お楽しみケータイ:アメリカの娯楽ケータイ最新事情
Vol.76
今まで、この場では携帯電話のお話をほとんどしたことがなかったので、今回は、ちょっと目先を変えて、アメリカの娯楽ケータイ新サービスなどをご紹介いたしましょう。
<楽しいケータイ:音楽編>
原始時代のケータイをそろそろ買い換えようと思って、いろいろと探しているところです。近頃は、アメリカのケータイもずいぶん楽しくなってきて、一般消費者に向け、いろんな付加価値を付けてくれています。どうしても、お金になるビジネス向けサービスが先行してしまう米国のケータイ事情ですが、ここに来て、大変革を遂げつつあります。
まず、音楽です。9月上旬、あのアップル・コンピュータが超薄型iPod nanoを発表したのと同じ舞台で、MotorolaのRokr(ローカー)が大々的にお披露目されました。Rokr E1は、ちょっと大きめのケータイにアップルの音楽管理ソフトiTunesが載ったもので、お気に入りの歌を最大100曲、ケータイに入れて持ち運ぶことができるのです。いわば、ケータイとiPodのハイブリッドですね。携帯キャリア最大手のCingular Wirelessが、サービスを独占提供しています。
着メロ以来、MP3プレーヤ付きの端末はあまたあったものの、ようやく気軽にケータイで音楽が聴けるようになったわいと、一同ぬか喜び。しかし、その実、新しい歌を携帯ネットワークからダウンロードできるわけではなく、自分のパソコンからUSBケーブルで"移す"というものでした。100曲というRokrの許容量も、なんとなく生ぬるい感じではあります。
けれども、若者層に強いCingular Wirelessは、さっそくiPodみたいなおしゃれなコマーシャルを流し、ティーンの注目を集めたのは確かです(激しい音楽をイヤフォンで静かに聴きながら、一方で、影の分身は音楽に合わせて踊っている。でも、着信すると会話に切り替わるので、大事な友達の電話をミスってしまうことはない)。マドンナなんかのセレブがわんさか出てくる、とってもお高いCMバージョンもあります。
発売から3ヶ月、Rokrの人気はじわりじわりと上がりつつあるようで、立ち寄ったショッピングモールのCingularキオスクでは、「昨日の日曜日、5台も売ったのよ」とセールスギャルが語ってくれました。でも、その代わり、デモに使っていた彼女自身のRokrが盗まれてしまったとか(GSM/GPRSを採用するCingular では、SIMカードを差し替えれば、誰でも使えるのです。ですから、紛失や盗難の際、遠隔地から大事なデータを消すなどの機能が必須となってくるのです)。
このCingular Wirelessは、昨年AT&T Wirelessを買収し、それまで最大だったVerizon Wirelessを契約者数で抜き、アメリカで一番大きなキャリアとなっています。もともとCingularは、ひと月に残った会話時間を翌月にまわせるプラン(roll-over plan)を生み出し、若い層に支持を広げていました。
一方、AT&T Wirelessは、ティーンに絶大な人気を誇るテレビ番組"American Idol(アメリカン・アイドル)"で、自分の大好きなアイドル候補者にテキストメッセージで投票できるというシステムを導入しました。ティーンは、大統領選挙なんかよりも、アメリカン・アイドルの方に投票するといわれるくらいの大成功をおさめています(5ヶ月間の勝ち抜き戦で、何千人の応募者の中からたったひとりのアイドルを選ぶ番組です。佳境に入ってくると、毎回、数千万の投票数を誇ります。ちなみに、本物の投票は18歳からできます)。
CingularとAT&T Wirelessの合併は、若い層を獲得して伸びるという路線上では、なかなかいいものといえるようです。iTunesソフトを提供したアップルとも、そういう点ではしっくりいくのかもしれません。
CingularのRokrが、音楽を直接ダウンロードできなかったのに対し、Sprint Nextelは、10月末、Sprintミュージックストアというサービスを発表し、アメリカで初の本格的ケータイ音楽サービスを始めました。11月に入り、テレビでもちょっと地味なコマーシャルが流れるようになっています。
このサービスは、EMI、Sony BMG、Warner、Universalの大手レーベルが提供する25万曲の中から、一曲2ドル50セントでダウンロードできるものです。今月出たばかりのSanyo 9000とSamsung SPH-A940が対応機種となっています。ダウンロードもとっても速いとか。メモリーを1GBにすると、最大1000曲まで入れられます(Rokrの場合は、一曲のファイルサイズが大きいので、512MBで最大100曲)。
