「ドレスコード」ってなぁに?
前回、ティップ(tip、心づけ)のお話を書いていたときに、ふと思い出したことがありました。
それは、レストランの「ドレスコード(dress code)」についてです。
レストランによっては、「こんな格好でなければ、お店には入れてあげませんよ」という厳しいルールのあるお店があって、これを「ドレスコード」といいますね。
ドレス(dress)は服装で、コード(code)は規則という意味です。つまり、「服装に関する規則」。
外国を旅したときには、ちょっと気をつけた方がいいと思われますので、まずは、アメリカのラスヴェガスで経験したお話をご披露することにいたしましょう。
それは、目抜き通りの大きなホテルの寿司屋さんに入ったときでした。
カウンターに座ったわたしたちの相手をしてくれたのは、ベテランそうな日本女性でした。もう何年もこのお店で働いていそうな、お店のことなら何でも知っていそうな方。
最初はちょっとぶっきらぼうで、何か怒っているようにも感じたのですが、わたしたちがカリフォルニアから来たと知ると、とたんに表情がやわらかくなるのです。
なんだか、仲間でも見つけたみたいに。
そして、そろそろお客さんも帰る頃になると、たまっていたものをぶちまけたい気分になったのか、彼女のお話が始まるのです。
それは、ついさっきまで食事をしていた日本人グループのお話でした。
なんでも、この寿司屋さんには「ドレスコード」があって、男性は短パンやビーチサンダルは着用してはいけないルールになっているのです。
連れ合いのTシャツにジーンズは大丈夫でしたので、きっと「男性の足を見せてはいけない」というのが、最低限のルールなのでしょう。
ところが、日本人数人のグループが入って来たら、そのうちの男性ひとりが短パンにアロハシャツにビーチサンダルといった、ものすご~くカジュアルな格好だったそうです。
そこで、カウンターなどの人目に触れる場所に座っていただくわけにはいかなかったので、もうひとりのアジア系ウェイトレスの方が、普段は使われていない、奥の広間に案内したそうです。
すると、短パン紳士はひどく気分を害したらしく、「僕はカウンターじゃないとイヤだ!」と主張したのですが、まわりの方から「まあ、先生、規則だそうですから、そんなこと言わないで、みんなで奥に行きましょうよ」となだめすかされ、おとなしく奥で食事をしたそうです。
ところが、お会計をする段になって、また短パンがごねるのです。
「ふん、あのウェイトレスは、俺に指図なんかして生意気だった。だから、ティップはゼロにしてやろう!」
すると、この短パン先生の取り巻きも「そうだ、そうだ」と同意したらしく、ティップは1セントも置かなかったそうです。
みんなで800ドル分の食事をしておきながら、1セントも置かなかったんです!
もちろん、このアジア系ウェイトレスの方は、単にお店の規則を守っただけですので、彼女に罪はありません。
もし不満があるのだったら、他のお店に行くか、着替えて出直してくるか、方法はいくらでもあったのです。
現に、このホテルには、カジュアルなレストランはいくらでもありますし、ウェイトレスの方だって、「着替えていらしてはいかがですか?」と勧めたんだそうです。
けれども、「俺のしたいようにできないのは、店が悪い」と勘違いした短パン先生は、ティップをまったく払わないことで、ウェイトレスに罪をなすりつけようとしたのでした。
「何の先生だか知りませんが、あんなにまわりに大事にされているわりには、どこかおかしいですよね」と、日本女性の方はおっしゃっていました。
というわけで、話がちょっとそれてしまいましたが、ラスヴェガスのレストランでは、「ドレスコード」のあるお店が珍しくないようですね。
ですから、いいお店を予約したときには、ちょっと気をつけた方がいいのかもしれません。
たとえば、イタリア料理の「シナトラ」というお店では、男性は「ジャケット着用」が規則なんです。
けれども、Tシャツ姿で行ってしまった連れ合いは、お店に備えてある紺色のジャケットを貸してもらったのでした。「どうか、席では上着を脱がないでください」というリクエストとともに・・・(暑がりの連れ合いは、もう上着の中で「ゆでだこ」状態!)。
こちらのお店は、往年の名歌手フランク・シナトラから名付けられたレストラン。店内には、シナトラさんの写真や1955年に獲得したアカデミー賞のトロフィーが飾られています。
それがお目当てでいらっしゃるお客さんも多いので、格式を保つためには、厳しいドレスコードを破るわけにはいかないのかもしれませんね。
一方、ネヴァダ州のお隣カリフォルニアでは、最近、「ドレスコード」がなくなる傾向にあるでしょうか。
そうなんです。レストランでは、ドレスコードを明記するところは、ごく少数に限られますね。
まあ、カリフォルニア、とくにシリコンバレーのIT企業では、普段からTシャツにスニーカー、暑い夏は、短パンやサンダルで会社に来る人もいるくらいです。
ですから、「ジャケット着用」「ジーンズ禁止」なんて時代錯誤もいいところ! といった感じなのでしょう。
だって、かの有名なFacebook(フェイスブック)のCEO(最高経営責任者)マーク・ザッカーバーグさんだって、ジーンズにフード付きスウェットシャツが「ユニフォーム」だと言われてますものね。
(こちらの写真は、今年4月、オバマ大統領がシリコンバレーにやって来たとき、Facebook本社を訪れた大統領との座談会を主催したザッカーバーグさん。さすがにビシッとジャケット姿で現れたのはよかったのですが、上着はさっさと脱ぎ捨てるし、よく見ると、下はジーンズにスニーカーなんですよ!)
