Stand-in(代役)
いろんな風に訳される言葉ですが、ここでは「代役」といたしましょう。
正規のメンバーは都合が悪くなったので、その人の代わりに「役」を務める人のことですね。
同じような意味では、こんな表現があるでしょうか。
たとえば、pinch hitter(ピンチヒッター)
それから、substitute(代理、補欠、発音は「サブスティテュート」)
いろんな表現はありますが、舞台の代役だったら、stand-in
野球の試合だったら、pinch hitter
先生の代理だったら、substitute teacher などと使い分けをいたします。
それで、どうして「代役」のお話をしているのかと言うと、こんな人生相談を目にしたからなんです。
バート(仮名)とわたしは、高校時代に付き合っていましたが、それぞれに違う道を進んで、結婚もして、子供もできました。
その後、お互いが離婚することになり、また彼と付き合い始めました。が、その2、3年後、別々の州に住むことになって別れました。彼の方は、それから結婚して離婚しています。
ほんの2、3ヶ月前、互いに消息を探し合って再会し、また付き合うことになりました。わたしはずっと「ひとり(single)」を通していますが、彼は時々別の人とも会ったりしています。この「もうひとりの女性(other woman)」は、現在、ご主人と別居中です。
二度目の再会を果たした彼とわたしは、今、互いの腕の中に戻っています
Now we are back in each other’s arms
ですから、わたしは彼に対して、他の人と付き合うような人はイヤだと言ったんですが、彼は「彼女とは結婚しないよ」と言いながら、なかなか別れようとしません。
それで結局は、わたしと彼女と両方と付き合っている状態なんです
と、そんな内容の人生相談でした。
たぶん、このバートという男性には、相談者と結婚したい意思は、まったくないんじゃないかなぁ?
だから、くっ付いてみたり、別れたり、他の女性と天秤にかけてみたりと、煮え切らない態度を取るんだろうなぁ、と。
すると、回答者のエイミーさんも、ずばり、同じことをおっしゃっていました。
何度も劇的な再会を果たしたことで、あなたはきっと、こんな風に信じていらっしゃることでしょう。
わたし達ふたりは一緒になる運命なのよ
We are destined for each other
もちろん、そうなのかもしれませんが、違った見方をすると「別れと再会のドラマ(the drama of loss and rediscovery)」に酔っているだけなのかもしれません。
あなた方は、お互いを「他の誰かが現れるまでの代役」として使っているに過ぎないのです
You use each other as stand-ins until someone else comes along
あなたが良いと思ったのなら、このままで結構ですが、バートに同じことを期待してはいけません。彼は、彼自身のやり方でベストな道を探しているのですから
というのが、回答者エイミーさんの英断でした。
(上の文章では、stand-ins は stand-in の複数形;comes along は「現れる」の意)
なるほど、「他の誰かが現れるまでの代役」とは、よく言ったものですね。
そうなんです、わたしがバートの煮え切らない態度に感じていたものは、「代役」として急場しのぎで付き合っている、ということだったんです。
たぶん、彼にとっては、この方でなくてもいいんですよ。だって、もしも「この人しかいない!」と思ったのなら、すぐに結婚しようと言い出すでしょうから。
ということは、この方だって、「別れと再会のドラマ」に翻弄されて、自分を安売りしてはいけないんです。
誰かを代役にしてもいけないし、
誰かの代役になってもいけないんです!
というわけで、少々熱く語ってしまいましたが、
今日のお題は、stand-in
舞台の代役は OK ですけれど、人生の代役は NG ですね!
Reference cited: “Ask Amy” by Amy Dickinson, published in the San Jose Mercury News, May 1, 2015