日本は安全?
日本は暖冬だとか、桜が咲いたなどと耳にしていたのに、着いてみると、思ったよりも寒いのです。
やっぱり日本は、シリコンバレーよりも冷えるみたい。
というわけで、成田に着いた直後のこと。
いつもの成田エキスプレスで、東京駅に向かいます。ちょっと時間があったので、椅子に座って待っていると、隣に女性ふたりが座ってきました。
彼女たちも、海外からの長旅を終え、ほっと一息。さっそく、構内の売店にお茶を買いに席を立ちます。
でも、ふたりとも同時に席を立ってしまったので、荷物はそのまま席に置いたまま。勿論、お財布の入ったショルダーバッグは肩にかけて立ちましたが、ここでわたしは、なんとなく違和感を覚えてしまったのでした。
いかに売店が近くとも、海外でこれをやったら危ないかなって。
まあ、これを見ていたわたしは、言われなくとも自然と荷物番をしてあげました。幸い、あんまり構内も混んでいなかったので、誰かに席を取られることもなく、彼女たちは、じきにお茶を持って戻ってきたのでした。
そして、「あ~、やっぱり、日本のお茶ってホッとするよね~」と、幸せそうに仰せです。
きっと、ホッとするのは、お茶だけじゃなかったのでしょうね。この安全そうな空気も、ふっと息をつける瞬間。
悲しいことに、ひとたび外国に出ると、「基本的にまわりは泥棒さん」くらいの心構えでいないと危険ですよね。
だから、ふたりで同時に席を立つことは危険だと思いますし、もし荷物を置いて離席する必要があれば、まわりの信用できそうな人に、こう頼んで行った方がいいですよね。
すぐに戻ってくるから、2、3分わたしの荷物を見ててくれない?
(英語では、I’ll be right back, so could you watch my bag for a couple of minutes?と言えばいいと思います。)
わたしは、よくこれを頼まれるのです。やっぱりどう見ても、人の物を盗むタイプには見えないらしく、相手も心置きなくどこかへ姿を消してしまいます。
ワイキキビーチでも、パラソルの下で休んでいると、荷物番を頼まれたことがありました。みんなで楽しそうに、波に乗って遊んでおられました。
一度、大学の図書館で、こんなこともありました。「荷物を見ていてね」と頼んで行ったわりに、相手は約束の5分を過ぎても戻ってきません。彼女の5分は、日本人のわたしの5分と違うのでしょうか。30分経った頃に、もう待てない!と、わたしはそのまま家に帰ってしまったのでした。
でも、だいたいの人は、約束の期限にはちゃんと帰ってきますね。やっぱり相手に悪いなという気はあるみたいです。
日本は、安全神話が崩れ、だんだん物騒な世の中になってきたと言われていますよね。
でも、わたしなどは、日本に戻ってくると、ホッとするのです。いつも気を張っていなくてもいいかなって。
だって、東京の地下鉄に乗ると、制服を着た小さな子供たちが、自分たちで登下校しているではありませんか。こういうのって、外国の人からすると、信じられないのだと思いますよ。
いつか、シリコンバレーのわたしの元上司も、こう言っていました。「東京の地下鉄に乗ったら、こんなに小さな制服の女の子が、ひとりで乗ってるんだよね。僕にしてみたら考えられないよ。でも、それほど、東京は安全なんだろうねぇ」と。
彼には、再婚後に生まれた女の子がいて、きっと、同年齢の愛娘と重ね合わせて見ていたのでしょうね。
そう考えてみると、日本の安全さも、まだまだ捨てたもんじゃないですよね。
そんなことをごちゃごちゃと考えながら、東京のホテルに到着しました。
日本はもう、いちごの季節だそうで、部屋にはいちごのお皿が置いてありました。部屋の中も、早春の香りに満ちています。
街にも、いちごのケーキに、いちごの小物たち。いちご色に満ちています。これほど季節に敏感な国民はいませんよね。ほんとに風流。
そして、また、ほっと息をついてみるのです。