そんなカジュアルなカリフォルニアですが、ゴルフ場のクラブハウスなどは、いまだに「ドレスコード」の厳しいことで有名ですよね。
ですから、ゴルフ場のレストランに招かれたときには、要注意なのです。
ジーンズやデニム生地の服はいけませんし、男性はえりのないシャツを着ることはできません。女性は、えり無し、袖無しでもOKですが、タンクトップはご法度ですね。
とは言うものの、最近は、ジーンズでクラブハウスに入れるところも出てきています。(もちろん、プレー中にはジーンズは着用しませんが、クラブハウスのバーやレストランでは、ジーンズで入れる場所もあるという意味です。)
たとえば、我が家の近くのクラブハウスでは、「一階のカジュアルフロアは、デニム生地はOK」という風に規則が変わったようです。
けれども、二階のフォーマルフロアでは、いまだにジーンズはダメですし、一階のカジュアルフロアだって、午後5時以降は嫌がられそうだし、デニム生地は着用しない方が無難な気もいたします。
実際、「ドレスコードの規則集」を見てみると、なんとなく書き方が曖昧で、ちょっと恐いんですよ。
Casual resort wear is the appropriate mode of dress at the lower level of the Clubhouse.
(カジュアルなリゾートウェアが、クラブハウスの一階にふさわしい装いである)
でも、「カジュアルなリゾートウェア」って何だぁ? と考えてしまうのです。
Sweat pants, leotards and workout attire are prohibited.
(スウェットパンツ、レオタード、スポーツジムに行くような格好は禁止)
とありますので、とりあえず、ジャージー系は「リゾートウェア」ではないようですね。
(それにしても、どうしてそこまで服装にこだわるのかって、たぶん、規則が何もないと、カリフォルニア人は、とことん乱れるからではないでしょうか?)
カリフォルニアがカジュアルなら、ハワイだって、ドレスコードの少ない地域なのかもしれません。
だって、もともと短パンにビーチサンダルが普段着といった感じですものね。
けれども、連れ合いは、ホノルルのレストランでジャケットを貸してもらったことがあるのです! なんでも、泊まったホテルに格式の高そうなフランス料理店があって、ここでは「男性はジャケット着用」が最低限のルールだったとか(まあ、珍しい!)。
そんなTシャツ姿がユニフォームの連れ合いは、東京で定宿にしているホテルに泊まって、レストランの予約をお願いすると、「このレストランにはドレスコードがありますので、どうぞジャケットをお召しになってお出かけください」と、注意されるようになったのでした。
そういえば、先日、サンフランシスコのホテルでも、係員がこんなことを言っているのを小耳にはさみました。
連れ合いがタクシーを呼んでもらおうとしたら、「Tシャツの男性が、タクシーに乗りたいそうだ」と、玄関前のボーイに無線連絡するのを・・・。
いくらアメリカのホテルでも、ちょっと格式の高いホテルでは、あんまりTシャツ姿は見かけないのでしょうね。
それに、もう12月ですし、普通はジャケットくらい羽織るでしょう!