真珠とオセロ
2週間ほど前、連れ合いが日本に出張したときのことです。ミーティングの合間に時間ができたので、同行していたアメリカ人の上司を銀座に連れて行きました。銀座でお買い物でもさせようと思って。
ある真珠屋さんに立ち寄り、ひと通り店内を見て回りますが、どうも上司の食い付きが悪いのです。
そこで、連れ合いが、「奥さんに何か買って行かなくていいの?」と聞くと、彼はこう答えるのです。「僕の奥さんは、アクセサリーとか自分を着飾ることに興味がないんだよ。」
この話を聞いたわたしは、たまげてしまったわけです。「エーッ、アメリカ人に、アクセサリーや洋服に興味のない女性がいるのー?」と。
アメリカでは、週末にショッピングモールに行こうものなら、車を停められないくらい、パーキングは満杯です。
感謝祭直後の「ブラックフライデー」のセールなんて、朝の5時くらいから始まるのですが、ドアが開く前から、そこには長蛇の列。
物を買うことにかけては、アメリカ人に勝てる国民はいないかもしれません。
(「ブラックフライデー」、つまり「黒い金曜日」とは、感謝祭の木曜日の翌日のことです。この日はどの店も大セールで、書き入れ時。だから赤字もこの日で黒字に転ずる。そこから「ブラック(黒字)フライデー」という名前が付いたんですね)。
そんなわけで、アメリカ人なのに、きらびやかな真珠屋さんで反応を示さないダンナさん、これは驚きに値するわけなのです。
けれども、話を聞いて、すぐに納得。上司の奥さんは、イギリス人だったんですね。自分自身にお金を使うことは大嫌いな人だそうです。
ここで、アメリカのパーティーなどで、大うけする話をご披露いたしましょう。これは、わたしの実体験なのですが、受けなかったためしがないくらいなんです。
ずうっと前のお話ですが、結婚してちょうど1周年の記念日。その頃は、わたしの方が残業が多かったので、連れ合いが先に帰って夕食を作って待っていました。
まあ、平日で仕事があるとはいえ、結婚記念日には何か特別なものをと思い、わたしはケーキとバラを買って帰りました。当時は、ペコちゃんのブルーベリーケーキが我が家の一番のデザートだったんです。そして、バラなんて何本も買えないので、小さな赤いバラをほんの2、3本。それでも、とってもいいものを抱えてる気持ちで、我が家のドアを開けたのでした。
家の中に入ると、ちょうど連れ合いは、玄関の脇の台所で料理をしていました。そして、「ほら、ケーキとバラを買って来たよ〜」と自慢するわたしを見て、こう言ったのです。
「わ〜、きれいなバラね。どうしたの?今日は何かあったの?」
こんなことは、アメリカでは最大のタブーなんですよ。結婚記念日をうっかり忘れるなんていうことは。だって、結婚記念日とは、奥さんに何かをプレゼントする日なのですから。
だから、この話をアメリカ人の友達にぶちまけると、連れ合いはその場の「道化師」となるのです。「ひでぇ〜」って。
同時に、アメリカ人の男性陣は喜ぶ、喜ぶ。「俺よりもひどい奴がいた!」って。こういう話は、奥さんに攻められたときに、なかなかいい有効打となるわけですね。
それ以来、連れ合いは、一度たりとも結婚記念日を忘れた事はありません。それどころか、いつも出張ばかりしているわりに、この日だけはスケジュールをやりくりするようになったのです。
まあ、弁護するわけではありませんが、当時彼は、記念日を祝うという感覚がゼロだったんです。そんな環境には育っていなかったので。だから、結婚1周年を覚えていなかったのも仕方ないんですが・・・
ところで、銀座の真珠屋さんでまったく反応を示さなかったアメリカ人の上司。その後、激安ショップ・ドンキホーテに行ったら、とても喜んだそうです。何でも揃てるって。
そこで、何を買ったと思います?日本が世界に誇るゲーム、オセロです。7歳の双子の娘さんがゲームに凝っていて、ふたりで遊べるゲームを探していたそうです。
ふたりは考えることが大好きで、頭を使うオセロは最適だったようですね。特価でたったの980円ですが、いい投資になったかも。
後日談:この双子ちゃん、オセロがとっても気に入ったそうです。シンプルに見えて、戦略がある。そんなゲームに、引き込まれたのでしょうね。