音楽をダウンロードするためには、従来の通話プランに加え、ひと月15ドルから25ドルで、Sprintパワーヴィジョンというデータプランに加入する必要があります。これに入ると、テキストメッセージや写真送付といったベーシックな機能に加え、EV-DOネットワークでウェブアクセスできたり、衛星ラジオのシリウスの人気番組や、いろんなジャンルのテレビ番組がストリーミングで楽しめるようになります(衛星ラジオのシリウスは、車内以外のモバイル性という点で、競合のXMに負けていたので、Sprintとは良い組み合わせとなるようです。テレビに関しては、次のコーナーでご説明します)。
Sprint Nextelは、今年8月、プッシュトークで有名なNextelをSprintが吸収合併してできたものです。ですから、今まではどちらかというと、ビジネス環境に強いカラーを持っていました。しかし、近年、ハイスピード・データネットワークの構築に10億ドルを投資するなど、新事業展開にも力を入れています。大手キャリアの中では、メディア・エンターテイメント系として一番インフラが整っているともいわれています。
けれども、今回のSprintミュージックストアに関しては、不満が多いのも確かです。まず、一曲2ドル50セントとは、いったい何を考えているんだ?というものです。アップルのiTunesミュージックストアでは、一曲99セントで、しかも、2百万ものレパートリーから選べるではないか。
この批判に対し、Sprintの重役は、これは便利代だよと答えています。コンビニで何かを買うと値段が高いのと同じだと。でも、iTunesの2.5倍はないんじゃない?と、アナリストは一様に口をとがらせます。
2年契約の割引が付いて、端末が250ドル近辺というのも、ひんしゅくを買う原因となっています(CingularのRokrは、クリスマス商戦で150ドルに値下げ)。500曲入る512MBのメモリーだって、数十ドルは下らないわけだし。それに毎月、通話プランとデータプランの料金がのっかるわけでしょう。
ウォールストリート・ジャーナル紙の看板アナリスト、ウォルター・モスバーグ氏は、金持ちや忍耐のない人は別として、僕はこのサービスをお勧めできないと語ります。
まあ、Cingularを超える新サービスの展開に、Sprintのがんばりは認めますが、どうしてもiTunesやNapsterのお手頃な人気オンラインサービスと比べてしまうのは人情です。ビジネスの観点からしても、著作権を持つレコード業界を含め、ちょっと欲張り過ぎの感があるのも否めません。iTunesとNapsterの2社で、合法的音楽サイト市場の8割を占めるわけですから(iTunes7割、Napster1割)、彼らのサービスモデルから逸脱すると、ちょっと難しいかもしれませんね。
<楽しいケータイ:画像編>
音楽もいいのですが、筆者が結構ひかれているのは、画像です。今まで、アメリカでは、ケータイにテレビ番組をストリーミングするMobiTVや、短いビデオクリップをオンディマンドで配信するGoTVといった、スタートアップ会社のサービスはありました。でも、知名度はいまいちというところです。
これに対し、キャリア大手のVerizon WirelessやSprint Nextelが本腰を入れ始め、ようやく裾野が広がる動きが出てきています(おもしろいことに、シリコンバレーでは、こういった先端サービスの恩恵にあずかるのは、全米の都市部でも後ろの方になります。なぜなら、この界隈のみんなが殺到し、パンクする恐れがあるからです。Qualcommのお里サンディエゴなんかは、よくテスト市場に選ばれますね)。
シリコンバレーで8月末に登場したVerizon Wirelessの新サービス、VCastは、ウェブアクセス、メール、データシンクなど、EV-DO(CDMA2000 1xEV-DO)ネットワーク上で提供されるサービスの総称です。しかし、何といっても、消費者にとって一番目を引くのが、ケータイ用に編集されたテレビ番組のオンディマンド配信です。ニュース、スポーツ、お天気、ミュージックビデオなど、300チャンネルが準備されています。
ひと月15ドルの定額料金ですが、一部のミュージックビデオや、NBAプロバスケットやNASCARカーレースの試合ハイライトなど、各々1ドルから2ドルで購入するものもあります。
これに対し、Sprint NextelのSprint TVは、ビデオクリップのオンディマンドに加え、今年9月から、ニュース、スポーツ、コメディー、教育などのテレビ番組のストリーミングが楽しめるようになりました。ストリーミング19チャンネルが加わり、30チャンネル以上が提供されています。EV-DO対応のマルチメディア機種としては、先述のSanyo 9000とSamsung SPH-A940があります。コンテンツの多くは、MobiTVから提供してもらっています。
