Stay Home. Save Lives(家にじっとして命を救おう)
英語ひとくちメモ その139
日本は「新年度」の季節ですが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、世の中が停止したような状態ですよね。
アメリカでは、日本に遅れて2月末からウイルスが広がりはじめましたが、ひとたび感染者が確認されると、東海岸のニューヨーク州を中心に都市部で猛威をふるっています。
「3日で倍になっている」と言われてきましたが、あれよ、あれよと言う間に感染者は34万人! ここ2日で10万人も増えています(4月5日現在)。
が、そんな中でも、カリフォルニア州はニューヨークほどひどくはありません。いわゆる flatten the curve(感染増加のカーヴをゆるやかにする)ことに、今のところ成功しているのです。
我が家が住むサンノゼ市のあるサンタクララ郡やサンフランシスコ郡(市と郡を兼ねる)は、3月17日から Shelter-in-Place(自宅待機)の命令を出して、お買い物や散歩に行く以外は、外出が許されなくなりました。
これに違反すると misdemeanor(軽犯罪)とみなされるそうですが、今のところ注意されるだけで、逮捕されたケースはひとつ、ふたつ。それでも、外出しづらいのは確かです。
(ちなみに、軽犯罪を表す misdemeanor(ミスディミーナーと発音)には、「非行」という意味もあります。もともと demeanor は「振る舞い、態度」といった意味ですが、これに「誤った」を表す接頭辞 mis がつくと「非行」とか「軽犯罪」という意味になります)
そんなわけで、もう3週間近く自宅待機の生活を送っていますが、せっかくですから、近頃よく耳にする英語の表現をご紹介いたしましょう。
まずは、日本でもよく紹介されている social distancing
もともとは social distance(ソーシャルディスタンス)という表現があって、「社会的な距離、隔たり」を意味します。
これに 〜ing をつけて、「互いに距離を保つ」という意味合いになっています。
たとえば、スーパーマーケットに買い出しに行っても、人との距離を6フィート(1.8メートル)以上空けましょうと、こんな模様が床に描かれています。いつも cashier(レジ)には人が並ぶものですが、単に「人に近づかないように」と言われるだけではダメなので、パッと目でわかるように工夫しているのです。
人との距離を空けるという点では、自宅待機をして外に出ないのが一番。
ですから、Stay home(家にいましょう)の命令になっています。
サンフランシスコ・ベイエリアに続いて、2日後の3月19日にはカリフォルニア州全土にも Stay-at-home order(自宅待機命令)が出されました。
そんなわけで、今のカリフォルニアの標語は、Stay Home. Save Lives.
つまり「家にいて、命を救いましょう」というもの。自分が家にじっとしていることで、他の人々の命を救っていることになる、という戒めなのです。
それから、social distance を保つということは、オフィスや学校も閉鎖されてしまって、仕事やお勉強の場が遠のいてしまうこと。
この distance(距離、隔たり)から生まれた、こんな言葉も耳にします。
大人向けには、telecommute(テレコミュート)。自宅のパソコンを使って、自宅からオンライン通勤。日本では、一般的に「テレワーク」と言いますが、アメリカでは「仮想通勤」という意味合いで「テレコミュート」と表現されます。
そして、子供向けには、distance learning(遠く距離を隔てた学習)
今はテクノロジーが整備されているので、先生がインターネットを使って自宅にいる生徒たちに教えたり、「我こそは!」と自信のある方々がソーシャルメディアでお勉強の動画を放映したりと、いろんな斬新な学び方が可能になっています。
先生やクラスメートと一緒にパソコンのウェブカムを使っていると、互いの表情が読み取れて、みんなで学習しているような気分にもなります。教室にいるよりも、かえって親近感がわくこともあるのかもしれませんね。
ここで問題になってくるのが digital divide(デジタル格差)と呼ばれる社会的な不公平さ。多くの家庭では、最新のパソコンや高速インターネット接続は常識とも言えるものですが、家にパソコンもネット接続もない世帯が多いのも事実です。
そんなわけで、このコロナウイルスの自宅待機が始まったころから、ネットが行き渡らない地域に WiFiホットスポットを設置したり、パソコンのない家庭にラップトップパソコンを寄付したりと、企業側からも動きが出ています。
日常生活では、スーパーや薬屋、クリーニング店やガソリンスタンドなどは営業していますが、それ以外のお店はほとんど閉まっているので、みなさん髪の毛は伸び放題。レストランは、宅配やテイクアウトだけ許されるので、着飾ってレストランに行くこともありません。
信仰のある人は教会にも行けません。今は、復活祭を控えた大事な時期。他州では、教会を閉めたくないから、自宅待機命令を出さない場所もあるようですが、これはかなり危ない措置。ベイエリアでは、屋外に立つ神父さんに車の中から懺悔(ざんげ)する信者も話題になっていました。
そう、サンノゼ市の市長さんも言っていましたが、今はみんなが我慢すべき時。
まさに、shared hardship and moment of sacrifice(互いに困難を分かち合い、自分を犠牲にする時)なのでしょう。
カリフォルニア州の自宅待機は、少なくとも5月3日まで続きます。状況によっては、もっと延長されるのかもしれません。
買い出しに加えてお散歩も許されますが、自治体によっては近隣の公園まで閉鎖している場所もあるので、なかなかお散歩もままならないようです。「自宅の中庭しか歩く場所がない」とおっしゃる方もいらっしゃるくらいです。
幸いにも、我が家はゴルフ場に近いので、州内でゴルフなどの娯楽施設が閉鎖されている間は、ゴルフコースを散歩したりジョギングしたりできるようになりました。
普段はゴルファー以外は足を踏み入れることのできないゴルフ場。広々としたフェアウェイと春に芽吹く木々がやわらかな緑を輝かせ、絶好のお散歩コースとなっています。
お散歩する人とすれ違ったりすると、互いに距離を空けて注意深く歩き、ごあいさつも「ハ〜イ」と声を掛け合うよりも、片手を上げてにっこりというのがローカルルールになっているようです。
わたし自身は、いつものお散歩よりも長距離を歩くようになったので、自宅待機になってかえって運動量が増えた気もするのです。
というわけで、今日のお題は、
Stay Home. Save Lives.(家にじっとして命を救いましょう)
Stay Home. Stay Safe.(家にいて、安全に過ごしましょう)
そして、こんな言葉も耳にします。
We’re all in this together(みんな一緒にこれを乗り切ろう)
「みんなで一緒になって感染を克服しよう」というスローガンになっています。
誰も経験したことのない自宅待機。それでも、お誕生日の友達がいると、その子の家の前に車で連れて行ってもらって、車内から手を振って、お祝いの気持ちを伝えてあげる。そんな余裕もあるアメリカ人なのです。
たぶんこの国には、Make the best out of it (状況が困難な中でも、最善を尽くす)といった精神が、脈々と受け継がれているのでしょう。
世界じゅうの感染が早くおさまりますように、早く普段の生活に戻れますようにと、ただただ願うばかりなのです。
そんな願いが伝わってくるかのように、ご近所さんの裏庭にも、こんなハートマークが飾られていました。