年末号:ハイテクおもちゃいろいろ
Vol. 89
12月といえば、アメリカの購買力がぐんと増える時期。驚くことに、インターネットの検索件数では、検索専門のグーグルよりも、オークションサイトのイーベイの方がぐんと上回っているとか。おまけに、イーベイで売り出されているティファニーのアクセサリーは、4分の3が偽物だとも言われています。 「この国はいったい何なんだ?」と思ってしまうこの頃なのです。
そんな年末、この2006年という一年を振り返ってみることにいたしましょう。書きたい分野はいくつもありますが、今年話題となった新製品など、「ハイテクおもちゃ」をテーマにお送りいたしましょう。
<今年の新製品:マイクロソフト編>
年末商戦も真っ只中。今年は、マイクロソフトのポータブル・メディアプレーヤー「Zune(ズーン)」や新型ゲーム機の登場で、家電製品全般の売り上げも好調のようです。一度電器屋さんに入ったら最後、なかなか出て来られないのです。
インターネットで検索される製品名の上位には、勿論、任天堂の「Wii」も食い込んでいますが、検索数でいくと、ソニーの「プレーステーション3」を上回っているとか。やっぱり値段なのでしょうか、それとも、家族全員にアピールするゲームの親近感でしょうか。まあ、在庫がなければ買うこともできませんしね。
任天堂と言えば、Nintendo DSの『脳トレ』は『Brain Age(脳年齢)』という名で売られていて、なかなかの人気のようですよ。
さて、今年を振り返って、印象に残った新製品といえば、やっぱりマイクロソフトの「Zune」でしょうか。アップル・コンピュータのiPodに対抗すべく、アメリカ市場で11月中旬に発売されたポータブル・メディアプレーヤーです。30GBの一機種のみで、値段は250ドルです(iPodの30GBモデルは249ドル)。
まあ、第一ラウンドでいきなり巨頭iPodにかなうわけはないでしょうが、ゲーム機Xbox 360と同じで、お金のあるマイクロソフトがどこまでがんばりを見せるか、ちょっと楽しみなところです(ちょうどひと月たった時点でのZuneのシェアは、ハードディスク内蔵型メディアプレーヤーの9%、フラッシュメモリー内蔵モデルも含めると、1.9%ということです。ちなみに、大御所iPodの方は、それぞれ83%、62%だそうです。リサーチ会社NPD発表データ)。
個人的には、Zuneのイメージカラー「マットな茶色」はちょっと地味だし、アップルのiTunesを真似して、独自の「Zune Marketplaceサービス」を使わないといけない方針が気に入りません。
けれども、画面は大きくて見易いし、使い勝手もよさそうだし、なかなかよくできた製品ではあるようです。WiFi機能は、今のところ、Zune同士でコンテンツのやり取りができるだけですが、将来的には、ワイヤレスで音楽や動画をダウンロードできる拡張性があり、大きなプラスです。Zuneのデザインはマイクロソフト、製造は東芝が担当しています。
写真は、茶色ではなく、黒のZuneで、他に白いモデルもあります。黒が圧倒的な売れ筋だそうですが、大型量販店Targetでは、どのモデルもすべて売り切れでした。
マイクロソフトと言えば、昨年末に発売された第二世代ゲーム機Xbox 360の伸びは、目を見張るものがありますね。PS3内蔵のBlu-rayドライブの向こうを張って、HD DVDプレーヤーをオプション販売するようにもなりましたし。
マイクロソフトのビル・ゲイツ氏は、「Xboxでは、ソニーの堂々たるコンペになった」と胸を張って語っていたし、スティーヴ・バルマー氏は「今年は、Xboxクリスマスだ!」と叫んでいたし、社内でもかなりの注目株なのでしょうね。
まあ、彼らの製品は、第二世代以降にならないと良くならない嫌いはありますが、だんだんと消費者の心をつかんで来たところなのでしょうか。
