Pat on the back(背中をポン!)
それは、pat on the back。
最初の pat は、「手のひらでポンと軽くたたく」という動詞です。
最後の the back は、背中。
ですから、pat on the back は、「手のひらで背中をポンと軽くたたく」または「軽くなでる」というような意味になります。
そして、pat は名詞でもありますので、a pat on the back という名詞形もあって、「手のひらで背中をポンとたたくこと」という意味になります。
で、どういうときにこんな行動をするかというと、相手を「良くやったね!」とほめるとき。
He gave me a pat on the back for doing a good presentation.
「彼は、僕がうまいプレゼンをやったので、(背中をポンとたたいて)ほめてくれた」
このように、誰かが実際にポンと背中をたたいてほめるだけではなくて、比喩的に「ほめる」という意味もあります。
たとえば、こんな風に使います。
You can give yourself a pat on the back for doing such a good work.
「そんなにいい仕事をしたんだから、自分で自分をほめてあげてもいいんじゃない」
もちろん、自分で自分の背中をポンとたたくのは難しいので、この場合は「たとえ話」として、背中をたたいてあげてもいいよと言っているわけですね。
ときには、自分をほめてほしいと思っている人もいるようです。
He wants a pat on the back, but does he really deserve it?
「彼は人にほめてもらいたいようだけど、(彼の仕事ぶりは)ほめるに値するのかなぁ?」
(ところで、冒頭の写真は、ジャンボジェット機の背中に乗っかる、スペースシャトル・エンデヴァー(Endeavor)。スペースシャトル各機は、プロジェクト終了後、全米の博物館に移されることになりましたが、9月21日の朝、サンフランシスコの上空を2回旋回したエンデヴァーは、みんなに「ありがとう、さようなら」のご挨拶をしたのち、ロスアンジェルスに飛んで行ったのでした)
それで、どうして pat on the back をご紹介しようかと思ったかというと、この表現に似ているわりに、奇妙な使い方を耳にしたからです。
それは、pat on the chest 。
メジャーリーグ野球(MLB、Major League Baseball)のサンフランシスコ・ジャイアンツ(San Francisco Giants)の試合をテレビで観ていたときでした。
10月19日のナイターは、ナショナルリーグのチャンピオンを決めるシリーズ(NLCS、National League Championship Series)第5試合。ジャイアンツは1勝3敗と、ここで負ければ「あえなく敗退」の崖っぷち。
敵地セントルイスでカーディナルズ(St. Louis Cardinals)と戦ったジャイアンツは、バリー・ジト投手の好投で、5対0と大勝利!
4勝先勝のチームがリーグチャンピオンとなる中、なんとか首の皮がつながりました。
試合後、8回途中まで投げたジト投手をねぎらって、選手たちがまわりに集まり、彼の「胸」をポンポンとたたくのです。「良くやったぞ!」と。
それを観ていた中継キャスターもこう伝えます。
Everybody is giving Zito a pat on the chest.
「みんなジト投手の胸をたたいて、彼をほめたたえている」
これを聞いたわたしは、「え、どうして背中じゃなくて胸なの?」と疑問に感じたのですが、一緒に観ていた連れ合いによると、何回も続投した投手の肩は、熱を持ってパンパンに腫れ上がり、アイシングが必要なほど。
試合後に背中や肩のあたりをポンポンとたたくのは、もっとも危険なことなのです。
だから、115球も投げたジト投手には、pat on the back ではなくて、pat on the chest 。
なるほど、球界独特の習慣なんですね。
おととし2010年のワールドシリーズ覇者でもあり、今季も調子が良い。
ここまで順調にプレーオフを勝ち進んできました。
ですから、サンフランシスコの街じゅうが、ジャイアンツがNLCSを突破し、ワールドシリーズに出場することを望んでいる。
街を散歩していると、上の写真のように、あちらこちらで Go Giants! (ジャイアンツがんばれ!)という張り紙を見かけるし、バーでは、Go Giants! のフレーズは看板代わりに使われています。
「でっかいテレビでジャイアンツの試合が観られます」というのは、当たり前。
こちらの写真のように、「ジャイアンツのチケットを持っている人には、すごい割引だよ!」という誘い文句も見かけます。
いえ、商売人ばかりではなくて、お役所だってノリがいいんですよ。
こちらは、火災に緊急出動するサンフランシスコ消防署のはしご車。
ワンワンとサイレンを鳴らして、消防士もものすごく真剣な眼差しでしたが、ふと見ると、オレンジ色のジャイアンツの旗が掲げられているのです!
消防士だって、人の子。わが街のチームが勝ち進むのを、誰よりも強く望んでいるのです。
さ、もうすぐ「天下分け目」の第6試合。間もなく、サンフランシスコのホーム球場 AT&T Park でプレー開始です。
ここでもう1勝して、シリーズ3勝3敗。ねばりを見せて明日のリーグ最終戦まで持ち込みたいところです。
Go Giants!
がんばれ、ジャイアンツ!
追記: 最後はサンフランシスコ・ジャイアンツの話にそれてしまいましたが、pat on the back について、もうひとこと。
アメリカでは、(愛情表現はべつとして)一般的に人に触れることを避ける傾向にあります。ですから、ほめるにしても、ポンと軽く触る程度にとどめておいて、決してバン!とたたいたりはしません。
どちらかというと、ほめる目的で人に触れるのは、男性(オフィスの仲間やスポーツチームなど)が多いように感じます。
女性は、あまり pat on the back をすることはないようですが、代わりに、軽く腕に触れたりすることはあるでしょうか。
いずれにしても、よほど親しい間柄でない限り、男性でも女性でも人に触れるのは避けた方がいいのではないか、と個人的には思っております。