Did you mean 〜? (もしかして、〜ってこと?)
何がって、アメリカに住んでいると、だんだんと単語のスペルがあやふやになってくるんです。
以前はちゃんとわかっていたのに、いつの間にか「i」と「e」の順番がわからなくなったり、「s」と「z」のどちらを使うのかわからなくなったりと、自分でも情けなくなってしまうくらいです。
この前も、「びっくりしちゃったのよ」とメールに書きたくて、I was surprised なのか、I was surprized なのか、迷ってしまったことがありました(もちろん、「s」を使った「surprised」の方が正しいものですね)。
それから、グーグルで英語の単語を検索していても、画面のトップにこう出てくることがあるんです。
Did you mean 〜 ?(もしかして、こっちの単語のこと?)
先日は、この単語でやられましたよ。 「euphemism」
この euphemism という言葉は、「婉曲(えんきょく)語」、つまり、「遠回しな言い方」という意味ですが、はっきり言及するとあまり好ましくないので、わざと遠回しに表現することですね。
この単語の発音は、「ユーファミズム」にも「ユーフォミズム」にも聞こえるので、わたしはてっきり「o」を使った「euphomism」かと思ってしまいました。
すると、グーグルさんからは、
Did you mean euphemism? と、すかさず返ってきました。情けない・・・
ご参考までに、この euphemism の例としては、たとえば、「黒人、black people」という言葉を避け、「アフリカ系アメリカ人、African American」という表現を使うことが挙げられるでしょうか。まあ、生物学的に言うと、人種の分類は Black で正しいのですが、社会的には、肌の色がどうのこうのと言うのは好ましくないということで、婉曲語である African American を使うようになったわけですね。
他には、「ハンディキャップのある、handicapped」という言葉を避け、「身体的にチャレンジのある、physically challenged」といったややこしい表現を使うことなどもあります。
ここだけの話ですが、アメリカ人ってスペルがあやふやなことで有名なんですよね。それは多分、耳から入った音をそのまま綴(つづ)ってみようとするからなんでしょうけれど、こっちまでスペルがわからなくなるなんて、「フフッ、わたしってアメリカ人みたい?」とちょっと嬉しいやら、「昔はちゃんとわかっていたのに・・・」と情けないやらで、複雑な気持ちになってしまいます。
アメリカ人にかかると、ほんとにスペルのいい加減なこと。「そんな面倒くさいことよりも、言いたいことを早く書きたいのよ!」と言わんばかり。
メールやパソコンで書いた文書なんかだと、まだ「スペルチェック」の機能があるからいいけれど、オークションサイトが流行り始めた頃なんかは、「自分で売りに出すものくらい、ちゃんとスペルをチェックしたら?」といったコメントがよく聞こえていましたね。
手持ちのアクセサリーを売りに出すときなんかは、もう大変。真珠を売りに出したいのに、「pearl」でなく「perl」と書いたり、ダイヤモンドのつもりが「diamond」でなく「dimond」となったり。
おしゃれなシャンデリア・イヤリング(凝った彫金のボリュームのあるイヤリング)なんて、きっと誰も正しくは書けないでしょうね。
だって、シャンデリアは「chandelier」と書くんですものね!(かく言うわたしも、ちゃんと辞書で調べました。)
こんなすごいのもあるんですよ。
アメリカで人気のサラダに Caesar salad (シーザー・サラダ)というのがありますよね。レタスにクルトンをのっけて、こってりとしたクリーミーなドレッシングで和えてあるサラダ。上にパルメザンチーズやグリルしたチキンものっかったりして、アメリカの料理にしては、なかなかおいしいものなのです。
ところが、あるピザ屋さんのメニューにこんなものが出現。
Seizure salad!
いえね、seizure というのは、「(病気の)発作」とか「(財産の)差し押さえ」という意味なんですよ。発音は「シージャー」というのですが、いかに「シーザー」に似ているからって、「発作サラダ」とは!
それから、もっとすごいのもありました。
以前、「Self-conscious(自意識)」というお話で、「self 〜」という単語の特集をいたしましたが、その中に self-deprecating というのがありました。ちょっと難しい表現ですが、「自分を卑下する」とか「謙遜する」という意味でしたね。
この self-deprecating が、こともあろうに、self-defecating となっていたのです。
あの〜、大変言い難いのですが、defecate という動詞は、排便することなんです。
実は、これは、れっきとした新聞記事の間違いなのでした。あるミュージシャンがコンサートでいろんな体験談を語ってくれたんだけれど、それは決して威張るものではなく、謙遜した、好感の持てる物言いでしたと、非常にいい内容(になるはず)だったのです・・・
ちなみに、この二つの例は、9月29日放映のNBCの深夜コメディー番組 『ジェイ・レノー・ショー(The Tonight’s Show with Jay Leno)』 から引用させていただきました。この番組では、「ヘッドライン(Headlines)」と称するコーナーがあって、全米のおもしろい新聞記事やら、変てこな製品やレストランの珍メニューを紹介する場となっています。ここで紹介するものは全部、視聴者が投稿した本物なんです!
写真では、右がジェイ・レノーさん、左がコメディアン仲間でトークショー番組のホスト仲間でもあるエレン・ディジェネラスさんです。
もう、大人ですら(新聞記者ですら)こうなのですから、子供になると、もっとスペルはあやふやになってしまいますよね。
新聞に毎日掲載されている4コマ漫画で、わたしがいつも楽しみにしている 『Secret Asian Man(神秘のアジア人)』 というのがあるのですが、先日、こんなおもしろいものを発見しました。
(by Tak Toyoshima、posted in San Jose Mercury News on 9/15/’08)
子供:「ママ、見てっ。僕、字を書いたんだよ!」
(Look, Mama. I wrote words !)
ママ:「これはすごいわ! サム、これを見てちょうだい!」
(This is awesome! Sam, take a look at this !)
そこで、パパであるサムは書かれた文字を見る。そこには、変てこな文字の羅列が・・・
パパ:「自分の名前をミススペルしているからって、会社を訴えることはできるのかな?」
(Can we sue companies for misspelling their own names?)
たしかに、アメリカでは、「Snak pak」だの「Quik Mart」だのと、わざと変なスペルにしてある店名や商品名が多いのは事実ですね(言うまでもなく、本来は Snack pack とか Quick Mart とすべきですね)。
まあ、そんなものを見ながら育っていると、そのうちに何が本物だかわからなくなってくることでしょう。