Cold season (風邪のシーズン)
9月中旬、シリコンバレーはまだまだ暖かいというのに、風邪をひいてしまいました。ご近所さんのディナーにお呼ばれして、そこで人にうつされてしまったのです。
近頃、自家製ヨーグルトを毎朝食べるようになって、とんと風邪などひいていなかったのですが、よっぽど風邪のバイキンが強かったのでしょう。それとも、やはり風邪をひいている人と数時間もお話ししていたのがいけなかったのでしょうか。話しているときは、とっても楽しかったのに。
こちらシリコンバレーでは、9月に入ってもう風邪が流行っていて、鼻はズルズル(runny nose)、咳はゴホゴホ(cough)、そして熱を出して(run a fever)、体のあちこちが痛む(muscle aches)人もたくさんいるようです。今回の風邪はしつこくて、なかなか治らないという噂も耳にします。
わたしの場合は、鼻がズルズルするわりに、夜になると鼻がつまって(stuffy nose、もしくは nasal congestion)よく眠れないのです。それに、咳は出ないかわりに、喉が痛くて(sore throat)、痰(mucus)がひどかったですね。
結局、風邪で2日間は寝込んでしまったのですが、そんな中、タイミング悪く目医者さん(optometrist)の予約が入っていたのでした。コンタクトレンズを使っている人間の宿命でしょうか、毎年一回、目の検査をしてもらって、一年分のコンタクトレンズを買ったり、眼鏡を新調したりするのです。(ちなみに、目の病気になって、手術をするとなると、こちらのoptometrist ではなく、ophthalmologist に会いに行くことになりますね。)
そこで、予約をずらしてもらえないかと目医者さんのオフィスに電話をしたのですが、ここでちょっとびっくりすることがあったんです。
風邪で具合が悪いことを説明したあと、第一、まだ人に病気をうつす恐れがあるから、無理にそちらに行かない方がいいですと言ってみたのです。そう、こんな風に
I’m still contagious, so I don’t want to spread the cold virus to other people.
(ひとつ目の句に出てくる形容詞 contagious は、「伝染する病気を人に感染させる」という意味で、I’m still contagious というと「わたしはいまだに、人に病気をうつす感染性がある」ということです。ふたつ目の句の the cold virus というのは、風邪のウイルスのことで、句全体は「わたしは他の人に風邪のウイルスを広めたくない」という意味になりますね。)
すると、相手はこれに驚いてしまったのです。そんなに気配りをする人はいませんよと。
なんでも、普通はこうやって電話をかけてくるそうです。「今、風邪をひいて会社を休んでいるから、この絶好の機会に目医者さんに会いたいんだけど」と。
けれども、そう言われたら、いい気はしないのが人情でしょう。「わたしたちはいったいどうなるのよ?(What about us ?)といつも思ってしまうわ」と、相手の方はおっしゃっていました。
そこで思ったのです。目医者さんのオフィスに勤めるのも命がけだなって。健康な人なら、べつに風邪くらいで死んだりはしないでしょうけれど、それでも、患者さんにうつされたり、自分の家族にうつしたりと、何らかの迷惑を被る事は確かですよね。(現に、後日、目医者さんのオフィスに行くと、スタッフのひとりが風邪をひいていて、息子にもうつしてしまったと言っていました。)
どうしてみんな基本的な気配りができないのかなぁ?
まあ、アメリカでは、よく問題になるんですよね。風邪(the common cold)やインフルエンザ(flu)をひいているのに、会社や学校に無理矢理出てくる人が多いことが。それって、人にうつすことを何とも感じていないのでしょうか、それとも、仕事や学業を休んで遅れを取ることが何よりも恐いのでしょうか?
