ダイヤモンドレーンには気をつけて
なんだか、きらびやかな名前ですが、カリフォルニアで車を運転するときは、必ず知っておかなくてはならない名称なのです。
「ダイヤモンド(diamond)」とは、フリーウェイ上の目印を指します。まあ、宝石のダイヤモンドというよりも、見た目は単に「菱形」といった感じです。
「レーン(lane)」というのは、車線のことですね。
だから、「ダイヤモンドレーン」とは、白い菱形のマークが描かれている、ある車線のことをいいます。
ダイヤモンドレーンは、数本あるフリーウェイ上の車線のうち、一番左端のものです。
普段は、左端の車線は、単に追い越し車線なわけですが、ある時間帯、複数の人が乗った車しか通れなくなるのです。
もしかしたら南カリフォルニアでは事情が異なるのかもしれませんが、サンフランシスコ・ベイエリアでは、平日の午前5時から9時まで、そして午後3時から7時までは、二人以上乗った車でないと、ダイヤモンドレーンを通れないのです。
みんながちゃんと守るように、フリーウェイには、あちらこちらに看板が立っています。(サンフランシスコ・ベイエリアでも、ベイブリッジやゴールデンゲートブリッジのように、3人以上でないといけない場所もあります。)
実は、このルールは、通勤時間帯の渋滞緩和のためにつくられたのですね。ひとりでも多くの人が、示し合わせて、複数で通勤するようにと。
まあ、サンフランシスコの街中は別として、その他のカリフォルニアの地域では、車の通勤が当たり前になっているので、朝や夕方の渋滞は、かなりシリアスなのです。
だから、複数の人が乗る車の優遇制度がつくられたのですね。
そして、複数で車をシェアして通勤することを「カープール(carpool)」と言います。だから、ダイヤモンドレーンは、「カープールレーン」とも呼ばれています。
写真の看板には「(左車線は)バスとカープール車だけ」そして「オートバイはOKよ」と書かれています。
また、人をたくさん乗せた車のことを、high-occupancy vehicle などとも言いますので、ダイヤモンドレーンは「HOV レーン」とも呼ばれます。
いずれにしても、通勤の渋滞緩和のためのルールなので、週末は関係ありません。けれども、なぜか、祝日であっても週日には適用されるそうです。アメリカの場合、みんなで一斉に休日になるケースが少ないからでしょうか?
ここで気をつけないといけないことは、制限されている時間帯に一人でダイヤモンドレーンを運転してしまったら、カリフォルニア・ハイウェイパトロール(通称 CHP)に捕まってしまうということです。
実際、おととしの暮れ、わたしの連れ合いが CHP に捕まったことがあるのです。
ある平日の朝、シリコンバレーを縦断するハイウェイ101号線を運転していたのですが、何かしら真剣に考え事をしていたのか、ダイヤモンドレーンのことなんてまったく頭になかったそうです。
そんなわけで、すぐ右側の車線にいた CHP のパトカーにも気付かず、そのままス~ッと追い抜いたところで、パトカーの赤とブルーのライトが点滅!
幸い、ダイヤモンドレーンの違反は、そんなにシリアスなものではなく、運転中の違反行為(a moving violation)ではありません。まあ、駐車違反(a parking violation)に類似するものでしょうか。
けれども、とにかく面倒臭いのです。
まず、ひと月後に、違反をした場所の最寄りの裁判所からお手紙が来て、いくつかの選択が与えられます。裁判所に出頭して申し立てをするか、それとも、罰金を支払って講習会に出席するか、うんぬん。
後者の選択だと、裁判所の召喚(citation)からはめでたく解放されます。だから、よほど頻繁に違反していない限り、おとなしくこれに従います。
だって、裁判所の手紙には、もしこの選択を放棄なんかしたら、あんたの車の保険料は上がるよと脅しが書いてあるのです(過去18ヶ月以内に講習会に出た人はダメだそうです)。
ここでクセモノは罰金です。ハイウェイには、「カープールレーンに違反したら、271ドルの罰金だからね」という看板が立っています。ところが、271ドルでは終わりません。いろいろと乗っかって、369ドル支払いました(そのうち345ドルは、保釈金だそうです)。
そして、交通講習会。これはよほど人気があるらしく、すぐには出席できません。ふた月待ちました。まあ、インターネットでも講習できるそうですが、これは性格の固い人にお勧めです。
連れ合いは、土曜日の丸一日を選択したので、朝の8時から午後4時まで、あるコミュニティーカレッジの教室にカンヅメとなりました。教室は、普段お会いすることのないような、いろんな雰囲気の生徒さんでいっぱいだったそうです。
でも、実際、先生のお話はまあまあだし、最後のテストなんて自己採点だったし、そんなにひどくはなかったそうです。そして、普段は誰も知らないようなルールも結構あったとか。
なんだか、ロスアンジェルスあたりには、チョコレート屋さんの裏部屋で開かれる交通教室があるそうです。たまたま、チョコレート屋を経営する人のダンナさんが、運輸局から許可された先生なんだとか。
お勉強のあとは、みんなでチョコレートをつまみながら歓談とのことですが、やっぱりアメリカ人には、ジョークと甘いものは欠かせないのですね。
追記:昨年7月、ダイヤモンドレーンには新しい規則ができて、ある特定のハイブリッド車は、一人でも運転できるようになりました。
でも、カリフォルニア州政府にとっては、ハイブリッド車とは名ばかりの車が多いらしく、今のところ、許可されている車は3種のみです。ホンダ「シビック」のハイブリッドモデル、ホンダ「インサイト」(2005年モデルを除く)、そしてトヨタ「プリウス」の3種類です。フォードのでっかい車「エスケープ」のハイブリッドモデルなんかは、とんでもないのです。
州の運輸局に登録されたハイブリッド車は、写真のようなステッカーを貼ります。黄色いステッカーには、「Access OK(ダイヤモンドレーンへのアクセスはOK)」と書かれています。
ごていねいなことに、右後ろに2枚、左後ろに1枚、計3枚もベタベタと貼るのが規則なんですね。
このカリフォルニア州のハイブリッド・ステッカーには、7万5千人分という上限があって、現在発行されたのは、6万人ちょっとだそうです(7月中旬現在)。急がなければ、なくなっちゃいますよ!