Awestruck(感動しました)
<英語ひとくちメモ その151>
もうゴールデンウィークも目の前ですが、4月を振り返ると、やはり「桜」が印象に残ります。
桜の花(cherry blossoms)は、花の代名詞。
わたし自身は、昨年は国境を超えた引っ越しで、花を楽しむ余裕もありませんでした。今年は、ここ福岡の事情も少しずつわかってきたので、嬉しいことに花の名所もいくつか見つけました。
福岡市内には、百道(ももち)の浜を見下ろす愛宕神社や古(いにしえ)の貿易港「波奈(はな)の港」を見下ろす西公園と、花の名所はいろいろあります。が、一番の名所というと、やはり福岡城跡の舞鶴公園でしょうか。
なんでも、明治の廃藩置県によって、城の建物のほとんどが解体され、今では立派な石垣やお堀、正面の御門や倉庫として使われた櫓(やぐら)など、ごく一部の建造物が残ります。
当時の城がそのまま残っていれば、さぞかし立派だったのだろうと、地元民の口惜しさがわかるような気がいたします。
福岡市に引っ越してきて、「この街は桜が多いものだ」と驚きましたが、とくに舞鶴公園には、ソメイヨシノから枝垂れ桜(しだれざくら)、八重桜と、たくさんの種類が城内のここかしこに植えられています。
福岡の開花宣言は、全国トップの3月17日でしたが、城内の桜園が散り始める頃には、お堀の八重桜が見頃となり、ゆうゆうと4月下旬まで市民の目を楽しませてくれるのです。
わたしも何回か舞鶴公園を訪れましたが、とくに印象に残ったのが、ソメイヨシノ満開の桜園。
3月の最終週、城内に残る天守台の石垣を利用した展望台からは、眼下の桜園とその先には繁華街・天神の高層ビルが見渡せます。
ほんの4日前には、スカスカだった桜園。こんなに花びらのキャノピー(ひさし)ができるなんて!
地元の方も「ここから見たのは初めてよ」と感動されていましたが、その美しさは上から見てみなければわからないものですね。
と、前置きが長くなりましたが、この場面で思いついたのが、こちらの文章。
I was awestruck by the beauty of cherry blossoms
桜の美しさに心を奪われました
こちらの文型は、ごく単純なものですね。「桜の美しさによって、わたしは心を奪われてしまった」という受け身の形。
ここで問題なのが、awestruck(発音は「オウストゥラック」)という言葉です。
もともとは awe-strike という動詞が awe-struck という受動態になったものですが、今では awestruck という形で形容詞として使われます。
同じ意味で stricken という受動態を使って awestricken という言い方もあります。
最初の awe という部分は、畏敬の念とか畏怖という意味で、なにかしら神々しいものを感じて、畏れ(おそれ)すら覚えることを指します。
この awe を使って、strike with awe つまり「畏敬の念で(わたしの心を)打つ」という意味の動詞 awestrike が転じて、 awestruck という形容詞が生まれました。
このように、動詞の受動態が形容詞となる例はたくさんありますが、たとえば、こちらの文章。
I was just flabbergasted when he told me his idea
彼の考えを聞いて、もう、びっくりしちゃったわ
こちらは、もともと「誰かをひどく驚かせる」という意味の動詞 flabbergast(発音は「フラバギャスト」)が、受動態 flabbergasted で使われているうちに、立派に形容詞になった例でしょうか。
こういうのもありますね。
I was dumbfounded by his attitude
彼の態度にあぜんとして、何も言えなかったよ
こちらも、もともと「誰かをあぜんとさせる、驚かせる」という意味の動詞 dumbfound(発音は「ダムファウンド」)が、受動態 dumbfounded となり、形容詞として使われるようになった例です。
というわけで、awestruck という形容詞。こちらは、よほど感動しないかぎり使わない表現ではありますが、いくつか似た言葉もあります。
たとえば、awe-inspiring 。
上でご説明したように、「awe(畏敬の念)を inspire(かき立てる)ような」という意味の形容詞になります。
Sagrada Familia in Barcelona is an awe-inspiring cathedral
バルセロナのサグラダファミリアは、畏敬の念を抱かせるカテドラルです
そして、awe を使った日常的な形容詞というと、awesome(発音は「オウサム」)があります。
That’s awesome!
それはいいねぇ!
といった風に使います。
こちらは awe(畏敬の念)が使われているわりに、日常会話によく登場する単語です。
舞鶴公園では、桜園の花が終わると、今度はお堀の八重桜が満開になります。さすがにゴールデンウィークが近づくと葉桜になりますが、少しの間、桜とツツジの競演が楽しめます。
サンノゼの親友やご近所さんに八重桜とツツジの写真を送ったら、「あら、まだ桜が楽しめるなんていいわね!」と返事がありました。
どこに住んでいても、花は、人の心を穏やかにしてくれるのです。
とくに桜の名所を訪れなくても、近くの団地や公園、川沿いを歩いただけで美しい花に出会える、福岡の街。そして、そんな街は、日本中いたるところにあるのでしょう。
桜は、日本人にとって必需品なんだと、改めて感じ入った春なのでした。
Cherry blossoms last only for a week. The Japanese people love their beauty and ephemeral nature
桜の花は一週間しかもちません。日本人は、その美しさと儚(はかな)さを愛するのです
儚い花、桜。
そんな桜には、awestruck とか ephemeral という形容詞が似つかわしいのです。