One of a kind(唯一無二の)
<英語ひとくちメモ その171>
立春を過ぎても、寒の戻りがありましたが、ようやく春らしくなってきたでしょうか。
まだまだ冷たい風の吹く3月はじめ、菜の花を見に行きました。
農閑期の田んぼが広がる、福岡市郊外の古賀市。
明日は「ひな祭り」のイベントが開かれるということで、地元の方々は準備に余念がありません。田んぼの真ん中には、鯉のぼりも立てられ、季節を先取りしていました。
一面の菜の花を見ていると、心が浮き立つよう。元気をいっぱいもらえる春の花ですね。
菜の花といえば、アメリカではマスタードの花。日本の菜の花と同じアブラナ科の植物で、見た目もよく似ています。
マスタード(mustard、和名アメリカカラシナ)は辛子の仲間で、種はスパイスにしたり、油を抽出したり、葉っぱを炒め物に使ったりと、万能の植物。
2月から3月にかけて、草原が一面に黄色くなっているのを見かけたら、それはマスタードの花。
カリフォルニアでは、冬の雨季が明け、春が近いことを告げる花でしょうか。
そんな3月の英語の話題は、one of a kind
形容詞で、「唯一無二(ゆいいつむに)の」「たったひとつしかない」「とてもユニークな」といった意味です。
世界にひとつしかないような特別な存在として、褒め言葉に使います。
発音は、「ワン・オヴ・ア・カインド」というよりも、「ワナヴァカインド」という風に聞こえます。言いやすいように、フランス語風にリエゾンするんですね。
この言葉を思い浮かべたのは、あるコンサートでした。
日本ツアーの最終公演で福岡市民会館にいらっしゃった、ボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)さんのコンサート。アメリカの有名なシンガー・ソングライターで、ギターリストでもある方。
若い方は名前を聞いてもピンとこないかもしれませんが、ボズさんは、1960年代から現在まで、長い間、音楽活動を続けてこられた方。軽快なロックから、渋いソウルやブルースまで、彼の音楽の幅広さには驚きなのです。
いろんな曲が有名ですが、たとえばアップテンポのベースが小気味良い『Lido Shuffle(リド・シャッフル)』や美しいメロディーラインが忘れられないバラード『We’re All Alone(ウィアー・オール・アローン)』など、題名を知らなくても、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。(写真は、1980年にリリースされたベストアルバム『Hits』のLPジャケット)
連れ合いは高校のとき、英語のエヴァン先生が『We’re All Alone』を聞き取りの課題にしたのをよく覚えているとか。語りかけるようなバラードは、何度聞いても飽きないので、歌詞を聞き取るにはぴったりかもしれません。
そんなボズさんの特徴は、なんといっても声。
なかなか表現が難しいですが、なめらかなベルベットの生地のような、声が空気にふんわりとまとわりつくような感じ。
さすがに高音は以前よりも出にくいようではありましたが、伸びのあるベルベットのような音質は健在です。
そんな声を聞いていて、one of a kind という言葉が浮かんだのでした。
他の誰にも真似できないような、ユニークな声。
His voice is truly one of a kind
彼の声は、ほんとに唯一無二なんです
声だけではなく、いろんな歌を自在に作れる才能もスゴいです。
He is a one of a kind singer and songwriter
彼は、まさにユニークなシンガー・ソングライターです
この one of a kind に似たような言葉では、one and only というのがあります。
やはり、「唯一無二の」とか「とてもユニークな」といった意味の形容詞でもあり、名詞でもあります。
形容詞としての one and only は、こんな風に使います。
This could be your one and only opportunity to meet King Charles III
今回が英国王チャールズ3世にお会いできる唯一の機会かもしれないですね
そして、one and only は、誰かを紹介するときなどにも使われます。
たとえば、こんな風に。
Let’s have a big hand for the one and only Boz Scaggs!
唯一無二のボズ・スキャッグスさんを大きな拍手でお迎えください!
Please welcome the one and only Boz Scaggs!
唯一無二のボズ・スキャッグスさんを暖かくお迎えください!
(ここでは人物を紹介しているわけですが、one and only という言葉の性質上 the という定冠詞をつけます)
一方、one and only は、名詞としても使われます。
名詞としては「唯一の人物」といった意味になります。
You are my one and only
僕にとっては、あなたしかいないんだ
そういった意味では、こちらの文章と同じですね。
There is no one else for me
僕にはあなたしかいない
誰かを口説くとき、そして、遠距離恋愛で不安になりがちなとき、相手にしっかりと伝えておきたい言葉かもしれませんね。
というわけで、今日は「ユニークな」という形容詞 one of a kind と one and only をご紹介いたしました。
日常会話でもよく耳にする表現ですので、覚えておいて便利だと思います。
そうそう、ボズさんのコンサートはすごい盛り上がりで、ノリに乗ったボズさんたちもステージを去りがたいのか、アンコールを5曲も披露してくださいました。
もちろん、締めは、みんなが大好きな『We’re All Alone』。
Noto Hanto Earthquake(能登半島地震)のために、コンサートで使ったギターは、ボズさんがサインしてオークションにかけるとのこと。
どうして一曲ずつギターを替えるのかなと思っていましたが、オークションの収益を能登半島に寄付する目的があったからなんですね。
ご自身では語られることもなかったですが、ボズさんは数年前、ワイン産地として知られるナパバレーの山火事で、すべてを失った経験があるようです。災害の痛みを知るからこそ、能登の災害も看過できなかったのでしょう。
そういった意味でも、one of a kind の御仁ですよね!