アメリカのテーブルマナー
5月から6月にかけて、アメリカは卒業(graduation)のシーズンとなります。
とくに6月は、小学校から大学まで卒業式(graduation ceremony、commencement)のラッシュアワーです。
(写真は、コミュニティー新聞に掲載された、近くの高校の卒業式の様子。こちらの高校では、みんな白装束ですが、学校によっては赤や青と華やかな彩りになりますね。)
カリフォルニアでは、6月ともなると雨期は過ぎ去り、雨が一滴も降らない乾期に入りますが、そんな晴れのお天気で心配になるのが、熱中症(heat stroke)。
アメリカの卒業式は、屋外の競技場などで開かれる場合が多いので、かんかん照りになると、元気な卒業生はまだしも、招かれた家族の方が倒れたりすることもあるのです。
つい先日の土曜日も、サンフランシスコ・ベイエリアの内陸部で、次々と招待客が倒れる騒ぎがありました。
それこそ、校内には救急車が待機して、倒れた人々を日陰に運んだり病院に搬送したりしたようですが、その日、内陸部は摂氏42度(華氏107度)の猛暑。「あまりに危険だ!」ということで、卒業式が途中でキャンセルされた高校もあったくらいです。
6月は、いつもそんなに暑いわけではありませんが、突発的に気温が上がることもあるのですね。
というわけで、この卒業の季節、卒業生にしてあげることと言えば、まずは、お祝いのメッセージを贈ること。
カードで「おめでとう!」を伝えてもいいし、新聞やネットにお祝いの気持ちを載せてもいいでしょう。
こちらは、「6月16日に卒業特集を組むので、卒業生にお祝いメッセージを贈りましょう!」という地元紙の広告です。
「Congratulations Class of 2013(おめでとう、2013年度の卒業生)」という見出しが、読者の目を引きます。
こんなにソーシャルネットワークが流行っている時代ですが、卒業生にとっても「良いことで新聞に載る」のは、悪い気はしないかもしれませんね。
そして、メッセージだけではなく、お祝いの品を贈ったり、パーティーを開いたりというのもあるでしょう。
いつか近くのクラブハウスのレストランで食事をしていたら、こんな光景を見かけました。
高校の卒業生とお見受けする男のコに、お父さんが箱に入った車のキーをプレゼントしているところを! (車は自分のバイト代で買うコも多いですが、このコは恵まれていますよね!)
というわけで、この卒業の季節、卒業生のために開かれたランチやディナーパーティーに招かれることもあるでしょう。
そこで、本題です。そう、テーブルマナー!
アメリカのテーブルマナーって、ヨーロッパとちょっと違うんです。ですから、そこのところを、ご説明しておこうかと思いまして。
とくに、ナイフとフォークの使い方がヨーロッパと違うんですね。
ヨーロッパ式では、左手にフォーク、右手にナイフを持って、ナイフで切ったものは、そのまま左手のフォークで口に運びますよね。このとき、右手にはナイフを握ったままです。
ところが、アメリカの場合は、ナイフで切ったあと、右手のナイフを置いて、フォークをわざわざ右手に持ち替え、右手のフォークで口に運ぶのです。これが、正式なマナーです。
一回ごとにフォークを持ち替えるのは面倒なので、ステーキなどを切る場合は、いくつかの細切れを切っておいても大丈夫です。
でも、口に運ぶのは、あくまでも右手に持ち替えたフォーク。持ち方は、鉛筆を握るときみたいに、スプーンの握り方と同じです。
食べ物を切ったあと、右手のナイフを置くときには、皿の右端に静かに置くのが基本です。使ったものなので、テーブルの上には置きません。
それで、フォークを右手に持ち替えたら、何も持っていない左手は、ひざの上にお行儀よく置きますね。
もちろん、このとき背筋はピンと伸ばして。猫背(slouching)になってはいけません。
そして、口のまわりにソースが付いたかな? と思ったら、ナイフもフォークも置いて、ひざの上のナプキンで口元を軽く押さえます(そう、ひざの上には、必ずナプキンを置いておきましょう!)。
食事中に、よくアメリカ人が口元をナプキンで拭く(blot the mouth)のは、口のまわりに何か付いていたらマナー違反だと思うからです。
そうそう、ちょっと前にサンフランシスコのバーで地元の野球チームを応援したことがあったのですが、男性4人組がテーブルでハンバーガーを食べていて、みなさん、ひざの上のナプキンでちょこちょこ口のまわりを拭いているのを見て、おかしくなったことがありました。
どんな人でも、どんな格好をしていても、「口元はきれいに!」が基本です。
それから、食べるときにくちゃくちゃと音をたてるのはいけませんね。
とくに、音をたてて食べ物をすする(slurping)のは、いけません。
たとえば、スープをすするとか、麺類をすするとか、すする音は嫌われます。
こちらは国によって違う部分もありますので、逆にアメリカ人が日本に来てソバを食べるときには、「ちゃんと音をたてて、すすって食べなさい(You have to slurp when you eat soba noodle)」と教えてあげた方がいいでしょう(と言いながら、ソバをすするのは、かなり難しい芸当ですよね)。
というわけで、アメリカ式テーブルマナーをざっくりとご説明いたしましたが、ナイフとフォークの使い方を見ていたら、ヨーロッパを旅していても「あ、あの人はアメリカ人だ!」と、すぐにわかるのです。
小さい頃は、わたしもヨーロッパ式で育ちましたが、そのうちアメリカ式に慣れたら、今はもう、左手のフォークでは食べられなくなってしまいました!
慣れってコワいものなのです。
追記: わたしがアメリカ式テーブルマナーを学んだのは、大学の寮のカフェテリアでした。友達の男のコが親切に教えてくれたのですが、彼は(思いのほか)育ちが良かったのかもしれません・・・。
それから、最後の写真は、東京・六本木ヒルズ近く、旧テレ朝通りにある「欅(けやき)くろさわ」の玉子とじ蕎麦です。とくにソバが好物でないわたしでも、「とろり感」にハマってしまうおいしさなのです。