Language Services(言語のアシスタントサービス)
前回は、「Official Language(公用語)」と題して、アメリカで使われる言語のお話をいたしました。
アメリカの国全体では、英語は、あくまでも事実上の公用語(de facto official language)であるけれども、州によっては、カリフォルニアのように英語を公用語と定めている場所もありますよ、というお話でした。
この中で、カリフォルニアのように英語を公用語とした州であっても、なかなか複雑な事情があることもご紹介いたしました。
たとえば、カリフォルニアの各都市では、英語とともに他の言語を公用語のひとつに定めていたり、選挙のときには、選挙案内や投票用紙を外国語で印刷したりと、国外からやって来た住民が困らないようにと、言語の面でさまざまな配慮がなされているのでした。
そして、このお話を書いた直後に、こんなお手紙が舞い込みました。
わたしがお世話になっている病院システムからの案内なのですが、何やら、ずらっと外国語の文章が並んでいます。
内容はごくシンプルで、「言葉のアシスタントサービスを受けるのは無料です」というもの。
No Cost Language Services. You can get an interpreter. You can get documents read to you and some sent to you in your language.
(無料の言語サービス。あなたは、通訳の助けを借りることができます。そして、書類をあなた自身の言葉で読んでもらったり、一部の書類を自国語で受け取ったりすることができます。)
最後に「もし言語の助けが必要だったら、この番号に電話してください」という案内が付け加えられているのですが、とにかく、医療サービスを受ける上で、真っ先に困るのが言葉。
ただでさえ医療用語は難しいのに、慣れない外国語で診療を受ける場合はなおさらです。
そんなわけで、自分たちはちゃんと言語のアシスタントサービスを提供しているので、困ったときには遠慮せずに連絡してくださいと、病院が助け舟を出しているのです。
まず、トップにある文面は、英語とスペイン語(Spanish)、それから中国語(Chinese)の3カ国語で書かれていますが、あとには、こんな言語が続いています。
ヴェトナム語(Vietnamese)
韓国語(Korean)
タガログ語(Tagalog、フィリピンの言葉)
アルメニア語(Armenian、おもにアルメニア共和国)
ロシア語(Russian)
わたしはヴェトナム系住民の多いサンノゼ市に住んでいるので、ヴェトナム語の字面(じづら)は見慣れていますが、それにしても、チョンチョンと「ひげ」の多い言語ですよね!(まったく暗号の羅列にしか見えません。)
ロシア語の次には、ちゃんと日本語(Japanese)も出てきます。
「日本語で通訳をご提供し、書類をお読みします」と、素っ気なく書いてあります。
そして、日本語のあとに続くのは、こんな言語となっています。
ペルシャ語(Persian、おもにイラン)
パンジャビ語(Punjabi、インドの一部)
クメール語(Khmer、カンボジア)
アラビア語(Arabic、アラブ諸国)
モン語(Hmong、ラオス、タイなど)
それぞれの表記には独特なものがあって、たとえばパンジャビ語やクメール語は、わたしには絵文字にしか見えません。(いやぁ、こんな言語をどうやって読むのでしょうか?)
それから、アラビア語もペルシャ語も右から書く言語だと思いますが、電話番号は左から書いてあって、なかなか複雑な読み方をしなければいけませんね。
お手紙ばかりではなく、新年早々、わたしが病院に入院したときにも、似たようなポスターを見かけたのでした。
こちらは、上の案内ほど言語の数は多くなかったですが、「もし通訳が必要な場合は、このポスターにある自国語の部分を指差してください」と、いろんな言葉で書いてありました。
中には日本語もありましたが、「この辺(サンノゼ南部)で日本語の助けが必要な人なんて、あまりいないんじゃないかな?」と思った次第です。
それにしても、アメリカの病院って、ボランティア(volunteer)の人が多いんですよね。だから通訳だって、ボランティアの人たちがやっているのではないかと想像するのです。
今回、わたしが手術を受けに病院に「出頭」したときにも、当日の受け付けはボランティアのおじさま、おばさまたちがやってくれました。(アメリカの場合、手術前に入院するケースはごく稀(まれ)で、だいたいは当日に病院に向かいます。術後も、入院となるケースは2割くらいでしょうか。)
そして、晴れて退院の日、部屋から車いすを押してくれたのも、高校生くらいの男の子でした。退院は日曜日だったので、ティーンエージャーのボランティアもちらほらと参加していたようです。
何日かぶりに外気に触れて、とても冷たく感じられたので、「わぁ、寒い(Wow, it’s chilly)!」とわたしが言うと、「だって、もう一月だからね(It’s already January)」と、大人びた返事をしてくれたのでした。
いろんな人に触れて、いろんな言語に触れて、ボランティアを通して、彼らもどんどん成長していくのでしょう。