「70、90、100」が目安です
いつの間にやら、夏も過ぎ去ろうとしています。
今まで何回か書いたことがありますが、アメリカでは、9月最初の月曜日が「夏の区切り」とされています。
この日は、「レーバーデー(Labor Day、労働の日)」と呼ばれ、日本の「勤労感謝の日」みたいな祝日。
134年前に、当時ニューヨーク州にあったアメリカ最初の労働組合が提案したのが、「労働の日」の起こり。1894年には、連邦政府の祝日となり、働く人たちを讃える日となりました。
そして、この日を境に、夏のバーベキューシーズンも終わりを迎えます。
そう、5月最後の月曜日「メモリアルデー(Memorial Day、戦没者追悼記念日)」に始まったバーベキューシーズンは、この日をもって、もうおしまい。
夏が終わったんだから、レーバーデーを過ぎたら、白い服を着てはいけない、とも言われます。
代わりに、季節に敏感なレディーたちの間では、モスグリーンとオレンジ、グレーと赤といった、秋らしいコンビネーションを見かけるようになります。
(ま、カジュアルなカリフォルニアでは、あんまり関係のないルールかもしれませんが)
そんな午後は、「70、90、100」のお話をいたしましょう。
こちらは、北カリフォルニアの何かの目安なんですが、
それは、夏の気温。
もちろん、日本の摂氏(Celsius)ではなく、華氏(Fahrenheit)の表示になりますが、いろんな場所で「70、90、100」を越えると、「夏にしても、ちょっと暑いかな?」という目安なんです。
まずは、ご存じ、サンフランシスコ(San Francisco)市。
こちらは、華氏70度(21℃)を越えると、8月にしては暑いかな? という感じ。
お次は、我が家のある、サンノゼ(San Jose)市。
こちらは、華氏90度(32℃)を越えると、いつもよりも暑いんじゃない? といった感じ。
そして、内陸部の地域、たとえばリバモア(Livermore)市あたりになると、
華氏100度(38℃)を越えると、8月にしても暑いよね~、という風になります。
そうなんです、サンフランシスコ・ベイエリアは、気候がバランバランなんです。
「こっちが暑くても、こっちは涼しい」「ちょっと行っただけで、まったく気温が違う」といった様子。
これを称して「マイクロ気候(microclimate、微気候)」といいます。
ですから、ベイエリアをドライブすると、涼しいところから暑いところへ、まさに「冬から夏へ」と、一日のうちに、激しい気温の変化を経験することがあります。
そう、「華氏70、90、100度」つまり「摂氏20、30、40度」という変化を、一日のうちに肌で感じることがあるのです。
ところが、今年の8月は、サンフランシスコ・ベイエリア全体で、涼しい夏だったんです。
ですから、「70、90、100」の目安に達しない日々が続きました。
今年は、世界じゅうが暑くて、「毎月(10カ月連続で)、過去の世界の平均気温を上回っている」と、NASA(アメリカ航空宇宙局)も発表していましたよね。
それでも、ベイエリアだけは例外で、「世界でここだけは、記録に残るような冷夏だよ」と言われていました。
なんでも、サンフランシスコ市で8月に「70(21℃)」の目安に達しないのは、1942年以来、初めてのこと。
サンノゼ市で「90(32℃)」に達しないのは、1980年以来、初めてのこと。
そして、リバモア市で「100(38℃)」に達しないのは、過去20年間で3回目だったとか。
昨年は、「8月にしたって、うだるほど暑いよ~」というお話をしておりましたが、今年は逆に、「もうちょっと夏らしくてもいいのに・・・」とグチをこぼすことになりました。
以前も何度かご紹介しましたが、サンフランシスコが「夏でも20℃以下に冷える」メカニズムは、霧。
サンフランシスコ半島は、寒流の冷たい海に取り囲まれているので、暖かい太平洋で発生した水蒸気が、寒流で急激に冷やされ、冷たい霧となって、半島の先端の街をおおいつくす。
そう、霧は、サンフランシスコにとって「天然のクーラー」みたいなもの。
今年は、それに加えて、北から冷たい雲が張り出してきて、朝晩になると、雲がベイエリアの空をおおいつくしていました。
そんな雲も、昼になると内陸部では晴れるのですが、そこから太陽が顔を出しても、なかなか気温が上がりにくい。そして、夜になると雲がかかって、朝は、また曇り空・・・
そんなことを繰り返しているうちに、例年に比べて気温の低い日々となったようです。
ご存じのように、サンフランシスコという街は、普段から「特殊」な天候で知られるところです。
8月は、霧が発生しやすいので、肌寒い。逆に、太平洋の水温が下がり始めた9月や10月の方が、霧がかかりにくいので、気温が一番高い時期になります。
一般的に、9月から秋に向けて暑くなることを「インディアン・サマー(Indian Summer)」と呼びますが、サンフランシスコは、典型的なインディアン・サマーの場所というわけです。
9月7日、久しぶりに華氏82度(28℃)まで上がったサンフランシスコでは、「こんなに暑くなったのは、5月17日以来、初めてのことだ」と報道されていました。
これから「暖かくなる」サンフランシスコも、これから「涼しくなって過ごしやすくなる」サンノゼも、9月から10月は絶好の観光シーズンとなるでしょうか。
サンフランシスコ・ベイエリアを観光したい! と思ったら、お天気がいい秋にプランされるのは、いかがでしょうか。
だって、10月も後半になると、そろそろ雨季が始まってしまいますからね。
追記:
「100」が目安となる内陸部の都市で、リバモア(Livermore)という街の名前が出てきましたが、こちらは、ベイエリアの東側の内陸部にあって、「ヨセミテ国立公園」に向かう途中、風力発電のタービン群を見かける辺りです。
ローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)という、国防に携わる研究機関もあり、歴史的に核開発の研究で有名です。近頃は、研究内容も多角化していて、ここに勤務する知り合いは、「テロ対策」のために、街角に設置する「病原菌探知機」を開発している、と話していました。
それから、冒頭の「水遊び」の写真は、海みたいにでっかいタホ湖(Lake Tahoe)の夏の様子ですが、この辺りは標高が高く、「まだ暦の上では夏なのに、途中のシエラネヴァダ山脈では雪が降った」と、昨日のニュースで報道されていました!