Above the law(法の上を行く)
<英語ひとくちメモ その173>
ゴールデンウィークも終わり、ようやく連休モードから回復したと思っていると、もう5月も終わろうとしています。
5月の花といえば、花菖蒲(はなしょうぶ)でしょうか。
各地の花菖蒲園では、紫や白のあでやかな花々を楽しめる季節となりました。
海外からの観光客にとって、花菖蒲は珍しいお花なのでしょう。ここ福岡城址・舞鶴公園では、多聞櫓(たもんやぐら)を見上げる花菖蒲園に人々が集まり、思い出づくりをしていらっしゃいました。
そんな5月の英語の話題は、こちら。
慣用句で above the law
いうまでもなく、law というのは、法律ですね。
ですから、この法律の上(above)という表現は、「法律が適用されない、法に従わなくていい」という意味になります。
こんな風に使います。
They firmly believe that they are above the law
彼らは、自分たちが法律を遵守しなくてもよいと固く信じている
どの国であっても、政治家の中には、こんな人々がいますよね。
明確に法律では規制されていないから、常識的には違法なことをやっても大丈夫だと信じている政治家たち。
たとえば、党から支給された政策活動費を何十億円も使い果たしたり、余剰金を自分で党に献金したとして税金控除を受けたりと、一般人がやると捕まるようなことを平気でやっている人々。
こういったケースでは、裏で誰かが画策していることでしょう。
He is the one who is pulling the strings behind the scenes
彼が、舞台裏で策を練っている人物である
こちらの pull the strings というのも、よく使われる慣用句です。
後ろで「ヒモを引いている」ということは、まるで誰かがマリオネットを操るように、世の中の動きを自在に操っている、という意味。
こんな風にも言い換えられます。
He is believed to be the mastermind of the complex scheme to steal money
彼は、金をだまし取る複雑な計画の首謀者だとされている
この mastermind というのは「素晴らしい計画の立案者」や「悪事の首謀者」と、良いことにも悪いことにも使われます。
名詞でもあり、動詞でもあり、頭を使って賢い計画を考える、というニュアンスがあります。
そんなわけで、たとえば政治家などが非常識なことをやっているときには、誰も不正を行わないようにと、法律を改正しなければなりません。
そして、この法改正は、悪事に対して十分な抑止力がなければいけませんよね。
けれども、政治家が自分たちに対して厳しい法律を可決するとは思えないのです。
Various proposals to amend the Political Funds Control Act do not have teeth to deter misuses of the law
政治資金規正法の改正案は、どれも十分な抑止力がなく、法の悪用を防ぐことはできない
この have teeth というのは面白い表現ですね。
「歯を持つ」ということは、「悪事を防ぐに足りる、拘束力がある」という意味。
上の例文では、いろんな改正案が出されていても、do not have teeth ということですので、「十分な拘束力が期待できない」という意味になりますね。
そして、例文の最後の deter misuses of the law は、「法の悪用を防ぐ」という意味。
法律があっても抑止力がないのは、「噛みつく歯を持たない」ことと同じです。
この表現は覚えておくと便利ですね。
上の文章は、こんな風にも言い換えられます。
Any proposal will be dead on arrival
どんな提案(改正案)も、可決したとたんに無意味なものとなるだろう
そう、どのように法律を改正しようとも、必ず抜け穴があって、「到着したとたんに死んでいる(dead on arrival)」のと同様でしょうか。
この dead on arrival という言葉は、もともとは「患者さんを病院に運んだが、間に合わなかった」という意味。
これを比喩的に使うことも多く、たとえば法案などが「可決したとたんに効力ゼロになっている」という意味になります。
Any plan they propose wouldn’t be good enough
彼らが提案するプランは、どれも効力が足りないだろう
自身を律する改正案を政治家が提出するということは、「なるべくやさしく、自分たちに影響が出ないように」と手加減することが予想されます。
Any plan they propose wouldn’t suffice
彼らが提出するプランは、どれも十分ではない
この suffice(発音は「サファイス」)という言葉は、「十分である、条件を満たす」という意味の自動詞。
例文の wouldn’t suffice は、「(悪事を防ぐ)条件を満たさない」という意味ですね。
というわけで、政治に関する記事で、よく目にするような表現をご紹介してみました。
先の米大統領バラク・オバマ氏は、こんな表現を好んで使われていました。
それは、public servant
「公共の下僕」つまり「市民にお仕えする、公僕(こうぼく)」という意味です。
「政治家や役人は、市民を統治するものではなく、市民に有益なことを行う公僕であるべきである」という根本理念をお持ちです。
Politicians and government officials should be public servants who serves the needs and well-being of the public
政治家や役人は、市民が必要としていることや、健康、福祉、幸福を実現するために働く公僕であるべきである
公僕は、常に公平に。人々のことを最優先に考えるもの。
残念ながら、日本では「公僕」という言葉はほとんど耳にしません。
これからは、「わたしは人々に仕える公僕である」という候補者の発言も聞いてみたいものですね。
(写真は、熊本県宇城(うき)市の世界遺産・三角西港(みすみにしこう)にある「法の館(旧三角簡易裁判所)」。新しい理想に向かって邁進した「明治日本の産業革命遺産」を構成する貴重な文化財のひとつです)