Upside down (逆さま)
「上部」を表す upside と、「下向き」を表す down がつながった言葉です。
「上の部分が下向きになっている」ということですが、この upside down 全体で「逆さまになっている」という形容詞になります。
ハイフンでつなげて upside-down と書く場合もあるようですが、ハイフンが無い方が一般的なようではあります。
それで、何が逆さまになっていたかと言うと、こちらの箱。
ヴァレンタインデーを控えて、前日の土曜日に配達された箱です。出張中の連れ合いが手配してくれました。
配達屋さんは扉の前に箱を置いて行ったのですが、ふと見ると、底の部分に何やらゴチャゴチャと書いてあります。
If you can read this, then either you’re under this box, or the box is upside down and the Bear inside is getting a headache!
「もしこれが読めるんでしたら、それは、あなたがこの箱の下にいるか、それとも箱が逆さまになっていて、中にいるクマちゃん(the Bear)が頭痛を起こしているのです!」
どうやら、箱の中にはクマちゃんが入っていて、箱が上下逆さになっているために、頭に血が上ってクマちゃんが頭痛を起こしているよ、という警戒宣言なのです。
もちろん、クマちゃんとは、ぬいぐるみのことです。生きているわけではありません。
それでも、送り手の方たちは、クマちゃんのことをとても大事に思っていて、送っている間にも窒息しないようにって、箱には空気穴(air hole)まで付けてあるのです。
東海岸のヴァーモント州(Vermont)からカリフォルニアへの長い道中も、さぞかし楽に呼吸ができたことでしょう。
そんな細かい芸当に、思わず笑みを浮かべたのと同時に感心してしまったわけですが、こちらが、その噂のクマちゃん。
芸が細かいのはクマちゃん自身も同じことで、腕と足が関節部分からちゃんと動くようになっています。それに、白いTシャツとデニムのオーバーオールも粋に着こなしているのです。
そして、やはりヴァレンタインデーだからと、手には赤いバラの花束を持っています。
もうひとつ膝にかかえている入れ物は、バラの香りのするピンク色のソープ(石鹼)。バラの花びらみたいに、薄くデリケートにできています。
ソープと一緒に、クマちゃんの顔のチョコレートも入っていました。
どうやら、このお店のトレードマークのチョコのようですが、顔が付いているので、ちょっと食べるのに躊躇してしまいますね。
さて、それでは、英語のお話に戻りましょうか。
表題の upside down と似たような言葉を、いくつかご紹介しておくことにいたしましょう。
まずは、inside out。
こちらは内側(inside)が外側(out)になっているという状態で、つまり「裏返しになっている」という意味です。たとえば、このように使いますね。
Wash your jeans inside out.
「ジーンズは裏返しにして洗いなさい」
この inside out には、know ~ inside out という慣用句もあるようです。
「~に関して(内側から外側まで)徹底的によく知っている」という意味になります。たとえば、このように使います。
He knows the system inside out.
「彼は、そのシステムのことはとてもよく知っている」
それから、front and center。
こちらは、「前」の front と、「真ん中」の center が一緒になって、「最も目立った場所」という意味があります。
たとえば、劇場の座席などは、前の方の真ん中が一番良く観えるので、値段だって一番高いですよね。きっと案内されるときには、こう言われることでしょう。
Your seats are front and center.
「あなたたちの座席はとっても良い場所よ」
どうやら、こちらは軍隊から派生した言葉のようで、一列に並んだ兵隊の中から一人を呼び出し、前の真ん中(つまり目立ったところ)にいる伍長や軍曹の前に立たせることを指していたそうです。
(参考ウェブサイト: www.phrases.org.uk)
何となく怒られそうで、ありがたくない雰囲気ではありますが、「目立つ場所」だから「卓越した」という比喩的な意味もあるのです。たとえば、こんな使い方がありますね。
You couldn’t miss John. He was front and center in that presentation.
「ジョンが(どの人だったかって)わからないわけないよ。あのプレゼンテーションでは目立っていたからねぇ」(出典: www.yourdictionary.com)
さて、「前」の front が出てきたところで、「後ろ」の back にいきましょう。
この前置詞には、慣用句がたくさんありますが、たとえば、back and forth。
「後ろへ向かって(back)」それから「前へ向かって(forth)」、つまり「行ったり来たり」という意味です。
文字通り、振り子が右へ左へと動くようなことも指します。たとえば、こんな風に。
The pendulum swung back and forth for a while.
「その振り子は、しばらくの間、右へ左へと揺れていた」
それから、比喩的に、二つの選択肢の間を行ったり来たりして、なかなか決心がつかないような様子も指します。たとえば、このように使います。
I went back and forth between wanting to do it and not wanting to do it.
「わたしは、やりたい気持ちとやりたくない気持ちで迷っていたわ」
ここで使われている通り、go back and forth between A and B という慣用句で、「AとBの間で行ったり来たりして迷う」という意味がありますね。
ところで、最初に出てきたクマちゃんですが、どうやら彼は、ヴァーモント州の老舗の作のようです。
その名もずばり、The Vermont Teddy Bear Company。
(Teddy Bearとは、ぬいぐるみのクマちゃんの総称ですね。つまり、ごくシンプルに「ヴァーモントのクマちゃんの会社」!)
「ヴァーモント州にお越しの際は、ぜひ工場を見学して行ってください」と、箱にも書いてありました。
If you are ever in Vermont, come visit our factory at 6655 Shelburne Road in Shelburne, Vermont USA.
調べてみると、このシェルバーン(Shelburne)という街は、人口7千人ほどの小さな街だそうです。ニューヨークとヴァーモントの州境に沿うシャンプレイン湖(Lake Champlain)の湖畔にあります。
なんでも、この小さな街では、シェルバーン美術館と農場に並んで、クマちゃん工場は三大観光スポットとなっているそうです。
近頃は、ショッピングモールに行くと、Build A Bear(クマちゃんを作ろう)というコーナーがあって、自分のオリジナルクマちゃんを作ったりできるそうなのですが、こちらのメーカーでも、お誕生日に、出産祝いに、入院見舞いにと、いろんなタイプのクマちゃんを勢揃いさせているそうですよ。
やはり、クマちゃんは、人間にとって永遠の友なのです!