Life in California
ライフ in カリフォルニア/日常生活
Life in California ライフ in カリフォルニア
2009年08月28日

黄色いスクールバス

前回のお話で、アメリカの学校の多くは、8月の最終週には新学期が始まるというお話をいたしました。

今週からは、我が家のまわりでも、カラフルな服に身を包んだ登下校の子供たちを見かけるようになりました。きっと新しい学年に向けて、洋服も靴も勉強道具も新調してもらったことでしょう。

そして、長い休みがあけて新学期が始まると、まわりの大人たちも気を付けなければならないことがあるのです。それは、運転マナー。

日本でも同じだと思いますが、アメリカでは、学校のまわりではゆっくりと運転することが義務付けられています。「School(学校)」もしくは「School Zone(学校区域)」という看板や道路上の標示を見かけたら、すぐに減速しなければなりません。

カリフォルニアでは、学校から半径500フィート(約150メートル)以内は、時速25マイル(40キロ)と決められています。
 もし登下校の子供を見かけたら、とくに注意を払うことが義務付けられていて、時速25マイルでも「速過ぎる!」と、警官に注意されることもあるかもしれません。

同じカリフォルニアでも、自治体によっては、制限速度15マイルを課す場所もあるそうです。法律が改正されて、自治体が学校周辺の速度を設定しても良いことになったそうです。

我が家の近くの小学校のように、学校のすぐそばの道路を、下校時には全面通行止めにする場所もあります。

ですから、学校のまわりでは、注意するに超したことはないのですね。


そして、ちょっと厄介なルールが、黄色いスクールバスを見かけたときでしょうか。

こちらの規則は、アメリカ人でも知らない人(もしくは、知っていても守らない人)がとても多いので、自治体によっては、厳しく取り締まりを行っている場所があるかもしれません。

カリフォルニアでは、こちらが規則となります。

スクールバスが歩道脇に止まって、車の前後の赤いライトを点滅させ、脇に取り付けた「ストップ(Stop)」という赤い標識をピッと出していたら、それは、子供たちがまさにバスから降りて来るサイン。

だから、バスと同じ方向に進んでいる車は、四の五の言わずに、黙ってバスの後ろに止まること。

だって、子供たちがバスの陰からヒョコッと飛び出して来る可能性がありますからね。

そして、バスの後ろにもちゃんとこう書いてあります。「Stop When Red Lights Flash」つまり「赤いライトが点滅したら止まれ」と。

バスとは反対向きに進んでいる車であっても、一車線しかない道路の場合は、その場で止まること(上の写真が、まさにそうですね)。

例外として、逆方向に進んでいる車は、以下の場合は止まらなくてもよい。

1) 両側通行の真ん中に、盛り上がった安全地帯(island)がある場合
 2) 両側通行の真ん中に、黄色の二重線が2セットある(2 sets of solid double yellow lines)場合
 3) 両方向とも道路に二車線以上ある(any road consisting of two or more lanes each way)場合

申し上げることもないでしょうが、こちらが安全地帯のある道路の場合です。こういう安全地帯では、花や木の植え込みのあるケースが多いので、歩行者が簡単には道を渡れないようになっています。
 ですから、逆方向に進んでいる車にとっては、子供たちが渡って来る危険性が少ないわけですね。

そして、こちらが黄色の二重線が2セットある場合。厳密に言うと、二重線が2セットあったにしても、その2セットの間に最低2フィート(約60センチ)の間隔がないといけないそうです。
 なんとも手厳しいことではありますが、それくらいゆったりした道路でないと、子供たちに危険が及ぶという配慮なのでしょう。

ですから、要約いたしますと、スクールバスと同じ方向に進んでいる車は、バスが止まっている間は自分も停止する。逆方向に進んでいても、大きな道路でない限り、停止することが義務付けられているということなのです。

(大きな道路だと、ちゃんと信号があったり、登下校時に助けてくれる「交通おじさんや交通おばさん(crossing guard)」がいてくれたりするので、反対方向に関してはあまり神経質にはなっていないのでしょう。)


