Turin? Torino? (トゥリン?トリノ?)
現在開催中の冬季オリンピック。実は、アメリカでは、開催場所がそう単純ではないのです。
イタリア語では Torino(トリーノ)、日本語では トリノ。でも、なぜか英語では Turin(トゥリン)というからです。
どうしたわけか、英語では外国の地名を勝手に変更して呼ぶ場合が多く、イタリアのような英語圏外の地名は、混乱を招く結果となるのです。
今までトリノをトゥリンと呼んでいたにもかかわらず、今回のオリンピックでは、放映権を持つNBCが、Torino Olympics(トリノオリンピック)などと言い始めたからさあ大変!
トリノってどこだぁ?とみんな首をかしげます。
そこで、ニュース番組は、懇切丁寧にこう解説します。英語とイタリア語には呼び方の違いがあって、Torino(トリノ)は Turin(トゥリン)のことだよ。そして、Milano(ミラノ)は Milan(ミラン)のことで、Venezia(ヴェネツィア)は Venice(ヴェニース)のことなんだよと。
この他に、イタリアの地名でまぎらわしい所では、Firenze(フィレンツェ)の英語読み Florence(フローレンス)、Roma(ローマ)の Rome(ロウム)、Napoli(ナポリ)の Naples(ネイプルス)があります。
せっかくテレビでは、「トリーノ」と一貫して呼んでいるのに、なぜか新聞では、あくまでも「トゥリン」を貫きます。う~ん、アメリカ人が余計に混乱するのに・・・。
ちなみに、トリノは、キリストのものと伝えられる聖骸布(せいがいふ)“the Shroud of Turin” で有名な所ですね。だから、地理のあまり得意でないアメリカ人も、トゥリンという名は結構よく知っているのです(この聖骸布は、トリノの洗礼者聖ヨハネ大聖堂、通称ドゥオモに保存されているそうです)。
まあ、英語に限らず、外国語の言葉をへんてこりんに母国語に変換することはよくあることですね。
たとえば、日本語の「(車の)ハンドル」やら「バックミラー」なんて、もとは英語かなと思いますが、実は、英語ではないのですね(少なくとも、米語ではありませんよ)。
米語では、車のハンドルは steering wheel、バックミラーは rearview mirror と言います。
名詞 handle(ハンドル)とは、引き出しの取っ手のことですね。丸型の取っ手は、knob(ノブ)と言います。
動詞の handle は、何かを扱うとか、問題解決するという意味ですね。
チャットやブログの「ハンドルネーム」というのは、きっと名詞 handle の「肩書き、名前」の意味から来ているのでしょう。
この前、日本からアメリカに帰る飛行機で、機内誌を読んでいました。その中に、英語のネイティヴスピーカーによる日本語解説が載っていて、思わず笑ってしまったものがありました。
日本という国は、なんでも短縮するのがお好きならしい。たとえば、presentation(プレゼンテーション)は presen(プレゼン)、inflation(インフレーション)や deflation(ディフレーション)は、infre(インフレ)defre(デフレ)と言う。
同じく、percent(パーセント)は per(パー)。これは、日本語の発音では paa と言うのだが、実はこの言葉には、empty-headed(おバカさん)の意味もあるのだ。
これには思わず吹き出してしまったので、キャビンアテンダントのお姉さんが、用事かなと思ってわざわざ振り返ってくれました。ごめんなさい。(ANAの機内誌「翼の王国 Wingspan」2006年1月号に掲載されたお話でした。)