新春のパレード: 旧正月のお祝い
アメリカでは、お正月(New Year’s Day)を過ぎて、新春に開かれるパレードがいくつかあります。
旧暦で新年を祝う、「旧正月」のパレード。
3月17日の「聖パトリック・デー」のパレード。
そして、「復活祭」のパレード。
旧正月は、Lunar New Year(太陰暦の正月)とか Chinese New Year(中国の正月)と呼ばれていて、中国系、韓国系、ヴェトナム系など、アジア系の方々に広く祝われていますね。
聖パトリック・デー(Saint Patrick’s Day)は、アイルランドの守護聖人パトリックをお祝いする日。今では、「緑色を着て、ビールをたくさん飲む日」として、アメリカでも楽しく祝われています。
そして、復活祭(Easter、イースター)は、イエス・キリストの復活をお祝いする、キリスト教徒にとっては大事な祭日。今年は、3月27日でした。
世界各地から人が集まるサンフランシスコ・ベイエリアでは、どれも大事な一日ですが、とくに中国系の多いサンフランシスコ市では、「旧正月のパレード」は、一大イベントとなっています。
サンフランシスコの中華街は、19世紀中ごろにできた古い一角で、たぶん、アジア大陸を除くと、世界で最大規模なんでしょう。
ですから、1860年から開かれている由緒あるパレードは、規模と迫力でも他に引けを取らず、アメリカじゅうから観光客が見物にやって来ます。
今年は、2月8日が旧正月でしたが、パレードが開かれたのは、2月20日の土曜日。いつも2週間くらいあとに開かれるのです。
例年、雨にたたられることが多いですが、今年はカラリと晴天。空には、満月も昇ります。
パレードの出発は、サンフランシスコのメインストリート、マーケット通り(Market Street)。
海沿いのあたりからスタートしたパレードはまっすぐ進み、そこから、お買い物エリアで有名なユニオンスクエア(Union Square)をクルッと回り、まっすぐ北へと中華街(Chinatown)に向かって進んで行きます。
沿道は長いので、どこで見ても大丈夫だと思いますが、ユニオンスクエアのまわりは、チケットを買って座席で見られます。テレビの生中継もここから放映しますので、絶好のスポットかもしれません。
やっぱり中国系のお祭りですから、獅子舞や龍踊り、少林寺拳法のデモンストレーションと、「見せる」パフォーマンスが多い。ですから、テレビが中継している場所では、演技にもいっそう熱がこもるようです。
実は、わたし自身は、旧正月のパレードを見に行ったのは、今回が初めて。
マサチューセッツ州ご出身のお隣さんは、以前は毎年のように見に行ったそうですが、わたしは要領がわからないので、とりあえず、マーケット通りの出発点に近い場所で見学することにしました。
パレードが始まる5時過ぎには、まだまだ人も少なかったのですが、6時近くになると、だんだんと混んできて、背伸びをしながら写真を撮ることもしばしば。
自分の子供が参加するお母さんなどは、「きゃー、こっちよ~!」と人を押しのけんばかりにスマートフォンでビデオを撮り、子供が行ってしまうと「もう、いいわ」とさっさと引き下がります。
けれども、そんな「混み具合」や「耳元の歓声」というのも、賑やかさ、華やかさのひとつかもしれません。
パレードは、最初のうちは、政治家、警察、消防署、州のハイウェイパトロール隊と、コミュニティーを代表する方々が登場し、みなさんの拍手喝さいを受けます。
お巡りさんは、自分たちのロゴをシールにして子供たちに配り人気者でしたが、おかしかったのは、政治家の方々。
サンフランシスコの市長さん、エド・リー市長をはじめとして、州選出の連邦下院議員、州議会、サンフランシスコ市議会の議員さんたちがオープンカーで目の前を通り過ぎるのですが、まあ、多くの方々にとって、政治家の顔と名前が一致しない。
ですから、「We love you~(愛してますよ~、応援してますよ~)」と叫びながら、「I don’t know who that was(あの人が誰だったか知らないよ)」と、まわりの人たちに白状するのです。
そう、We love you~! とは、まったく「からかい」のメッセージなんですよね。
そして、代表者の方々が行ってしまうと、いよいよ鼓笛隊や大きなフロート(山車)が出てきて、パレードも本番となります。
ここで驚いたのは、中国系の学校が多かったこと。そう、パレードは、学校単位、企業単位で出場するグループが多いのですが、ちびっこの幼稚園児から、中学生、高校生と、中華学校の名前がたくさん目につきました。
そういえば、わたしの知人も、中国とは縁もゆかりもないのに、中国語と英語のバイリンガルの学校に子供を通わせているとおっしゃっていました。
もちろん、中国語はゼロから始めるので、最初のうちはまったくわからないのですが、そのうちに慣れてきて、だんだんと中国語の比重が高くなっているとか。
中学生くらいになると、ほとんどの授業が中国語だけになるようだ、とおっしゃっていましたが、学校の外では母国語の英語になるので、人工的に外国語の環境をつくってあげよう、ということでしょうか。
ですから、パレードに参加する「ちびっこ」たちも、中国系やインド系や白人や黒人と、いろんな肌の色が混じっていて、「ほんとに国際的だなぁ」と感心したのでした。
というわけで、午後8時に終わると書いてあったパレードですが、まあ、そんな8時にきっかりと終わるわけはありません。
だって、8時を過ぎてスタート地点に行ってみると、まだまだたくさんのフロートが待機中!
「いったいいつ出発かなぁ?」と、地べたに座ったり、楽器や踊りの練習をしたりして待っています。ですから、お腹も空いてくるし、間もなく、その場を離れたのでした。
それから、サンフランシスコの中華街では、旧正月の前の週末に「フラワーフェア」、そして、パレードの週末には「ストリートフェア」が開かれます。
中華街の路上で開かれるイベントですが、「フラワーフェア」は、花やご馳走の材料を買って、お正月の準備をするためのもの。
そして、「ストリートフェア」は、パレードとともに旧正月を楽しく過ごすためのものです。
最後の6枚は、「ストリートフェア」で撮影したものでした。