カリフォルニアの「干ばつ」で困ったことに
え、骨のように乾燥している?
ヘンテコリンな表現ですが、こちらは「極端に乾燥する」ことを表す慣用句です。
なんとなく、カランカランと乾いた音が聞こえてきそうではありませんか?
ところが、こちらの新聞記事は今年のものではなく、2年前(2012年)の1月のもの。
ということは、カリフォルニアの干ばつも今年で3年目。火花さえあれば、すぐに発火する状態です。
実際、今年は山火事(wildfires)のシーズンも、例年より早く始まりました。
いつもは5月まで続く雨季ですが、今年はもう5月には、山々が茶色に乾燥していました。
となると、誰かの捨てタバコやキャンプファイア、作業中の電気ノコギリの火花といった、ちょっとした火種が山火事の原因になるのです。
現在、オレゴン州に近い北カリフォルニアのシャスタ郡では、山火事が広がり、数十軒に避難勧告が出ていますが、出火の原因は、トラックの排気ガス(exhaust from a truck)!
なんでも、マリファナを違法に栽培する山奥に資材を運び込もうとしたら、トラックの排ガスから乾燥しきった草に引火したとか。
このトラックの運転手はすでに逮捕され、危険な出火(recklessly causing the fire)とマリファナ栽培(marijuana cultivation)で、重罪(felonies)に問われるそうです。
アメリカでは一般的に、重罪のfelony(フェロニー)と、軽犯罪のmisdemeanor(ミスディミーナー)という区別がありますが、「火を起こす」ことは、重罪に当たるわけですね!
出火から1週間、燃え盛る火は半分しか消し止められていませんが、出火現場の辺りでは遺体も発見されたそうなので、「殺人」の罪も加わるかもしれません。
そんなわけで、ちょっとした火花で発火するものですから、今年は例年よりも山火事の件数も増えています。
年初から7月12日まで、カリフォルニア州の山火事は3,198件。一日平均16件。
過去5年では、一日平均11件(同期平均 2,315件)だそうで、今年はずいぶんと増えています。
(カリフォルニア州の消防機関 Cal Fire(キャルファイア)発表のデータ: その後、こちらのデータは更新され、2014年の年間件数は 5,620件ということです)
そして、山火事とともに心配なのが、水不足(water shortage)。
カリフォルニアのブラウン州知事は、もう1月のうちに「みんなで20パーセント水の使用をカットしよう!」と州全体に呼びかけていました。
ところが、州が発表したデータによると、節約どころか、過去3年間の5月期に比べて、今年5月の水の使用量は1パーセント増えていたとか!
たとえば、州都サクラメントのある地域では、13パーセント減。サンノゼやサンフランシスコの「ベイエリア」では、5パーセント減。
内陸の農業地帯サンホアキン地区でも、がんばって10パーセント減と、それぞれに努力の甲斐が数値に表れているのです。
ところが、南カリフォルニアのロスアンジェルスからサンディエゴにかけての人口密集地帯では、8パーセントもの増加が見られたとか!
(Map compiled by the Bay Area News Group, published in the San Jose Mercury News, July 16, 2014)
そこで、憤慨した州は、罰則をもうけることにしたのでした。
そう、「お願いモードの節約(voluntary conservation)」では役に立たないので、「強制的な節約(mandatory conservation)」に切り替えることにしたのです。
外で水を無駄遣いしている人には、一回500ドル(約5万円)の罰金!
という罰則が、7月15日の州水資源管理役員会(the State Water Resources Control Board)で採択されたのでした。
たとえば、前庭の車道や歩道を水で洗わないこと、洗車時にはノズル付きのホースで水を止めること、噴水では水を循環させること、庭に水をまき過ぎて道路にあふれさせないこと、といった規則です。
誰かが「あそこは違反している!」と通報すれば、担当者が現地に赴き、初回は訓告、二回目からは500ドルの違反チケットを切ることになるそうです。
この「罰金500ドル」の案は、今月初めから庶民にも聞こえていたのですが、その時点では詳細がわからなかったので、余計に不安がつのったのでした。
実際、サンノゼ市の我が家の辺りでも、かなりナーバスになっていて、先週、あるご近所さんは、わざわざ市の水道局職員を呼んで、水漏れがないかチェックしてもらったそうです。
すると、その翌朝、目の前に市の車が止まっているではありませんか!