Sprintは2年前から、ほとんどのデータサービス対応機種(CDMA2000 1xRTT)で、MobiTVを利用できるようにサービス展開してきました。その地道な努力に対し、今年8月、テレビ界のアカデミー賞であるエミー賞は、両社にエンジニアリング部門賞を授けています。
Sprint TVの料金は、ベーシックサービスの場合、テレビ利用料にひと月10ドル、データプラン加入料に10ドル、計20ドルかかります。更に、CNNやFox Sportsなどのプレミアムチャンネルに加入すると、各々月に4ドルから10ドルかかります。
残る大手Cingular Wirelessは、今のところ独自のサービスは打ち出していませんが、多くの端末でMobiTVを楽しめるようになっています。25チャンネル提供されています。現在は、EDGEネットワークでのストリーミングなので、VerizonとSprintのEV-DOに比べ、画質は劣るようです。Cingularは、サンフランシスコ・ベイエリアでは、年末までにUMTS/HSDPAネットワークを展開する予定です。
Cingular のMobiTV料金は、月10ドルの定額利用料金に、データサービス加入料の5ドルから20ドルが加算されます。
先日、Verizon WirelessのVCastを店頭で試してみましたが、なかなかの画質でした。画像も思ったよりスムーズな動きで、充分観賞に耐えられます(テレビが一秒30フレームに対し、VCastは一秒最大15フレーム。Sprint TVもEV-DO対応機種では同等)。現時点では、LG VX8100を始めとして、LG、Motorola、Samsungから計4機種ほど出ています。価格帯は、2年契約で250ドル以上とハイエンドです。
オンディマンドのせいか、各々の番組にアクセスするのに、何十秒かかかるのがちょっと気になります(ストップウォッチで計ったわけではありませんが、待ち長く感じます)。デモを見た端末の音質も、ボリュームを上げると音が割れるという難点もありました。
しかし、ニュース番組のジャンルは、トップニュース、米国、世界、エンターテイメントなどとわかり易く分類され、好感が持てます。MSNBCやCNNなど、ケータイ用に短く編集された1、2分から数分のニュースも、常時アップデートされているようです。世の中の動きは、どこにいても常に把握できるのです。
画像といえば、10月中旬、ビデオも観賞できるiPod新モデルの発売にともない、アメリカのiTunesミュージックストアで、ビデオコンテンツも買えるようになりました。たとえば、Walt Disney傘下にあるABCの超人気ドラマ"Desperate Housewives"や"Lost"、Pixarの短編映画やミュージックビデオなど、ティーンを含め、比較的若い層に支持を受けているものです("Lost" は無人島に不時着する"失踪"、"Desperate Housewives"は、"必死な、なりふり構わぬ主婦"のお話といったところでしょうか)。
このビデオiPodとテレビ番組発売にあたって、こんな評が聞こえていました。いくらコマーシャル抜きにした番組であっても、テレビで放映した翌日に、ひとつ1ドル99セントも出して番組を買う人間がいるはずがない。今の時代、TiVoみたいなデジタル録画機もあるわけだし、絶対に失敗するぞと。
ところが、蓋を開けてびっくり。発売からたった19日間で、百万本もの映像がダウンロードされています。テレビの力をあなどることなかれ!(白状しますと、筆者は"Desperate Housewives"などは一度も観たことがありません。かなり毒性の強いドラマなようなので。しかし、これがまたティーンには大人気だそうです。大人向けの番組なのに。そして、親方Walt Disneyも、第4四半期の業績発表の中で、DVDの売り上げは減少しているものの、ABCやスポーツチャンネルESPNのお陰で、放送部門の収益は4割も伸びていると述べています。げに恐ろしきは、中毒性のあるドラマなり。)
これまで、ビデオiPodの分野では、Creative TechnologiesやiRiverなどから、ポータブル・ビデオプレーヤ(PVP)はいくつも出ているのに、なかなか成功していない背景があります。Archosなどは、映画やテレビ番組のオンライン配信サイトCinemaNowとパートナーを組んでいても、あまり話題にはなっていないようです。
