Stingy(ケチ)
先日、ライフinカリフォルニアのセクションでは『「メイドさんのティップ」キャンペーン』のお話をいたしました。
アメリカのホテルでは、部屋を掃除してくれるメイドさんに対して宿泊客がなかなかティップを置いてくれないので、「メイドさんのことも忘れないでね」と、封筒でティップを置きやすくするキャンペーンでした。
それで、このお話を書いていたとき、頭の中では、こんな主観が渦巻いていたのでした。
一般的に日本人と比べると、アメリカ人には「ケチ」な人を見かけるような気もするなぁ、と。
それで、今日の話題は、ずばり「ケチ」。
まあ、「ケチ」にもいろいろ段階がありまして、まず「倹約家」という言葉がありますよね。
無駄なことを嫌い、ごく必要なものにしかお金を遣わないタイプ。
英語では、倹約家のことを frugal と表現します(発音は「フルーガル」よりも「フルーゴー」といった感じ)。
この言葉は、あくまでも「倹約」の意味合いが強いので、決して悪い言葉ではありません。たとえば、こんな風に使います。
We were trying to be frugal to stretch our monthly household budget
わたしたちは一ヶ月の家計費を長く持たせるために倹約に努めていた
この言葉には、「質素な」という意味もありますので、こんな風にも使います。
We had a frugal meal of bread and cheese
わたしたちはパンとチーズの質素な食事をとった
この frugal がちょっと度を超すと、parsimonious という表現になります(発音は「パーシモゥニアス」で、「モゥ」にアクセント)。
これは極度に倹約家といった感じで、少々「ケチ」の意味合いが出てきます。
Her motto is being parsimonious everywhere she goes
彼女のモットーは、どこに行っても倹約家であること
ですから、こんなことを自分が言われたとしたならば、「ケチだ」と遠回しに言われたのかもしれないなと、ちょっと気をつけることでしょう。
それで、frugal とか parsimonious とも違って、完全に「ケチ」という言葉が当てはまるケースがあるでしょう。
そう、なんでそこまでケチるのよ? と、見ていて腹立たしいような。
そういうときには、stingy を使います(発音は「スティンジー」)。
You can’t be stingy when it comes to charity
チャリティーのときにはケチになっちゃいけないよ
この言葉には、必要なときにもケチケチしてお金を払わないという意味合いがありますので、stingy と言われると、ちょっと不名誉なことではあるでしょうか。
英語圏の文化でなくとも、たとえば中米の伝統的な生活を守る村々でも、stingy と言われることが世の中で一番不名誉なことだ、という認識があったりするのです。
似たような表現に cheap(チープ)というのがありますね。
普通、cheap というと「値段が安い」という意味かとも思いますが、どちらかというと否定的な含みの強い言葉で、「安いけれども、同時に質も悪い」といった響きがあるでしょうか。
モノが安くて、ありがたいと表現したいのであれば、inexpensive(安くてすむ)とか reasonable(値段が手ごろな)といった言葉を使った方がいいかもしれません。
たとえば、こんな風に。
Wow, the price is reasonable for this level of quality
まあ、この質の良さでこの値段なら、お手ごろだわぁ
それで、cheap という言葉は、モノと同じように、人に対しても「何に関してもケチケチしてイヤな人ねぇ」とか「もっといいお金の遣い方を知らないのかしら?」といった否定的な含みを持っています。
He is so cheap
彼って、ほんとにチープだよねぇ
こんな風に言われたら、自分を見つめ直す必要があるのかもしれません。
というわけで、アメリカは、実に面白い、奥深い国なんです。
見ず知らずの人にも喜んで手を差し伸べる寛大な(generous)方が大勢いらっしゃる一方、「なんで俺が金を払うのさ?」と、たった一ドルを出すのも拒む方がいらっしゃるのです。
そう、日本人なら「まあ、習慣だからしょうがないかぁ」とあきらめる場面でも、断固として拒否する、というような。
こういう方は「逆に、俺の方が恵んで欲しいくらいだよ!」と不満に思っているのかもしれませんね。
わたしの経験では、この手のタイプは男性に多く、いつかサンフランシスコ・ジャイアンツの試合を観ようと野球場に隣接する駐車場に車を停めたら、「なんで駐車場に20ドルも払わないといけないんだ!」と、いつまでもぐちぐちと文句を言う男性を見かけました。
奥さんは、「あぁ、また始まった」という感じで、沈黙を守っていらっしゃいましたが。
というわけで、「ケチ」。
You are being stingy
あなたってケチねぇ
と言われたら、ちょっと鏡を覗き込んでみた方がいいのかもしれません。
(ちなみに、最後の文章で「現在進行形」になっているのは、「あなたは今ケチになってるよ。だから、ちょっと気をつけなさい」という戒めの意味合いがあるからです。You are stingy と言われるよりも、ちょっとはマシでしょうか。)
蛇足ですが: 身近なところに He is cheap と仲間内でささやかれている人がいました。けれども、彼は、レストランのティップはいつも多めに置くのが習慣でした。
学生時代、レストランのウェイターをしたことがあって、レストランにしてもホテルにしても、接客業というのがどんなに大変で、どんなに払いのケチな職業であるか知っていたからです。
なるほど、cheap に見える人でも、generous な心を持っているのだなと見直したのでした。