慣れないティップの習慣 ~ アメリカ編
日本から外国に足を伸ばして、まず戸惑うものに、ティップ(tip、tipping)がありますよね。
そう、誰かに何かをしてもらって「心づけ」にいくらか払う習慣です。
日本語では、通常「チップ」と呼ばれていますが、本来は「ティップ(tip)」という発音になりますね。ですから、ここでも「ティップ」と表記することにいたしましょう。
そして、この「ティップ」という言い方のほかに、「グラテュイティー(gratuity)」というのもあります。合わせて覚えておくと便利だと思います。
それで、戸惑う原因のひとつに、各国で習慣がまったく違うことがありますよね。
アメリカの場合は、こんなルールでしょうか。
レストランでは、食べた金額(税抜き)の15~20%というのが、基本的なルールです。(請求書を見て、Taxを足す前のTotalの金額をもとに計算します)
一般的には、18%が平均とも言われています。
けれども、素晴らしいサービスだったら、20%を上回ることもあるでしょうし、あまりにひどい! と思ったら、10%というのもあり得るでしょう。
「あまりにひどいサービスだと、ティップは置かない」と言う方もいらっしゃるかとは思いますが、個人的には、それは良くないと思っているのです。
第一、それほどひどそうな場所なら、最初から入らない方がいいですし、「ティップをゼロにするほどひどい」サービスというのは、そんなにお目にかかれるものではないからです。
ティップを何パーセントにするかだけではなくて、それを計算するのも、ちょっと困ってしまうのです。
まあ、20%はいいでしょう。でも、ワイングラスを傾けて、ほろ酔い気分になっているときに、15%、18%などと計算はできませんよね。
ですから、レストランによっては、懇切丁寧に「15%のとき」「20%のとき」とティップの額を請求書で提示してあるところもあるんですよ。
そして、こちらの写真のように、ティップの一覧表(Tip Chart)なるものも存在するのです。10ドルから99ドルの間で、「15%のとき」「20%のとき」と、ティップの早見表になっているのです。
でも、100ドルを超えたら、足し算をしていかないといけないので、アメリカ人にできるのかな?
もともと、アメリカ人は算数が苦手なのに、ティップなんて、どうしてそんな難しい仕組みができあったんでしょうね?
レストランの他でティップが必要なのは、たとえば、ホテルがあるでしょうか。
ホテルでは、チェックインやチェックアウトのときに荷物を運んでもらったら、荷物一個に対して1ドルくらいベルボーイに払います。
ホテルの雰囲気にもよりますが、我が家では、荷物3個で5ドルといった具合に、ちょっと割り増しいたします。
ホテルの玄関で車を呼んでくれたり、ガレージから車を持って来てくれたりしたら、1ドルくらい払います。車に荷物を入れてくれた場合は、2ドル、3ドルと、少し色をつけますね。
それから、ホテルやレストランにお食事に行って車を停めてもらうことがあるでしょう。「Valet Parking(ヴァレーパーキング)」と呼ばれるものですが、こういうときにも、車を持って来てもらったら、ティップを差し上げます。
そうそう、ホテルのお部屋を掃除してくれるメイドさんですが、こちらは、滞在中に払うものですね。
「チェックアウトのときにまとめて払う」なんていう方がいらっしゃるようですが、2泊以上する場合は、翌朝お出かけするときに、ベッドの枕の上に置いておくというのが一般的ですね。
「滞在中お世話になります」と心づけを置くのが、本来の意味なのです。
金額は、宿泊客ひとりで1ドルというのが原則のようですが、部屋が広かったりすると、ふたりで2ドル以上は置くことがあります。
ちょっと汚しちゃったかな? というときにも、少し多めに置きなさい、というのがルールのようですね。
逆に、チェックアウトのときには、置かないでいいもののようですが、何も置かないのも気がひけるので、何日か泊まったあとには、少し置くこともあります。
その他、髪を切ってもらったら15~20%とか、ホテルのスパでマッサージをしてもらったら15~20%とか、いろいろと場面は考えられますけれども、レストランと同様、料金の2割ほどを渡せば、失礼はないかと思います。
マッサージなどの場合は、すでに10パーセントほどサービス料を追加してあるところもあるでしょう。そういう場合は、2割も払う必要はありませんので、1割ほどでも大丈夫だと思います。
ルームサービスを取った場合は、サービス料として十数パーセントが徴収されることが多いでしょう。
そういう場合は、15% Gratuity included とか 15% Service Charge added と明記されています。
本来は、それ以上払う必要はないのでしょうけれど、請求書のティップの欄に何ドルか追加してあげれば、喜ばれることでしょう。
請求書によっては、Extra Gratuity(追加のティップ)などと書かれてあることもあるでしょう。
そういうのを見ると、何も足さないのも心苦しいですよね・・・これも巧妙な心理作戦でしょうか?
(写真の請求書は、お料理の金額に18%のサービス料と10%の税金が乗っかって、さらに Extra Gratuity の欄があるケースです。15ドルのお料理が、結局20ドルに!)
というわけで、アメリカでは、だいたい「15~20%ルール」か「1ドルルール」が適用されるというお話でした。
まあ、「1ドルルール」の方は、世の中のインフレとは無関係に受け継がれているので、ちょっとフェアじゃない気もいたしますが・・・。
そういえば、ずっと前、アメリカで1ドル札から1ドルコインに変更しようとした時期がありました。
けれども、ティップを1ドル払うときに不便だといった理由で、コインは不人気となりました。
払う側が他のコインと間違いやすいし、もらう側もポケットの中でコインが重い、というような理由でした。お札の方が、なんとなく「ありがたい」気分になることもあるのでしょうね。
ちなみに、写真の1ドルコインは、一番上(裏・表)が「スーザン・B・アンソニー」。女性の参政権(women’s suffrage)を勝ち取ろうと、生涯を社会運動に捧げた方です。
二段目(裏・表)が、先住民族の「サカガウェア」。アメリカ西部を探検したルイス・クラーク探検隊の飢えを救い、先住言語の通訳となってコミュニケーションを助けたとされる、ショショーニ族の女性です。
そして、一番下(裏・表5種)は、アメリカ大統領シリーズ。現在も順次発表中ですが、写真は初代大統領ジョージ・ワシントンから第5代大統領ジェームス・モンローまで(自分で並べてみたら、順番は大正解でした! わたしも少しはアメリカ史がわかるのでしょうか?)
さて、すっかり話題がそれてしまいましたが、お次は、ヨーロッパのティップのお話をいたしましょう。