ところで、「来年はいったいどうなるんでしょうねぇ?」というネット企業の中に、YahooとAOLが含まれています。これに関して、「マイクロソフトは、充分にYahooを買えるよ」とポロッと発言したアナリストがいました。が、ほんとに、いったいどうなるのでしょうねぇ。
<今年の新製品:携帯電話編>
この時期、MP3プレーヤーとともに話題にのぼるのが、携帯電話。今年は、アメリカのケータイ市場もぐんとおしゃれになりました。
たとえば、モトローラの「KRZR(クレイザー)」。これは、おしゃれな薄型で名を馳せた「RAZR(レイザー)」の後継機種で、薄い、小さい、かっこいい、という路線を受け継ぐものです。
中身は、ミュージックプレーヤーとデジタルカメラ付きのケータイで、Verizon Wireless向けのモデル(EVDOネットワーク対応)だと、ビデオストリーミングも楽しめるという、近頃流行りのものです。デザイン的にはちょっと長いのが難点ですが、ほんとに薄くて、かっこいいです。
Verizonのショップで聞いてみると、実は、この新型「KRZR」よりも、まだまだ「RAZR」の方が売れているとか。どうしてって、「KRZR」が2年契約で250ドルなのに対し、「RAZR」はたったの100ドルだから。
そして、このモトローラの「RAZR」よりも、売れ筋のものがあるのです。LGの「Chocolate(チョコレート)」です。これは、ケータイとミュージックプレーヤーがうまく融合した製品で、とっても小さくて、軽くて、女の子には受けそうなモデルです(正式名称は、VX8500とかKG800などと味気ないので、もっぱらチョコレートと呼ばれています)。
クリスマスのシーズン、赤が一番売れているということでしたが、もともとの黒に加え、ミント(黄緑)、ホワイト(白)、チェリー(赤)を追加したのが、受けている理由のようです。
テレビでも、ベルトコンベヤーに載った黒のモデルに、色とりどりのシュガー・コーティングがなされるコマーシャルが流れていて、おしゃれな印象を与えています。おまけに、この時期、たったの100ドルだとか。
このChocolateは、iPod風のフェースがパカッとスライドして、中からキーボードが出てくるタイプですが、この「スライダーフォン」の形式は、これからの流行りだそうです。
モトローラの新機種に「RiZR(ライザー)」というのがあって、こちらもポケットサイズのスライダーフォンです。コンパクトで、なかなかいいケータイだとの評です。
残念ながら、今は携帯キャリアが販売していないので、SIMロックが解除された(Unlocked)モデルを、オンラインショップで買うしかありません。よって、値段が350ドル近辺とお高いです。
一方、サムスンの「BlackJack(ブラックジャック)」も注目株です。キャリア最大手のCingular一押しの新製品で、いわゆるビジネス向けのスマートフォンと呼ばれるものです。
内蔵ソフトは、わたしが使っているパームの「Treo 700w」と同じく、マイクロソフトWindows Mobile 5.0なので、ビジネスにも充分活用できます。製品の位置づけとしては、薄さで話題となったモトローラ「Q」の対抗機種ですが、もっと薄くて、精悍な感じの製品になっています。
テレビでもさかんに宣伝していて、マジシャンの手が、トランプのようにヒラヒラとBlackJackを扱う様は、目を奪われるようです。値段も200ドルと、お手頃なのが受けています。
3.5GのHSDPAネットワークに対応し、Cingularの音楽サービスやビデオサービスも利用できます(Cingularの音楽サービスCingular Musicは、競合のVerizonやSprintにずいぶんと遅れ、11月に本格的な開始となりました。独自のサービスではなく、Yahoo MusicやNapster to Goなどと提携しています。動画の方は、ビデオクリップのストリーミングに加え、MobiTVサービスで、テレビ番組のストリーミングも観られます)。
