車線スプリットには気をつけて
「母の日」の日曜日。前日までの雨もやんで、気持ちよくフリーウェイを運転していました。
母の日とあって、普段の日曜日よりお出かけは多いようですが、さすがに平日の混雑はありません。
幹線道路101号線をサンフランシスコに向けて北上中、サンノゼ市を過ぎたところで、急に背後にオートバイが二台現れました。
ふたりは友達なのか、ひとつの車線を仲良く分け合って並走しています。
オートバイは二台とも大きいですが、十分に並走できるくらい車線は広いのです。
追い越し車線(左端の車線)を運転していたわたしは、あわててアクセルを踏んで右横の車を追い越し、右の車線に移ってオートバイに先に行ってもらいました。
すると、二人組は、ブイ~ンと先の方へ飛んで行きました。
さらに進むと、一台のオートバイが背後からいきなり近づいてきます。
突然にライダーが現れてハッとしたものの、道が混んできて右の車線には移れません。
そこで、わたしは車線の左端ギリギリ、黄色く塗られた線の上までハンドルを切り、右の車との間に隙間をあけました。
もちろん、自分と右隣の車の間を通り抜けてもらうためですが、彼は、うまく二台の間をすり抜け、ずんずんと先に進んで行きました。
追い越しぎわに、「ありがとう」とあいさつするように、わたしに向けてピースサインを送ってくれました。
というわけで、こういった光景は、カリフォルニアでは「想定しておいた方がいい」シチュエーションでしょうか。
何かというと、フリーウェイのひとつの車線をオートバイと車が分かち合う、いわゆる「車線スプリット(lane splitting)」という習慣を。(Photo by Lori Shepler / Los Angels Times)
実は、カリフォルニア州の法律では、「車線スプリット」を許可も禁止もしていないのです。
けれども、人口が多く、フリーウェイが慢性的に混むカリフォルニアでは、「安全に行うのであれば、ひとつの車線の中で、オートバイが車を追い越してもいいんじゃない?」と、事実上「容認」されている状態です。
そう、法律では禁止されていないので、許可されているのと同じでしょう? と解釈する人もいるわけですね。
だって、こんなにフリーウェイが混んでいるんじゃ、信号機なしでスイスイ進める「フリーウェイ(freeway)」の意味がないじゃない! と、多くのバイク愛好家が不満に思っているのです。
ま、ここで車線スプリットを正式に許可するには、「安全に車を追い越す」ところがミソでしょうか。
(Photo by Eric Schmuttenmaer – originally posted to Flickr as 2007 California Vacation_234, from Wikimedia Commons)
これに関しては、たとえば「時速50マイル(80キロ)を越えないのであれば、車よりも15マイル速く進んで追い越してもいいんじゃない?」といった提案があります。
けれども、上でご紹介した実例では、75マイル(120キロ)で運転中のわたしをブイ~ンと追い越したのだから、オートバイのスピードは相当出ていたはずですよね・・・。
実は、この「提案」は、昨年5月、カリフォルニア州下院議会に提出され可決された法案なのですが、二ヶ月後、上院議会では否決されています。
もちろん、車線スプリット反対派は、断固として反対したい法案ではあるのですが、賛成派だって、「時速50マイルを越えない」というノロノロスピードの制限が気に食わなかったようです。
さらには、冒頭に出てきた実例のように、ひとつの車線でオートバイが二人並んで走ってもいいの? という疑問もわいてきます。
この「並走」も、車線スプリットと同じように、カリフォルニア州では許可も禁止もしていません。
そう、法律で禁止されていないなら、やっちゃいましょう! と、実際は慣例化しています。
まあ、こちらは車線スプリットよりは安全な感じがしますし、車のドライバーからすると、並走するバイカーは怖くもあるので、「お先にどうぞ、どうぞ」と車線をゆずってくれそうな感じもしますよね。
ところが、母の日に体験した実例では、わたしが車線をゆずったあとは、ガンとして道をゆずらない車がいて、バイカー二人は、べつの車線にスイスイと移っていきました。
「車線スプリット」とか「オートバイに道をゆずる」ことを絶対にしたくない人が。
混雑時には、二輪車は「ダイヤモンドレーン」と呼ばれる優先車線を通ってもいいんですが、絶対に先に行かせるものか! と、わざと邪魔をする人もいるくらい。
まあ、法律では何も定めていないので、違反行為ではないのですが、わたし自身は、こう思っているんです。
これだけ道が渋滞して誰も先に行けないんだったら、せめてオートバイだけでも先に行ってもらったらどうでしょう? と。
でも実際には、「自分が先に進めないのに、誰かが先に行くのは許せない!」という人もいるみたい・・・
(困ったものではありますが、車と接触されるのが怖いドライバーが多いのも実情です)。
というわけで、なんとなく「お気楽な」イメージのある、カリフォルニアの運転。
日本に比べると道がゆったりしていて、二輪車や歩行者の数も少ないのは事実です。
けれども、ひとたびハンドルを握ったら、「何が出てくるかわからない」心の準備だけは必要ですよね。
追記: 車線スプリットや二輪車の並走については、州によって法律が異なります。一般的には「禁止」している州は多いので、訪問先で確認された方がいいようですね。
それから、文中では「時速75マイル(120キロ)で運転中のわたし」という箇所がありますが、カリフォルニア州のフリーウェイの制限速度は、基本的には65マイル(104キロ)です。
けれども、実際には「流れに従って進む」というのがルールですし、「10マイルオーバーまでは許される」という暗黙の了解があるようです(が、あくまでもこれは、ケースバイケースですよ!)。
幸いなことに、カリフォルニアには、交通を取り締まる覆面パトカー(unmarked police cars)はいませんので、白と黒のパトカーを見かけたら、「敬意を表して」減速いたしましょう!