ハミングバードはサルヴィアさんがお好き
そうなんです、今日はハミングバード(和名はちどり)のお話です。
我が家の庭は、もう何年も「土庭」になっておりました。もともと粘土質の土が、カチンコチンにコンクリートのように固まっていたんです。
当然のことながら、そんな砂漠のような庭には、なかなか花は育ちません。
裏庭に咲くのは、スミレやバラ、シャガに似た花と、容赦ない陽光にも耐えられる、強い花々だけでした。
そこで、先日、一念発起して、庭をやり直してもらいました。
新しくお願いすることになった「庭のお手入れ会社」の経営者が、ホイホイとその場でデザインしてくれて、あれよ、あれよと言う間に、2週間で作業が完了してしまいました。
そう、枯れかけた植物を取り払って、肥えた土を入れて花を植え、ドリップイリゲーションを張り巡らせる、という大変な作業ですが、あっと言う間に終了。
「デザイナーに払うお金がもったいないでしょ?」と主張する彼の言葉通り、できばえは上々。
硬派な印象のわりには、「お花いっぱい」のレディー好みに仕上がっています。
年中、花を楽しめるように配慮したという彼の頭の中には、きっと綿密な図面が広がっているのでしょう。
(ドリップイリゲーションは、自動水撒き装置の中でも、スプリンクラーと違って、植物の根元に直接水をやる方法です)
そんな彼は、できあがった庭を前に「この花には、ハミングバードがやって来るんだよ」と言うのです。
サルヴィア(Salvia)の一種だそうですが、え~っ、こんな小さな花にハミングバードが蜜を吸いにやって来るの? と、こちらは半信半疑。
以前、我が家にはハニーサックル(Honeysuckle、和名スイカズラ)が植わっていて、そちらはハミングバードの大好物でした。
黄色と白の花は、サルヴィアの「赤い金魚」ほど小さくないので、いかにも蜜がたくさん! といった様子。ですから、ハニーサックルとハミングバードの取り合わせは納得できるのです。
でも、金魚ちゃんはどうかなぁ?
すると、さっそく翌日、お言葉通り、ハミングバードがやって来たではありませんか!
まあ、あんなにちょぼちょぼとした花も目ざとく発見して、ひとつひとつ丁寧にクチバシを入れて蜜を吸っています。
あっちをチューチュー、こっちをチューチュー、咲いている金魚すべてにクチバシをつけています。
翌朝もハミングバードが「朝ごはん」にやって来たし、日の沈みかけた頃にも「ディナー」にやって来るのです。
一度、金魚の隣に植わっているピンクの小花を吸ってみたら、「うわっ、まずい!」と言わんばかりに、すぐに逃げて行きました。
なるほど、こっちじゃなくて、サルヴィアの金魚の方がお好きなんですねぇ。
ハミングバードは、サルヴィアやハニーサックルだけじゃなくて、フューシャ(Fuchsia、和名フクシア)も大好きなんですよね。
わたしもフューシャが大好きなので、中庭に植えてもらったのですが、鉢に植わった翌日、さっそくハミングバードがつられてやって来ました。(残念ながら、写真はまだ撮れていません)
けれども、フューシャって華奢な植物なので、カリフォルニアの容赦ない太陽は、あんまり得意じゃないんです。
日光に当たると、すぐに元気がなくなってしまうので、水をたくさんやって、オーバーヒートしないように気を付けないといけません。
そこで、蒸し暑くなった昼下がり、ジョウロでフューシャに水をかけていたら、ふと父の言葉を思い出したんです。
中学生の頃でしたか、何かとバタバタと飛び回っていた時期。
父がわたしに「花を大事に育てて愛(め)でるような、そんな心の余裕がないとダメだよ」と言ったんです。
どんな状況だったのかはすっかり忘れてしまいましたが、当時の父にとっては、庭の花とか鳥を見るのが大切な息抜きになっていたのでしょう。
園芸が趣味ではないけれど、母が育てる草花や、庭木にやって来る鳥を眺めて、短歌を詠むのが趣味でした。
そんな父の言葉を思い出したから、というわけではありませんが、花を買ってきて植木鉢に植えてみました。
スコップを手にしたのは、もう何年ぶりかわからないほどですが、自分で選んだ花を我が手で植えてみると、余計に愛着がわくものですねぇ。
庭に花々が戻ってきたら、ハミングバードだけではなくて、わたし自身も頻繁に足を向けるようになりました。
そう、用もないのに、庭をふらふらと歩いています。
後日談: このお話を掲載した翌日、ふと見ると、ハミングバードが「ランチタイム」にやって来ていました。
サルヴィアの金魚ちゃんは、朝ごはんやディナーだけではなく、ランチにも最適なんですねぇ。
それにしても、小さな羽をブンブンと羽ばたかせながら、器用に蜜を吸うものですよね!