Cingularのキオスクで聞いてみると、意外にも、この「BlackJack」よりも、同じくサムスンの「Sync(シンク)」の方が売れているということです。こちらは、スマートフォンではなく、折りたたみ式のコンパクトなケータイです。
見た目は、何の変哲もない、ただの黒いケータイですが、中身的には、HSDPAネットワーク対応だし、ステレオBluetoothや2メガピクセルのデジカメも付いていて、見劣りはしません。2年契約で50ドルと、非常に廉価なのが受けている理由のようです。
Cingularがスマートフォン「BlackJack」を前面に出しているのに対し、T-Mobileは、「BlackBerry(ブラックベリー)」で対抗しています。
ここでも何回かご紹介していますが、BlackBerryは、リサーチ・イン・モーションが出すビジネス向けメール・デバイスで、今は、どのモデルにも携帯電話機能が付いています。
T-Mobile一押しの機種は、「BlackBerry Pearl(パール)」と呼ばれるもので、今までのモデルよりも、もっとスリムで持ち易いし、メニュー画面の配置なども改良され、ぐんと使い易くなっています。 また、BlackBerryとしては初めてデジカメ機能が内蔵されたし、音楽やビデオの再生機能も付いたし、今までの「ビジネス・オンリー」のイメージを払拭し、一般ユーザーにもアピールする製品になっています。
実際、10月から12月の四半期、リサーチ・イン・モーションの業績は、売上額と契約者獲得数の上では、予想以上だったようです。これも、「BlackBerry Pearl」のお陰で、一般消費者にも裾野を広げたからだとか。
せっかく一般ユーザーにもアピールできるようになったのに、間もなく出る「BlackBerry 8800、通称Indigo」には、デジカメ機能は付いていないそうなので、さっそく「カメラ付けてよ?」といった声が聞こえています。現在、スマートフォンを使っているのは、アメリカの携帯ユーザーのわずか2パーセント。これから伸びる素地は、充分にあるのです。
T-Mobileのショップで話を聞くと、まあ「BlackBerry Pearl」も売れているけれど、一番の売れ筋は、モトローラの「RAZR」だよということでした。ここには、リミテッドバージョンがいくつかあって、たとえば、アパレルブランドの「Dolce & Gabbanaバージョン」は、ピッカピカの金色です。隣には、濃いショッキングピンクのRAZRもあって、お店の中は、なかなか華やかな感じでした。
T-Mobileは、若手のユーザーに向けて、月額40ドルで、仲の良い友達5人に無制限に電話できるという「myFaves」サービスも展開していて、これも売上げに貢献しているのでしょうね。
そういえば、先日、人気テレビドラマ『スーパーナチュラル』を観ていたら、大学生の女の子が、淡いピンクのRAZRを使うシーンがありました。今は、ドラマや映画でのプロダクト・プレースメントも、大事なマーケティング手法なのですね(プロダクト・プレースメントとは、ドラマや映画の中で、商品やブランド名を何気なくしのばせる新手の広告手法のことです)。
でも、この女の子、ケータイで会話中事故に遭って、そのあとゾンビになってしまったので、あんまりいい印象ではないかも・・・
追記:Verizonのショップで、担当者がこう聞いてくるのです。「あれ、LGって日本の会社だから、Chocolateだって、日本で売ってるんじゃないの?」と。すると、マネージャのおじさんが彼にこう言うのです。「違うよ、LGは韓国の会社で、サムスンが日本の会社だよ」って。
まあ、このおじさんマネージャ、お世辞にも親日家とは言い難いタイプの方でしたので、韓国と日本がいっしょくたになっているのでしょう。でも、ちゃんと、ソニーとサンヨーが日本の会社だとは知っていましたけれどね。
<来年出るケータイ!>
