I beg to differ(お言葉ですが)
<英語ひとくちメモ その157>
早いもので、月日もどんどん過ぎていきます。
秋のコスモスが満開と思ったら、そろそろ晩秋を彩る紅葉が見頃でしょうか。
コスモスといえば、福岡市内には名所があるんですよ。
市営フェリーに乗って、わずか10分。姪浜(めいのはま)渡船場から渡った先の能古島(のこのしま)。
この島のてっぺんに『のこのしまアイランドパーク』という公園があって、広大な敷地の真ん中にコスモス畑があるんです。
この公園では、四季折々の花を楽しめますが、とくにコスモスは有名です。青い海をバックに咲き誇る一面のコスモスは、一度は見ておきたい絶景かもしれません。
と、いきなり観光案内でしたが、今日の話題は、こちらの文章になります。
I beg to differ
ごく簡単な文章ですが、パワフルな慣用句です。
最初の beg は「(相手に)〜することを乞う」という動詞。次の動詞 differ は「意見を異にする」という意味。
つまり、「わたしがあなたと意見を異にすることをお許しください」といった感じで、とても丁寧な言い回しになります。
「お言葉を返すようですが」「あえて言わせていただきますと」と、これから自分の意見を述べさせてもらうことの前振りとなる言葉です。
相手が意見を述べたあとに「お言葉ですが、わたしは違った意見を持っているのです」と、自分の反論を述べる前置きに使います。
相手の方も、I beg to differ と聞くと「おや、何を言いたいのだろう?」と真剣に耳を傾けてくれることでしょう。
I beg to differ, but women in politics should be bestowed more power and respect
お言葉ですが、政界の女性たちはもっとパワーとリスペクトを授けられるべきです
ちょっとお堅い話題ですが、I beg to differ は、討論会や会議など、話す内容の堅い、かしこまった席で使われることが多いのです。
ちなみに、women in politics(政界の女性(議員)たち)という言葉はよく耳にしますので、覚えておくと便利です。
そして、bestow(発音は「ベストウ」)は、「(人に)〜を授ける」という他動詞になります。あまり耳にしない動詞ではありますが、「そなたに力を授けよう」などと、ファンタジー映画に出てくる言葉かもしれません。
(写真は、10月末から11月中旬に芦屋海浜公園で開かれた『あしや砂像展 2022』より。バグラト・ステパニャン氏制作の「古代の乗りもの〜ファンタジー(空想の世界)」という砂像作品です)
というわけで、I beg to differ 。
動詞 beg は、たとえば、こんな慣用句でも耳にしますよね。
I beg your pardon
最後の名詞 pardon は、「(相手の)お許し」といった意味ですので、直訳すると「あなたのお許しを乞いたいです」となります。
とても丁寧な言い方で、「失礼いたしました」とわびる時や、「なんとおっしゃいましたか?(もう一度おっしゃっていただけますか?)」と聞き返す時に使う表現ですね。
聞き返す意味で使う時には、I beg your pardon の語尾を上げます。
長いので、単に Pardon とか Pardon me とか Sorry などと言いますが、聞き返す時には、いずれも語尾を上げて、もう一度言ってもらうようにお願いするのがポイントですね。
動詞 beg を使った、こんな言い方もあります。
I beg you
直訳すると、「あなたに乞いたいのです」となります。
ですから、「お願いですから」と、相手に懇願する時に使います。
I beg you と聞いて連想するのは、子供が親におねだりしている光景でしょうか。
「お願いだから、〜してちょうだい(ちゃんと宿題やるから、野球場に連れってよ)」と、ダダをこねている光景。
ここで I beg you をくっつけると、お願いの度合いが強く、真剣に聞こえます。
同じような意味で、I beg of you という言い方もあります。
こちらは「あなたにお願いしたいのよ」と、「あなた」を強調したような表現になります。
「あなたにしかお願いできないのよ。だから、こうして頼んでいるんじゃない」と、泣き落とし戦術のようにも聞こえます。
I beg you に似たような表現で、こんなものもあります。
I beseech you
動詞 beseech(発音は「ビスィーチ」)は、beg に似ていますが、もっと強い感じで「懇願する」という意味です。
それこそ、床にひれ伏さんばかりに「お願いいたします」と懇願するような表現です。
どちらかというと、古語のような、堅苦しい表現ですが、ですから同時にインパクトがある言い回しかもしれません。
ここで、今日のお題 I beg to differ に戻ります。
上でもご紹介したように、I beg to differ は、討論会や会議など正式な場で反論する時に使われることが多いです。
ですから、普段の仲間うちのミーティングなどでは、こんな風に言い換えることもできます。
Well, I have a somewhat different perspective on this matter
そうですね、この件に関しては、わたしはちょっと違った観点を持っているのです
I have a different take on this development
この展開に関して、わたしは違った解釈をしているのです
上の文章の perspective は、「視点、観点」といった物の見方という意味ですね。
下の文章の take は、自分が理解している限りの「解釈」といった意味になります。
相手が何か意見を述べて、「それは違うよ」と心の中で思った時。
いきなり、I don’t think so(僕はそうは思わないよ)と述べるのは、あまりに子供っぽいですし、よく知らない方に向かっては失礼ですよね。
ですから、反論を述べる前に、やんわりと「違った見解を持っています」と、水を向けるワンクッションも必要なのかもしれません。
英語は、日本語に比べて単刀直入な言語ではありますが、やはり、相手の気持ちをおもんばかって口を開くことも大切な気配りではあります。
というわけで、I beg to differ 。
その響きからすると、もともとはイギリスの王侯貴族の間で使われていた言葉なのでしょう。それゆえに、「古風」な印象もあります。
ですから、昨今のアメリカでは、いかに正式な議論の場であっても、なかなか使われなくなっているのかもしれません。
そうなんです、もともとアメリカ人は、日本人以上に相手の気持ちを細やかに考えながら発言する人々なんですが、近年は真面目な討論会であっても、相手をけなすことが増え、紳士的な(gentlemanly)物言いをする方が減ってきているような気もいたします。
そんなトゲトゲしさを感じたら、I beg to differ(お言葉ではありますが)と、礼儀正しく返してみると面白いかもしれませんね。
相手もハッとして、我に返るかもしれません。