何だろう? と見てみると、お向かいさんの水道メーターを検査している人がいます。
ですから、すかさず彼に近寄って、庶民はどう対処したらいいのか? を聞いてみることにしました。
このジャスティンさん、最初のうちは「この人、何の用だろう?」と警戒していたようですが、わたしが「最近のニュースにおののく一住民」だとわかると、安心させるように説明してくれました。
実は、我が家の辺りは、サンノゼ市の大部分がお世話になっている水道会社とは違って、市役所が直接水の供給を行っている地区なので、3万戸に満たない加入者が、入手経路も微妙に違う水を使わせてもらっているそうです。
ですから、他の地域で行う罰則は必ずしも当てはまらないし、市役所自体もまだ方針を固めていないとか。
現時点では、住民が最も気にしないといけないことは、どこかに水漏れ(leakage)はないか? ということだけれど、市役所が最近入れ替えた水道メーター(写真)は賢いので、水漏れがあるかないかは、見ればすぐにわかるんだそうです。
まあ、電気ガス供給会社PG&E(ピージーイー)の「スマートメーター」みたいに、会社にデータが自動的に送られてくるほど「スマート(賢い機械)」ではないけれど、この新機種では、水漏ればかりではなく、部品交換が必要だとか、様々な情報が得られるそうです。
ついでに、このメーターは、従来のように担当者がわざわざ各戸の重い蓋(写真)を開けて使用量を読むこともなく、トラックで近くを通るだけで、担当者のモバイル端末に「今月は何HCF(注)」とデータが現れるようになっているとか。
というわけで、「現時点では、あんまり心配しなくていいよ」というジャスティンさんのメッセージではありました。
実際、カリフォルニア州全体には、270ほどある水の供給団体。自治体が経営するものもあるし、民間企業が経営するものもあるし、すべての団体はカリフォルニア州(the California Public Utilities Commission: 州公益委員会)の規制を受けているものの、具体的な対応は、かなり異なってくるようです。
そして、罰則を決めた州水資源管理役員会も警察機構ではないので、「罰則」の法的拘束力は低く、おのおのの団体が決めたルールに口出しは難しいとか。
なんとなく、罰則についてはカリフォルニア州全体でバラバラな対応になりそうですが、肝心の水に関しても、自治体によって水源が枯渇しているところと、そうでもないところがあります。
ですから、「水の節約」に対しても意識的にばらつきがあるようです。
「シャワーの時間を減らすために、髪を短く切ったわ」
「うちは、家族3人みんなで一緒にシャワーを浴びることにしたわ」
「シャワーが温水になるまで水がもったいないから、バケツにためて庭にまくのよ」
「わたしは、野菜を洗った水を一日ためておいて、夕方、主人にまいてもらうの」
といった涙ぐましい努力も聞こえてきます。
そして、お向かいさんやご近所さんが水道局職員を呼んだのも、「我が家の使用量が増えているのは、水漏れのせいかしら?」と心配になったからでした。
そうかと思えば、水の節制に関して北カリフォルニアと南カリフォルニアで大きなばらつきがあるので、「不公平だわ!」と不満の声もあがっています。
二ヶ月に一回、サンノゼ市から届く請求書。今月は、さすがに「目を皿のようにして」数字をにらんでいました。
夏になると、庭の芝生が枯れそうになるので、泣く泣くスプリンクラーの放水時間を増やしたのですが、そのおかげで、使用量は増えているではありませんか!
昨年同期に比べると7パーセント減ってはいますが、それでも、春先と比べると倍近くになっている!
う~ん、水を欲しがる芝生って、カリフォルニア州の宿敵かも・・・。
注: 文中にある「HCF」という水の単位ですが、こちらは「Hundred Cubic Feet(百立方フィート)」という単位で、サンノゼ市の水道局を始めとして、多くの水供給団体が使用しています。
1 HCF = 748ガロン(1ガロン=3.785リットル)ということで、かけ算しないと具体的な数値がわからないので、わたし自身も今まで気にかけたこともありませんでした。
ちなみに、北カリフォルニアでは、「罰則付きの強制的な節約」では足りないので、独自の「配給制(rationing)」を行っているところもあります。
プレザントン市とサンタクルーズ市では、一定量以上の水を使うと、「べらぼうに高い」水道料を払わされるそうで、月に数万円~10万円の水道料もあり得るとか。
さすがに、こういった地域では、9割の世帯で前年比25パーセント減(!)を達成しているそうです。
ということは、なにかしらの「罰」は必要なのかもしれませんね・・・。
写真の説明: 水源地の航空写真は、サンノゼ市のちょっと南、モーガンヒル市の山側にあるアンダーソン水源地(Anderson Reservoir)。2006年7月の写真なので、今年は水位が下がっているものと思われます。
山火事の航空写真は、同じく2006年7月にネヴァダ州ラスヴェガスからサンノゼに戻るときに見かけた、州境の国立森林群で発生した山火事。
アメリカでは山火事は大敵なので、子供たちにも火事の恐さを理解してもらおうと、『スモーキー・ベア(Smokey the Bear)』というキャラクターが70年前から活躍しています。
こちらのCMもかわいいですよ(森でバースデーキャンドルは禁物です。だって、山火事のほとんどは、人間が起こすものですからね)。