確かに、アメリカ人は、世界でも一番「働け、働け」というプレッシャーが強い国民ではないかと思うのですよ。「生産性(productivity)」の虜(とりこ)になって、自分のアウトプットが常に気になる宿命を背負った、余裕のない国民・・・
おっと、またまた話が逸れてしまいましたが、題名になっている cold season 。表題の部分にも書かれているとおり、「風邪のシーズン」という意味ですね。
そして、この言葉を聞くと、いつも自分自身のおもしろい体験を思い出してしまうのです。
10月に入ったある日、オフィスで同僚と話していて、「もうすぐ寒い季節になるねぇ」と言いたいことがありました。四季のはっきりしないシリコンバレーにも、ひんやりとした秋風が立ち始めた頃でしたから。
そんな風流な気持ちを持ちながら、わたしは、It’ll be cold season very soon と言ってみたのです。
すると、どうも相手は大きく勘違いしたようで、いきなり、風邪の話を始めたのです。風邪をひくと、熱が出たり、咳が出たりとイヤだよねぇと。
そう、ここでの教訓は、cold season と言うと、気候のことばかりではないということなのです。
もちろん、寒い季節のことを cold season と表現することもあるようです。たとえば、Gear up for the cold season と言うと、「寒い季節に向けて準備しなさい」という意味になりますね。
けれども、やはり勘違いする人がいるということを考えると、cold season の代わりに、cold weather(寒い天気)とか、cold winter months(寒い冬の時期)とか、違った表現を使うべきだったのでしょう。
たとえば、こんな風に。
The weather gets cold pretty soon.
(気候はもうすぐ寒くなりますね。)
We’re expecting cold winter months ahead.
(これから寒い冬の季節がやって来ますね。「winter months」は直訳すると「冬の月間」ということですが、日本語では「時期」とか「季節」の方が適切ですよね。)
単に「冬」という表現だけでもいいかもしれません。
The winter is definitely on the way.
(冬は確実に近づいています。「on the way」というのは、「途中にある」という意味ですね。こちらの文章は、ハリー・ポッターの映画に出てきた表現でした。)
それから、もっとはっきりと区別を付けるために、「風邪の季節」という意味の cold season を使うときは、cold and flu season、つまり「風邪とインフルエンザのシーズン」と具体的に言ってみてもいいのかもしれません。
This year’s cold and flu season may be longer than usual.
(今年の風邪とインフルエンザのシーズンは、いつもよりも長いかもしれません。)
So make sure you get a flu shot.
(だから、ちゃんとインフルエンザの予防接種を受けてくださいね。「a flu shot」というのは、インフルエンザの予防接種のことですね。)
ちなみに、インフルエンザは influenza と言うこともありますが、一般的には flu の方が広く使われています。
今問題になっている「鳥インフルエンザ」も、アメリカでは bird flu と言います。
そうそう、ちょうど今朝の新聞に、こんなにかわいい4コマ漫画が載っていました。スヌーピーやチャーリー・ブラウンの仲間たちが出てくる「Peanuts」シリーズです。
作者のチャールズ・シュルツ氏は、すでに8年前にお亡くなりになっていますが、今でも毎日、彼の昔の作品が新聞に登場しています。きっと、よほど人気が高いのでしょうね。
(Printed in San Jose Mercury News on 10/7/’08, originally published on 10/10/’61)
ルーシー: 「よしっ、今よ、咳をしてみて!」
(All right, now cough !)
ライナス: 「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」
(Cough ! Cough ! Cough !)
ルーシー: ドンドンと地べたを踏み鳴らす
(Stomp ! Stomp ! Stomp ! Stomp !)
ルーシー: 「もう二度と誰も苦しめられない風邪のバイキンの群れがここにいるわ!」
(There’s a batch of cold germs that will never bother anyone again !)
ルーシーちゃんは、風邪のバイキン(cold germs)は踏んづけると死ぬと思っているので、風邪をひいたライナスくんに咳をしてもらったんですね。そこをドシドシと踏んづけて、バイキンの群れをすっかりやっつけてしまったぞと、大満足。
この cold germs の germs というのは、「バイキン」という意味ですが、まだ子供のルーシーちゃんには、風邪のウイルスなんていう専門的なことはわからないので、「バイキンくん」になっちゃうんですね。
なんでも、ウイルスが発見されたのは1899年の事だったそうですから、それまでは、子供でなくとも、ルーシーちゃんと同じノリだったんでしょうね!