Help us help you(あなたを助けさせてよ)
<英語ひとくちメモ その143>
Help us help you
なんだか、こんがらがった言い方ですが、これは立派な文章です。
直訳するとこんな感じでしょうか。
「わたしたちがあなた方を助けるのを助けてください」
「わたしたちを助けて(Help us)」という部分と「あなた方を助ける(help you)」という二つの部分から成り立っている文章です。
言うまでもなく、二つ目の「あなた方を助ける」のは、「わたしたち(us)」です。
そんな「あなた方を助けるわたしたち」を「助けてください(Help us)」というわけです。
Help という動詞で始まっているので「命令形」の文章ではありますが、どちらかというと「お願いだから、助けてくださいよ」と懇願の色合いが強いでしょうか。
「わたしたちがあなた方を助けられるように協力してください(邪魔をしたり抵抗したりしないでください)」といったニュアンスです。
同様に、こちらもよく耳にしますね。
Help me help you
こちらも「僕を助けて(Help me)」という部分と「あなたを助ける(help you)」という二つの部分から成り立っています。
ですから、「僕があなたを助けられるように協力してください」つまり「お願いだから、そんなに肩肘張って抵抗しないで、僕に助けを求めてよ」といった感じ。
どちらの文章も、「わたしたち(僕)はあなたを助けたいので、そうできるように協力してください、耳を傾けてください」といった意味の慣用句になります。
そう、意地を張ってばかりいないで、「助けられ上手」になってくださいよ、と懇願する感じでしょうか。
それで、どうしてこんな文章をご紹介しているのかというと、消防団の記者会見で耳にしたから。
ご存じかもしれませんが、現在、サンフランシスコ・ベイエリアでは史上最悪規模の山火事が3カ所で燃え盛っていて、コミュニティ全体が山火事と闘っている状態です。
事の発端は、稲妻(lightning)。(Photo by Wesley Lee)
日本がお盆を迎えた週末、カリフォルニア州全体では72時間で 11,000もの落雷があり、小さいものも含めると 6,000件の山火事が起きました。そのうち 370件が大きな山火事となり、中でも 22件の山火事が「山火事群(fire complex)」と呼ばれる巨大な火の帯となって燃え続けます。
ひとつの山火事が飛び火して新たな火種となったり、小さな山火事が合わさって大きな山火事群を形成したりと、山火事は各地で数を増し、規模もどんどん大きくなっていきます。(Photo from abc7news.com)
数日たつと、州内の山火事は 560件に増え、次の週末には、また落雷による新たな山火事が起き、それから3日たつと全体で 700件に増えている。
現在、14,000人の消防士が動員されていますが、消防活動が追いつかない状態になっています。
サンフランシスコ・ベイエリアをぐるりと取り囲む山火事群3件は、都市部に非常に近いので、住宅地や人の命を脅かすとともに、大気汚染でも人々を苦しめています。
ナパやソノマといったワイン産地の二つの山脈で燃え続ける火事群(LNU Lightning Complex)、「シリコンバレーの首都」と自負するサンノゼ市の東側にある二つの山脈で燃え広がる火事群(SCU Lightning Complex)、そしてシリコンバレーから西のサンタクルーズへと向かう山中で起きている火事群(CZU Lightning Complex)と、一週間燃え続けても鎮火の気配もありません。(Map: Cal Fire Incidents map)
Help us help you
家が心配で、自分が家にとどまって延焼を防ぎたい気持ちはわかるけれど、お願いだから、我々を信じて消火活動は任せてもらって、避難指示が出たら早く避難してください! という心からの叫びです。(Photo from NBC Bay Area broadcast)
避難警報(evacuation warning)が出たら荷物をまとめて待機し、避難命令(mandatory evacuation order)が出たら、すみやかに家を出て遠くに避難する。それが規則なのに、なかなか守らない人がいる。
そうなると、消防士の方々も火を消すどころか、人の救助に時間と労力を割かなくてはならなくなって、最悪の場合は、消防士の命だって危うくなる。なぜなら、みんなが思っている以上に、火がまわるスピードは速く、いつの間にか火に囲まれて逃げられなくなってしまうから。(Photo from abc7news.com)
だから、お願いだから、Help us help you
我々が助けるのに協力してください!
そんなわけで、新型コロナウイルスの感染拡大に加えて、巨大な山火事群の延焼拡大とも闘っているサンフランシスコ・ベイエリアです。
わたしが5月下旬まで住んでいたサンノゼ市の住宅地も、毎日のように「警戒警報」が出されているそう。幸いにも今のところ大丈夫なようですが、いつでも逃げられるように避難の準備だけはしているそうです。
その1キロ南の住宅地では、土曜日の晩に「今からすぐに避難しろ」と警察官がやって来て、あわててバックパックに荷物をまとめて、車で逃げた例もあったとか。(Map: County of Santa Clara evacuation map)
今住んでいるサンフランシスコ市では、山火事が延焼する危険はないですが、ナパやソノマ、そして海際で燃えている山火事群に近いので、ときどき窓の外では灰や燃え残った葉っぱが舞っているのが見えます。(Photos of LNU Lightning Complex from abc7news.com)
そして、大気汚染がひどく、外に出られないのも大変です。家の中でもマスクは欠かせませんし、「自宅待機中」の唯一の楽しみだったお散歩ができないのが痛いです。
昨日は PM 2.5 の指数が 160だったので、喘息など呼吸器疾患をお持ちの方はさぞかし大変だろう・・・と心配していました。(Air Quality Index from AirNow.gov)
だいたい、fire complex(山火事群)なんて言葉は、山火事の多いカリフォルニアでも、今まで聞いたことがありません。
それほど、前代未聞の規模の山火事があちこちで起きている証拠なのでしょう・・・。