そして、スクールバスを見かけて停止した車は、バスが赤いライトの点滅を消して、ゆっくりと動き出したら、自分も動いていいことになっています。

降りて来る子供の数によっては、かなり待つこともあるのですが、せっかちなカリフォルニア人は、これが待てないらしいのです。ルールを守ってこちらが停止していると、「早く行ってよ!」とばかりに、後ろからクラクションを鳴らされることがあるのです。

けれども、ルール違反に対しては、厳しい罰則が待ち受けているのです。名門私立のスタンフォード大学に近いパロアルト市の大きな道路で、スクールバスの後ろで止まらなかった罰として、636ドル(約6万円)の罰金を課せられたという実話もありました。
 きっとこの方の場合は、同じ方向に進んでいたところ、道が大きい(片側に2、3車線ある)ので、ついついバスを追い越してしまったのでしょう。

この手の交通違反チケットは、駐車違反(parking violation)のような軽いものではなく、スピード違反(speed violation)と同じように立派な「運転上の違反行為(moving violation)」と見なされます。ですから、3年以内に2回以上やると、車の保険料もグイッと上がるわけですね。

まあ、アメリカの場合、交通法規は州ごとに若干違ったりするので、少々面倒くさい話ではありますけれども、どこにいたとしても、黄色いスクールバスには気を付けて、まわりの車に従うのが無難だと思います。

なにはともあれ、「黄色は注意の色」というのは、万国共通の理解でしょう。


そして、スクールバスと言えば、近頃、ちょっと心配な話も聞こえています。

ご存じのように、アメリカは国だけではなくて、どの州も、どの自治体も「金欠病」にかかっているので、どうやって予算をカットしようかと頭を悩ませているのです。

そこで、出てきた案のひとつが、スクールバスをカットしようというもの。バスの台数を減らしたり、停留所の数を減らして運行の迅速化に努めたりと、あの手この手でお金をセーブしようと必死なのです。

なんでも、全米の自治体の23パーセントが、この秋からスクールバスを減らすことを考えているそうで、子供たちや保護者に対する影響も甚大なものになりそうです。

なにせ全米で学校(小中高)に通っている5千万人の生徒(巻末の注でご説明)のうち、半分の2千5百万人はスクールバスを利用しているということです。ですから、バスが利用できなくなると、個人の生活パターンがガラリと変わってしまって、全体ではかなりのインパクトが出てくることが予想されるのですね。

全米学校交通協会(National School Transportation Association)の代表者は、「スクールバスの代わりに、保護者のすべてが自家用車で子供を学校に連れて行けるわけではないので、学校に通えない子も増えてしまう」と警告を発しています。
 アメリカにも、車を持てない人はたくさんいますし、仕事の都合で登下校時に送り迎えができない人もいます。ですから、学校が遠くて、歩いて通ったり、自転車で通ったりできない子供たちは、登校の手段がなくなってしまうのですね。

それに、アメリカの場合、歩いて通うなんて危険な感じもするのです。いつどこで誰に連れ去られるかわからないではありませんか。

先日も、こんな実話がありました。北カリフォルニアの観光地タホ湖の近くの街で、18年前に女の子が誘拐され、その子が29歳の女性に成長して発見されたと。
 この誘拐事件は、登校途中にスクールバスの停留所に向かっていて起きた事件なんだそうです。継父が玄関先から娘が連れ去られるのを目撃していたので、急いで自転車に乗って、途中まで犯人の車を追いかけたのだとか・・・。

ですから、交通法規うんぬんだけではなくて、登下校時の子供たちには、まわりの大人たちが目を配ってあげることも大事なのでしょうね。

これからは、コミュニティー全体で子供を育てていく時代となるのでしょう。

注: 2008年のアメリカの人口推計では、小中高の年齢層は5千3百万人だそうですが、実際に学校に通っている子は約5千万人。中にはホームスクーリング(homeschooling)、つまり、学校に通わないで自宅で勉強している子供たちも何百万人かいることでしょう。


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