おいしい再会
何度か行っているレストランなのですが、ごく最近、経営者が代わり、スタッフの顔ぶれも代わっていました。
いつもワインを選んでくれるベテランのお姉さんも、この晩は姿を見かけませんでした。
前菜のキハダマグロ(Ahi tuna)のたたきには、めずらしい泡状のワサビソースがかかっていたし、ロブスタービスクは、いつもよりもトマト風味が強くなっていました。
この晩のスペシャルは、ふたつ。貝柱(scallop)のソテーか、バッファロー(buffalo)のロースト。
そう、バッファローって、本物のバッファローだそうです。あの広大な草原をのしのしと歩く、巨大な牛。
まさか、野生のバッファローではないのでしょうが、なんだか肉が硬そうなので、わたしは好物の貝柱にしてみました。
バジル風味のリゾットとチェリートマトがアクセントになっています。
さて、デザートは、何でしょう。ここでは、いつも、チョコレートムースケーキと相場が決まっています。あの、中からチョコクリームがとろ〜りと出てくる、焼きたてのチョコケーキ。
でも、この日はちょいと暑い日。担当のウェイトレスの女の子が、冷たいストロベリーショートケーキを勧めるので、こちらに初挑戦。
たしかに、彼女が言うとおり、クッキー風のケーキは甘味をおさえてあるし、イチゴのフィリングもたっぷり。
けれども、このボリュームには、閉口ですよね。
さて、食事が終わる頃、パティオにつながるガラス扉が開け放たれます。
「よかったら、お外へどうぞ」とスタッフも勧めてくれるので、かたとき、外の風景を楽しむことにしました。
隣では、団体さんのために、遅めのディナーの席が設けられています。
どうやら、鹿の散歩道があるのでしょうか、みんな前後に連なって、のんびりと歩いていきます。
きっと、夕方は、エサを探して歩き回るのでしょうね。
そんな鹿さんご一行に気を取られていると、隣のテーブルから、ふと聞き慣れた声が聞こえてきます。
息子を連れたご夫婦。
こちらに背中を向けていたので、まったく気が付かなかったのですが、なんと、彼らは親しい友人。
もう何年かご無沙汰していましたが、我が家がシリコンバレーに引っ越して来たときは、一番お世話になったご夫婦。
声をかけると、あちらも初めて気が付いた風で、やあ、やあと、話がはずみます。
その一方で、ダンナさんの方は、ちょっと太ったみたいです。髪をオールバックにし、アロハシャツをカジュアルに着こなす様は、ジャズピアニストのチック・コリアみたい。
今はリタイアして、悠々自適の生活を送る彼は、昔ほど早口ではなくなっていました。
シリコンバレーで会社を立ち上げ、成功させた余裕が感じられます。
けれども、なんと言っても、一番大きく変わったのは、息子くん。
彼は間もなく15歳半で、仮の運転免許も手に入れられるそうです。講習を受けたあと、親が一緒にトレーニングすると、16歳以前に、運転できるようになるんですって。
最後に会ったのは、彼がまだ小学生の頃。その「やんちゃ坊主」が、スラッと長身の「青年」に変わっていました。
子供は成長が早いといいますが、まさに、その通りですよね。
ちょっと見ない間に、顔まで変わっている。だいぶお母さんに似てきたみたい。あれじゃ、隣のテーブルにいたって、まったくわからないですね。
それにしても、このご夫婦に今までご無沙汰していたのは、ちょっと悪かったかなと、反省してしまいました。
あの頃は、身内みたいにお世話になっていたのに。
ふたりともシカゴ近郊の出身で、とっても暖かい人たちなんです。
話は尽きないけれど、お腹を空かせた彼らのメインディッシュが運ばれて来たので、こちらも潮時と席を立ちました。
もちろん、またすぐに会いましょうと約束して。
食べ物についての追記:最初の写真は、いったいなんだろう?と思われた方もいらっしゃるでしょうね。
パンと一緒に出されているものは、ひとつはガーリックの風味付けされたオリーブオイル、もうひとつはブラックオリーブをペースト状にしたものです。
見かけはちょっと悪いですが、このオリーブペーストも、なかなかのものなのです。
お次の写真、キハダマグロのたたきには、ごく日本的に、大根とガリ(甘酢しょうが)の薄切りが添えられています。
このレストランでは、ランチに、キハダマグロのあぶりをハンバーガーにして出すのですが、これがまた、ガリが効いていて、さわやかでいいんですよ。
なかなかのメニューで、アメリカ人にも人気があるんです。