それが、ビデオiPodとiTunesの強力コンビの出現で、一夜にして変わろうとしています。そして、間髪入れず、メディア巨人であるNBC UniversalがPeer Impactとパートナーを組み、合法的なファイルシェアリング(P2P)サイトで映画やテレビ番組を配信すると発表しています。ハリウッド映画会社のジョイントベンチャーであるMovielinkにも、新たにTwentieth Century Foxが加わり、大手映画会社6社の作品をオンラインで気軽にアクセスできるようになります。
テレビの側でも、News CorpのFoxチャンネルや、ViacomのMTVが、ケータイに特化したドラマやアニメシリーズをプロデュースし始めています。上記のWalt Disneyも、Verizon Wirelessに向け、ドラマ"Lost"の2分間ミニシリーズを制作中です。一方、iPodから流行ったポッドキャスティングにしても、一般視聴者からどんどんおもしろいビデオが発信されつつあります。
現時点では、日本でモバイルデバイスへの画像配信があまり流行っていないことを考えると、モバイルテレビはアメリカでも難しいのかもしれません。たとえば、アメリカでは、ほとんどの人が電車通勤はできないので、車を運転しながら映像を見るわけにもいきません。また、出先では、ドラマをじっくり観賞するのも難しいわけです。
アメリカでモバイルテレビが流行るためには、デバイスにしても、サービスにしても、もうちょっと値段が下がる必要がありますね。そうすれば、テレビやビデオが大好きで、しかも、何もできない待ち時間(down time)が大っ嫌いというせっかちな国民性から考えると、日本よりも流行る素地は持っているのかもしれません。ビデオiPodから始まったトレンドは、次はケータイに。これは、充分に考えられるシナリオではあります。
<おまけのお話:スターウォーズを求めて>
11月1日、アメリカ全土で、映画「スターウォーズ エピソード3:シスの復讐」のDVDが販売開始となりました(日本では、11月23日の発売と聞いております)。ご存じ、ジョージ・ルーカス監督の大作「スターウォーズ」の完結編です。
勿論、筆者は映画館でエピソード3を見ております。が、スターウォーズ世代の一員としては、今回も発売当日にDVDを買わないわけにはいきません(なにせ、エピソード1に出てきた悪者、ダースモールの華麗な武器さばきに魅せられて、棍棒を教えてちょうだいと師匠におねだりしたくらいですから)。
DVD発売に先立ち、新聞の日曜版のチラシとにらめっこし、お店を選びます。とりあえず、電化製品販売の大手チェーンCircuit CityとBest Buy、そして大手ディスカウントチェーンのTargetとWal-Martを候補に選びます。しかし、よく見ると、「おまけ」に違いがあるではありませんか。
Best Buyでは、スターウォーズのビデオゲームも買えば、ダースベイダーの顔がアップのリトグラフが付いてくる。う~ん、まあまあかな。Targetでは、やっぱりダースベイダーの顔のコレクター・コインが付いてくる。悪くはないな。Circuit Cityはというと、おまけなし!DVDの価格はふせてあるけれど、多分他と同じ14ドル99セントなんだろうなぁ。ケチッ!
そして、めでたく筆者のお眼鏡にかなったのは、Wal-Martでした。なぜって、Wal-Martでしか手に入らないおまけのDVDが付いているからです。ロボットのC-3POとR2-D2がシリーズ全体を解説する1時間番組だそうです。
発売当日の夕方、はやる心を抑え、近所のWal-Martに行ってみました。以前ここでは、人に頼まれてお買い物したことがありますが、それっきり一度も行ったことがありません。なんとなくWal-Martには行く気がしないのです。第三世界の貧しい子供を搾取しているだの、従業員に組合の結成を認めないだの、過半数を占める女性従業員を差別しているだのと、よからぬ批評が続くからです。けれども、その一方で、Wal-Martは、過去20年で21万の雇用を全米で生み出しているし、その安売り商法によって、昨年、一世帯につき2千ドルの消費節約を実現するなど、米国全体への貢献度が大きいのも確かです。
そんな複雑な気持ちでWal-Martの中に入ってみると、まあ、その広さに圧倒されます。アメリカに出回る商品のすべてがここに揃っているんじゃないかと思うほど、いろんなジャンルの商品が所狭しと大きな棚に並びます。日本の激安ショップ・ドンキホーテを、横方向に押し広げた感じでしょうか。なんか昔、Wal-Martの中で生活していた若者の映画があったような気もしますが、まさにそれも可能かなという感じです。でも、Targetの方が、ちょっと小ぎれいかな。
