I’m not comfortable (なんかイヤ!)
まずは、ちょっとしたお話です。
以前、アメリカでは、電話を使った商法(テレマーケティング)が盛んに行われていて、本当に迷惑なものでした。夕食時にじゃんじゃんかかってくるのです。
業を煮やした連邦議会が、妙案 Do-not-call list(「私に電話しないでちょうだい」という人のリスト)を思いつき、それ以来、迷惑な押し売り電話は姿を消し去り、平和な毎日がやってきました。
ところが、このリストには例外があって、加入している電話会社やケーブルテレビ会社、そして、慈善団体や政治団体は、勝手に電話をしてもいいようになっているのです。
そんなこんなで、我が家は Do-not-call リストに入ってはいるものの、電話がかかってもすぐには出ません。友達が留守番メッセージを残し始めると、ようやく受話器を取るのです。
実は、そうしているアメリカ人は結構多いのですね。
(ちなみに、「電話に出る」は、answer the phone と言います。電話や玄関の呼び鈴が鳴ると、I’ll get it「私が出るわ」とも言ったりします。こちらが電話していて、相手が居留守を使っているなとわかっている場合は、留守録中に、Pick up the phone!「電話に出てよ!」と訴えます。)
いつもはすぐに出ない電話なのに、ある日、間違って受話器を取ってしまったことがありました。
相手は、カリフォルニアの警察官協会と名乗ります。非行に走りそうな子供たちに手を差し伸べたり、車のシートベルトをきちんと締めるように一般市民に促したりと、いろんな有益な活動をしているので、ぜひ金銭的援助をしてほしいと言うのです。
本当に警察官の組織なのか電話ではわかりませんし、第一どうやって我が家の電話番号を手に入れたのか、ちょっと不信感も湧きます。
聞いてみると、どうやら本物の組織ではあるようですが、番号の方はコンピュータで無作為に発生させ、片っ端からかけているようです。
そして、我が家の苗字から検索したあちらの住所のデータは、まったく別人のものでした(同姓の日系人の住所なのかもしれません)。
それでも、まあ、世のため人のためと、若干の寄付をすることにいたしました。
けれども、お金の徴収係が代わって出てきた途端、状況は一転します。
請求書を待って小切手を書くとこちらが言っているのに、「クレジットカードじゃなきゃ困るんだ。郵送となると、2、3日かかるからねぇ。いますぐ払ってくれた方が助かるんだよ」などと言うのです。
この失敬な応答に、こんな言葉が、自然と口をついて出てきました。I’m not comfortable doing this.
(「私は心地よく感じていない」という意味ですね。最後の doing this は、寄付をするという一連の行為を指します。だから、「こんなことするのイヤよ」みたいな意味なのです。)
それでも、なおかつ、あちらは「わかった、わかった。だったら請求書を郵送してあげるから」などと言っているので、こちらは完全にへそを曲げ、こうまくしたてました。
I don’t like this condescending way of doing things. You don’t even have my correct address, and you are just calling up computer-generated numbers. I’m not comfortable doing this at all. So I’m hanging up.
(「こんな恩着せがましいやり方ってイヤなんです。あなたたちは私のちゃんとした住所だって持ってないし、ただコンピュータで発生させた番号にかけてるだけなんでしょ。いい気持ちしないから、もう電話切っちゃいます」。最初の文章の condescending という形容詞は、なんとなく偉ぶった、相手を小バカにしたような、恩着せがましいようなことを指します。)
結局、あちらは根負けして、OK, OK, you have a nice day「わかったよ、じゃあよい一日を」みたいなことを言っていました。が、わたしは、最後まで聞かずに電話を切ってしまいました。
(電話の場合、しつこい相手に対し、「もう電話切りますよ」と宣言するのはいい手ですね。I’m really busy right now, so I’m hanging up「今すごく忙しいから、電話切っちゃいますよ」とか、I can’t talk right now, so I have to hang up「今話せないから、電話切らなくちゃいけないの」とでも言えばいいですね。)
断っておきたいのですが、いつもは人に対してこんな失礼な対応はいたしません。けれども、もし嫌なことをさせられそうな場面に遭遇したら、「嫌なものはイヤ!」と、はっきり意思表示する強さも必要ですね。
I’m not comfortable と言われれば、たいていのアメリカ人は、無理強いはしません。けれども、例外に遭遇したときは、毅然とした態度でノーと言うことも大切なのです。
追記:冒頭に出てきた、アメリカの Do-not-call list ですが、この制度に興味のある方は、こちらへどうぞ。
最初の「憎まれっ子、テレマーケター」というお話で、2003年10月に始まった Do-not-call リストの新制度をご説明しております。文中にある裁判沙汰は、今は一応おさまっているようなのですが・・・。