さて、来年のケータイは?と言うと、もうすぐアメリカの店頭に現れる機種の中に、パームのTreo 750があります。
まず、今年のTreoは、Palm OSの新機種Treo 680も登場し、ラインアップも4種類になりました(Palm OSのTreo 680二種と700p、Windows Mobile OSのTreo 700w)。
11月発売となったTreo 680は、エントリーレベルのTreoで、Cingularから2年契約200ドルで売れ出されています。見た目に劇的な変化はありませんが、今まで邪魔だったアンテナが消え、すっきりしたデザインになっています。
特筆すべきは、これまでのグレーを脱皮し、コッパー(橙)、クリムソン(赤)、アークティック(白)の3色が加わったことでしょう。けれども、この新色はCingularからは出ていないので、SIMロック解除のものを直接パームから購入する必要があります。ゆえに、値段は400ドルと高めです。
新しく出るWindows Mobile OS のTreo 750は、ヨーロッパのユーザーを念頭に開発されたもので、Vodafoneがヨーロッパで先行して売り出しています。
アメリカ市場では、まだまだ「スマートフォンといえばTreoとBlackBerry」といった統計もあるくらいなので、Treo 750が出現すると、Treo全体の売上げ増加につながると、熱い期待が寄せられています(今年前半のアメリカ市場でのスマートフォン販売台数シェアは、Treoが34%、BlackBerryが29%ということです。リサーチ会社Telephia発表データ)。
11月までの四半期では、Treoの販売台数は、前年同期比42パーセントもアップしています。新機種を出せば、まだまだ、成長株なのかもしれませんね。
一方、こんな噂もありますね。いよいよ、アップル・コンピュータの"iPhone"が1月に出るよと。マックワールドには間に合わないにしても、その翌週あたり、発表されるんじゃないかと。
いつもの通り、アップルの厚い秘密のヴェールに包まれ、"iPhone"と巷で呼ばれているこの製品が、いったいどんなものかはまったくわかっていません。まあ、iPodベースのケータイ(スライダー式?)とはささやかれていますが、いくつかシナリオが考えられます。
まず、ひとつめは、Cingularなどの大手キャリアから専属で出す。以前、iTunesソフトが載ったモトローラの「ROKR(ローカー)」もあったことだし、Cingularとのペアは充分に考えられる。まあ、これが一番手っ取り早い方法ですが、プライドの高いアップルがキャリア一社で満足するか?という疑問が残ります。
お次は、キャリアのネットワークを借り受け、いわゆる、仮想移動体サービス事業者(MVNO)として自分でサービスを運営する。でも、これだと、まったく不慣れな業種に切り込むことになってしまいます。
3つ目の可能性は、エンドユーザーに直接売り出し、ユーザーは好みのキャリアのSIMカードを挿して使う。しかし、この場合、キャリアの補填がないので、デバイスの値段が高くなるでしょう。それに、別のモデルを作らない限り、CDMA陣営のVerizonとSprintには対応できません。
もしかしたら、まったく違うテクノロジー、たとえばWiFiを使うんじゃないか、とも憶測されています。けれども、ワイヤレスなら、せめてWiMax?それに、IP電話サービスは誰が提供するの?といった疑問もあります。
たとえば、"iPhone"をキャリアに提供する形だと、デバイスを売り切っておしまいです。音声やデータサービスの収入は入って来ません。おまけに、モトローラ、ノキア、サムスンといったデバイスメーカーと真っ向から競合することになります。すると、やっぱり、MVNO?
いったい、どんな"iPhone"が出てくるのか、来年初頭のお楽しみではありますね。 ちょっと目を離していると、知らないうちに新製品がどんどん出ている。アメリカのケータイ市場も、ここまで成長いたしましたよ!