あっちこっち迷いながら、電化製品のコーナーにたどり着くと、なかなかスターウォーズのDVDが見つかりません。いつもこの手のDVDを買うBest Buyを想像していたからです。店のど真ん中に、話題のDVDを積み上げ、専属の店員を貼り付けるという。ところが、この店の場合、小さな仮設テーブルの上に、以前のエピソードも含め、たった何十枚しかありません。「おまけDVD」の付いた最新パッケージはいくつかありますが、従来サイズの画面用(full screen)だけで、肝心の薄型テレビ用(wide screen)がありません(拡張性のある「薄型テレビ用」が欲しいではありませんか)。
「きのうのハロウィーンでは、母さんのお手製マントを身に付け、アナキンになったんだ」という若者といっしょに、薄型テレビ用を必死に探します。見つからないので、店員に尋ねると、「おまけDVD」は通常サイズのDVDとしかパッケージになっていませんよと答えます。
そんなはずはないと、若者は、すかさずその場の端末機で調べ始めます。Wal-Martには、随所に端末機が置いてあって、商品のタグをかざして値段を確認したり、インターネットでWalMart.comに接続し、取扱商品の一覧をチェックしたりできるのです。それを見て若者は、「ほーら、やっぱりおまけは両タイプのDVDに付いてくるんじゃないか」。(アメリカの店員は、よく調べもせず自信たっぷりにウソを言う場合があるので、要注意。)
結局、店員に確認してもらったところ、この店舗には探していたパッケージの在庫はないけれど、近くの別の店舗に置いてあることが判明。でも、その店はあまり治安のいい場所ではないのです。そこで、若者は、「もういいや、配達に時間がかかるけど、インターネットで買おう」と、その場を立ち去ります。筆者も別の店舗に行く気はしないので、すごすごと家に戻りました。その間も、おまけ付きDVDは、仕事帰りのお父さんたちにどんどん売れていました。
今回の教訓。映画はおまけなんかに惑わされず、やっぱり中身で勝負なのです。
まあ、今さらいうまでもなく、スターウォーズの醍醐味は、特殊効果や凝ったアクションだけではなく、東洋哲学にも根ざした光と影の戦いのストーリーでもあります。随所に出てくるジェダイマスター・ヨーダの教えは、仏教や道教の思想ともオーバーラップしていますし、力を持ちながら、暗黒世界に転じたダースベイダーやカウント・ドゥークーなんかは、実世界でもよくある話ですね。
"Let go"、すなわち、何ものにもとらわれぬこと。否定的な感情は、悪に導かれるきっかけとなる。これは、ヨーダが若きアナキンに繰り返し忠告していたことでした。愛する人を失う恐れは、暗黒世界への入り口となる。なぜなら、恐れは怒りに通じ、怒りは憎しみに通じ、憎しみは苦しみに通ずるから(エピソード1より。エピソード3にも類似の忠告あり)。そして、苦しみこそ、悪の世界が最も好むことなのです。この教えに、東西の思想の垣根はないんじゃないでしょうか。
後日談:やっぱり「おまけDVD」があきらめきれないので、"治安のよくない場所にある店舗"に行ってみることにしました。土曜日のまっ昼間で安全ではあるのですが、車の中にいても、筆者の血圧は200くらいに上がります。そうやってたどり着いてみると、例の店員が教えてくれた場所には、店が存在しないではありませんか!
ここであきらめるわけにはいかないので、カーナビで探して、隣のミルピータス市にある店舗にでかけました。すると、ありました、ありました。通常画面のおまけパッケージの後ろに、まるで隠されているかのように薄型テレビ用パッケージが6つ。こういうときは、思わず天を仰ぐものですね。
おまけパッケージを無事に購入し、ちょっと気分のよい帰り道、今度はBest Buyに寄ってみました。さすがに、入り口にはスターウォーズ関連グッズが何種類か置いてあって、つい、スターウォーズPEZの9種類セットを買ってしまいました(ペズというのは、キャンディーみたいなもので、これのディスペンサーがいろいろ凝っていて、恰好のコレクターアイテムなのです)。このスターウォーズPEZは、25万セットの限定販売で、通し番号も付いています。今度、日本に帰るときにおみやげに最適と思ったのですが、気が変わって、自分で大事に持っていることにしました。
さて、肝心のおまけDVDですが、中身はアナキンとルークのスカイウォーカー親子の冒険を、エピソード3を除いて、かいつまんでお話しているものでした。これを見てエピソード3を観賞すると更に楽しめる、そういったものでしょうか。ナレーターであるC-3POとR2-D2のロボット同士のかけあいも、いつもながら楽しめるものなのです。でも、おまけの分は、ちゃんとWal-Martに5ドル払わされましたよ。
夏来 潤(なつき じゅん)