グリルドピーチ(桃のグリル!)
8月は、母の初盆となりましたので、日本に滞在しておりました。
この夏、東京は雨ばかりで涼しいと聞いていたものの、母のもとから東京に戻ってくると、いきなりの炎天下。
旅先でも猛暑の連続でしたので、どうやら、日本の蒸し暑さからは逃れられない運命だったようです。
そして、サンフランシスコに戻ってくると、いつものように、どんよりとした空。
買い物の帰り道、いきなり夕方の冷たい風にさらされ、「この街って寒い!」とジャケットの襟を手で押さえました。
ところが、
9月初めの「レーバーデー(Labor Day)」の三連休を控えると、気温は容赦なくグングンと上昇。
勤労感謝の三連休には、サンフランシスコは、観測史上最高の華氏106度(41℃)を記録。そして、周辺の街々は、どこも猛暑の記録を塗り替えました。
我が家のあるサンノゼ市は、華氏110度を超えたようで、たぶん45℃(!)に近かったんじゃないかと思います。
こうなってくると、もう外に出るのが危険なくらいで、サンノゼ市役所からは「自宅にエアコンがなかったら、我慢しないで近くのクーリングセンター(エアコンのある避難所)に行ってください!」と、英語とヴェトナム語とスペイン語で3回電話がかかってきました。
夕方5時を過ぎてお買い物に出たわたしも、「アスファルトの上で体が溶けちゃうよ〜!」と、異常にギラギラする太陽に恐れ入るしかありませんでした。
きっとこれは、連れ合いが滞在するインドほど暑いんだろう、と思っていたら、実際は、インドよりも暑かったみたいです!
そんなわけで、普段は「レーバーデーは、バーベキューシーズンの締めくくり」とされるのですが、とっても火をつけてバーベキューを楽しむようなお天気ではありません。
代わりに、サンフランシスコの海岸や、ちょっと北のスティンソンビーチなんかが大人気で、いつもは凍るような寒流で入る気もしない波打ち際は、まるで「江ノ島海岸」みたいに混雑したようです。
それでも、連休の最終日「レーバーデー」の月曜日になると、ちょっと曇り空になって気温も下がったので、お隣のバックヤード(裏庭)からは、ガンガンと音楽が聞こえてきました。
きっと、最終日はバーベキューで楽しんでいらっしゃったのでしょうが、「やっぱり、バーベキューは欠かせないよね!」と、我慢してグリルに火をつけた方も大勢いらっしゃったことでしょう。
と、ここで本題です。
そう、アメリカ人にとって、バーベキューというのは、とっても大事な年中行事なんですが、バーベキューにするのは、豚のあばら肉(pork ribs)や野菜ばかりではない、という話題です。
わたし自身はやったことがないんですが、果物の桃(peach)をグリルで焼いて楽しむんです。
その名も、グリルドピーチ(grilled peaches)。
新鮮な桃を横に輪切りにして、食べやすいように種をはずし、表面に砂糖やメイプルシロップを付けてグリルする、というもの。
桃は、グリルするには最適なんだそうです。
ひとつに、糖分を付けて焼くと、香ばしくて美味しいこともありますが、ちょうどバーベキューシーズンの夏に熟れる果物なので、種が取りやすくなるから。
なんでも、熟してスルッと種が取れる状態を「フリーストーン(freestone)」と言うそうです。
以前も何度かお話ししましたが、桃やネクタリンなどは、実が柔らかいわりに種が大きくて硬いので、種を石(ストーン)に見立てて「ストーンフルーツ(stone fruit、石の果実)」と呼ばれます。
それで、実が熟して、ストーン(種)が取れやすくなった状態を「フリーストーン」と言うそうです。(写真は、初夏に出回るドーナッツ型のドーナッツピーチ(doughnut peach))
やはり以前もご紹介したように、ブドウにも皮をスルリとはずしやすい種類があって、これを「スリップスキン(slip-skin)」と呼ぶそうですが、それと同じようなものでしょうか。
一方、桃が十分に熟していないと、種は取りにくいですが、こちらは「クリングストーン(clingstone)」と呼ぶそうです。
「クリング」というのは、種がしっかりと実にしがみついている(cling)という意味ですが、「クリングストーン」とは、なかなか面白い表現ですよね。
ちなみに、「フリーストーン」という言葉ですが、こちらは、もともと石を使った彫刻や細工の技術(masonry)で使われていたそうです。
石灰岩(limestone)や砂岩(sandstone)は、石の中でも柔らかく、ノミを入れやすい。そういった、石切り場から切り出しやすく、細工のしやすい石を指すそうです。
昔の神殿や教会には、驚くほど緻密な細工が施されていましたが、やはりこれには、細工のしやすい「フリーストーン」が好まれていたのでした。
(写真は、ギリシャ・アテネを見下ろす、修復中のアクロポリス。この時代には、おもに石灰岩が使われていたそうですが、だんだんと石細工の技術が進むにつれ、丈夫で壊れにくい大理石(marble)が好まれるようになったとか。)
夏の味覚、グリルドピーチ。
そのまま食べるのも美味しいですが、細かく切って、ヴァニラアイスクリームの上にのっけるのも、また美味だそうですよ。
次回バーベキューを楽しむときには、ぜひお試しあれ!
写真出典とレシピ:
最初のグリルドピーチは、我が家が加入している病院・医療保険システム「カイザー・パーマネンテ(Kaiser Permanente)」のオンラインニュースレターより。
やっぱり加入者には健康になって欲しいので、野菜や果物中心の簡単レシピを紹介してくれます。
1)桃を横に輪切りにして、表面にメイプルシロップを塗っておく
2)グリルトレーの上にバターを塗り、桃の輪切りをのせて焼く(できあがり!)
最後のグリルドピーチは、キッチン用具の「ウィリアムズ・ソノマ(Williams Sonoma)」がクッキングサイトyummlyで紹介するレシピ。
1) 桃4個に対して、ハチミツ大さじ3杯、ブランデーか果物リキュール大さじ1杯、粉末のカルダモン小さじ1/4杯を混ぜ合わせ、横に半分に割った桃を漬け込む
2) グリルトレーの上にオリーヴオイルを塗り、桃をのせて3、4分焼く
3) お好みで、粉末のカルダモンを混ぜたホイップクリームや桃を漬けたハチミツを添えていただく
最初のレシピはメイプルシロップを使い、次のレシピではハチミツを使っています。が、一般的には砂糖やブラウンシュガーを使うようです。
甘味づけが何であっても、こんがりと焼いた桃は、美味しいはずですよね!