追記:WiFi機能を搭載するケータイとしては、ドイツテレコムの子会社T-Mobileが、間もなくシアトル辺りでテストを開始するとも発表しています。普段は、携帯ネットワークを使い、屋内ではWiFiルータを経由し、IP電話を利用するタイプです。
無制限の通話サービス提供で、携帯ネットワークにも負荷がかかっているし、今となっては自宅でもケータイを使う人が増えているわけだし、なかなかいい案でしょ、とT-Mobileは言っています。
業界団体WiFi Allianceも、CTIAと共同で相互接続性や信頼性テストを行うようですし、実現への動きは出ています。
<ちょっとはずしちゃったね>
今年は、「わ、すごい!」というよりも、「ちょっとはずしているんじゃない?」という点で、印象に残ったものもいくつかありました。
その筆頭となるのが、何と言っても、「モバイルESPN」。ESPNとは、アメリカのスポーツ専門のケーブルテレビ会社で、三大ネットワークのABCと同じく、ウォルト・ディズニーの傘下です。
このESPNが今年2月に始めたのが、携帯電話サービスの「モバイルESPN」。いわゆる、仮想移動体サービス事業者(MVNO)というもので、大手キャリアSprintのネットワークを借り、サービスを提供する形態を採っています。
その名の通り、通常の携帯電話サービスに加え、スポーツ関連のプラスアルファが付いています。唯一の対応機種サンヨー「MVP」の「Eボタン」を押せば、あっと言う間に、ESPNのスポーツニュース速報にアクセスしたり、ごひいきチームのスポーツ中継が観られたり。
まあ、スポーツファンには、なかなか良さそうな「モバイルESPN」。悲しいことに、サービス開始8ヵ月後には、早々と撤退宣言をしてしまいました。
理由はごく簡単。利用者が集まらないので、商売にならなかった。初年度25万人を目指していたところが、実際は、8ヶ月で3万人しか契約者が現れなかったとか。
そこで、こう思うのです。いつでもどこでも好きなスポーツチームの活躍が観られるのはいいでしょう。でも、もしそこまで好きなら、大きな画面で観るでしょう?
スポーツ中継こそ、臨場感!だから、ケータイの小さな画面で観ても、つまらない。きっと、多くの人が、そう思ったのでしょう。
そして、もっと問題なのが、ブランドイメージ。スポーツのESPNが携帯サービス?iPodのアップルならいざ知らず、何の関連もない畑の人たちでしょ?多くの人にとって、MVNOの概念は遠いものなのです。
今、アメリカでは、新しい携帯ブランドがたくさん出てきています。成功例で行くと、4百万人の契約者を持つVirgin Mobile USAがあります。
今年出現した中には、若者をターゲットにコンテンツ提供するAmp’dやHelioがあります。前者は、クウォルコムとメディア企業体のヴァイアコムが出資し、MTVやアニメ、スポーツといった多種多様のコンテンツを提供します。後者は、ISPのEarthlinkと韓国のSKテレコムが出資し、各種コンテンツに加え、ソーシャルネットワーキングサイトMySpaceへのリンクボタンを売り物にしています。
ESPNの親会社であるディズニーも、「Disneyモバイル」というのを提供しています。これは、今年6月に始まったばかりの家族向けサービスで、GPSを使った居場所捜しだとか、特定の電話番号にしかかけられなくするとか、子供に特化した機能も付いています。
Disneyモバイル、Virgin、Helioは、Sprintネットワークを、Amp’dはVerizon Wirelessのネットワークを利用しています。
Amp’dを販売するVerizonショップで聞いてみると、新ブランドの知名度は、まだまだ低いということでした。
また、Disneyモバイルのような「居場所捜しサービス」はVerizonでも出しているけれど、みんななかなか飛びついてくれないとのことでした。来年になると、多くのケータイがGPSチップ搭載となるので、状況は変わるのかもしれませんが。
