後のふたりは、30分コメディー番組で人気です)。
腕に自信のある人たちが出てくるので、みんななかなかうまいです。でも、17番ホールの小さくて起伏のあるグリーンは、かなり難しそうでした。
お次の18番は、まっすぐに長いパー5。クラブハウスに戻る花道です。フェアウェイの真ん中をキープしていたビル・マーレイは、ここでもファンサービス。
ギャラリーに寄って来ては、サインをしてあげています。すぐそばに来ていたのに、ペンを持っていなかったので、サインはもらえませんでした。こういうイベントに行くときは、必ずペンを持って行きましょう!
ジョージ・ロペスも負けていません。このコースは、ホール沿いにきれいな家がたくさんあるのですが、屋根に登って見学している白人男性たちに向かって、スペイン語で茶々を入れます。
きっと「屋根に登って仕事するのは、僕みたいなラテン系の人間だけだよ」みたいなことを言っていたのかもしれません。すかさず、同行のアナウンサーが、「ジョージ、ここは君のご近所じゃないんだよ」などと、きわどく返します。
この日は、あたりにセレブや有名プロがうようよしているので、結構おもしろい一日でした。みんな画面で見るのと同じ顔をしてますね。
そして、’N Syncのジャスティン・ティンバーレイクは、有名人イベントが終わってからも、ひとりでコースに向かっていました。彼はハンディキャップ6の腕前ですが、1番ホール・グリーン右横の深いバンカーからは、一発では出せなかったですね。
やっぱり、ペブル・ビーチあたりのゴルフコースは、どこもタフなのです。