Amp’dの人気コンテンツの中に、ケータイ用に制作された『Lil’ Bush』というのがあるそうです。ブッシュ大統領を茶化したシリーズ物だそうですが、やっぱり、意表を突いたコンテンツが物を言うのでしょうか。
それとも、HelioのMySpaceリンクボタンみたいに、ソーシャルネットワークやYouTubeみたいな情報発信サイトとのコンビが受けるのでしょうか。Time誌の「今年の人」みたいに、今の時代、やっぱり「あなた(You)」が主役なのかも。
<おまけのお話:ボーナス>
今も日本には、年末のボーナスなんてあるのでしょうか。年棒制の導入で、日本の会社でもボーナスなんて過去のものになりつつあるのかもしれませんが、アメリカでも、ボーナスの有無はまちまちです。
けれども、その中で、ボーナスで有名な分野があります。金融業です。プロの投資家は、一年の出来高によって、驚くほどの額のボーナスをドカッと得る人もいるのです。
いや、一介の投資家に限りません。先日、話題になっていたもので、投資銀行モーガン・スタンレーのお偉いさんが、4千万ドル(約47億円)をご褒美としてもらったというのがありました。しかも、その記録は、わずか数日後に、ゴールドマン・サックスのお偉いさんに破られたそうな。
そこで、ふと疑問に思うのです。アメリカの大企業のお偉いさんは、日頃から何十億円、時には何百億円と言う給料や自社株(ストックオプション)をいただいていたりするのです。そこで何十億円のボーナスをもらったって、何の足しにもならないんじゃないかって。彼らにとっては、1億も50億も誤差の範囲じゃないかって。
いや、普通に考えると、アメリカで数億円持っていれば、利子で充分に食べていけるのです。それは、豪邸を建てたり、自家用ジェットを持ったりすれば、少しはお金がいるでしょう。でも、絶対に生活に困らない人に、どうしてそんなに法外な報酬を与えるのかと。
そこが、日本人の庶民とアメリカの企業のトップとの違いなのですね。彼らは、金額にこだわっているわけではないのです。「今の状況下で、何がフェアか」にこだわっているのです。
たとえば、自分がトップに就任して以来、利益がこんなに伸びた。だから、自分はその何パーセントかをもらう権利があるのだ。スポーツ選手にしても同じです。自分の実力はこれだけあって、自分の存在によって、チームの収入はこれだけ上がる。だから、その正当な分け前(fair share)を得る権利があるのだ。
アメリカ人は、フェア性に執拗にこだわる人たちです。「公平」の理念は、そこここに掲げられています。職場でも同じです。たとえば、オフィスを引っ越すときは、誰がどの部屋を使うかで大騒ぎになるのです。同じ立場のスタッフには、同じ条件の部屋を与えなければならないからです。
ちょっとでも不公正さを感知すると、こういった文句が出てしまいます。「ちょっとちょっと、僕の部屋は彼女のよりも3平米狭いし、第一、窓からの眺めが悪いよ」と。
誰かがこの公平の掟を破れば、システム全体が崩壊してしまうのです。秀でた人には、相応に報いるというシステムが。
大企業のトップでも、アップル・コンピュータのスティーヴ・ジョブス氏や、シスコ・システムズのジョン・チェンバース氏のように、年棒1ドルという人もいます(これは象徴的なもので、実際は自社株をかなりもらっているようではあります)。
それに、オークションサイト・イーベイのメグ・ホイットマン氏のように、高層ビルの日当たりの良い角部屋でなく、小さなキュービクルで満足している経営者もいるようです(キュービクルとは、広いオフィスを細かく間仕切ったスペースのことですね。そう、映画『マトリックス』で、主人公のネオが勤めていたソフトウェア会社のような、小さなオフィス空間です)。
まあ、人間は、ある程度財を築くと、お金とか立派なオフィスとか、そういった地位の象徴には関心がなくなるのかもしれませんね。ただ仕事がおもしろいから、仕事ができればいいや、みたいな感じ。
そこからさらに財を築くと、マイクロソフトのビル・ゲイツさんや、投資の神様ウォーレン・バフェットさんのように、自分のことよりも、人類への貢献に心が移るのでしょうか。
夏来 潤(なつき じゅん)